先っちょマンブログ

20240312-1

11日(月)、中国の全国人民代表大会(全人代)が閉幕した。
5日の全人代開幕のとき、李強首相が中国政府の活動報告を行った。中国の政治家は演説をするとき、聞き取りやすいようゆっくり明瞭に話すため、中国語を勉強している人間にとっては聞き取りやすくていい。とはいえ、全人代開幕時の首相報告は1時間以上あるのが普通なので、全部聞いていられないのだが。
今回、李強首相はこれまでより短い50分ほどの報告だったという。

また、全人代閉幕後はいつも首相が会見するのが恒例になっていたが、今年は実施されなかった。今回から、よほど特別な事情がないかぎり行わないという方針が全人代開幕前から発表されていた。
数少ない中国政府の体外説明の場をなくしたわけだ。中国政府の会見は事前に質問するメディアとその内容が決められている出来レースが多いが、それでも李強首相のような軽薄そうなタイプは口を滑らせることがある。そのリスクをなくすのが目的なのだろう。

今回の全人代では、今まで以上に習近平の独裁体制がより強まったのが目についた。国務院組織法が改正され、国務院(中国政府)が中国共産党の従属機関であることが法的に示された。普通の国は、政党に所属する、もしくは政党に無所属であっても国会議員が集まって政府を構成するわけだが、中国は一番上に中国共産党があり、その下に政府がある。政府のトップが里強首相で、中国共産党のトップが習近平国家主席だ。つまり、習近平が務める国家主席が中国のトップであると法律で明確にされたわけだ。

この改正で、中国人民銀行(中央銀行)の総裁が国務院のメンバーになったため、中国の中央銀行は共産党の下の中国政府のさらに下という位置づけになった。
習近平は国内政治はもちろん、外交、安全保障、経済、金融、すべての分野を指導する立場となり、独裁国家の基盤固めがさらに進んだ。
かつて、鄧小平が毛沢東の独裁政治を反省し、絶対的指導者の独裁国家とならないよう国務院組織法などが作られたはずなのに、自身の毛沢東化を進める習近平がそれをなかったことにしてしまった。

ついでに中国は、全人代の前に保守国家秘密法を改正している。5月1日から施行される法律で、早い話が国家機密を守るために中国人のみならず外国人も厳しく監視し、中国人の公務員であっても辞めたあともずっと機密保持の対象になるからななどというものだ。

【安全保障貿易情報センター】中華人民共和国保守国家秘密法の改正について (2024/02/28)

産経新聞の記者だった福島香織が習近平独裁体制を強化するもので、中国では市場調査すら不可能になるのではないかと解説していた。中国の法律は曖昧なものが多く、恣意的運用が可能だ。この法律でも「工作機密」なるものの定義が不明だ。日本語でいうと「業務機密」ということだが、国家機密ほどの重要機密ではないものの、公開することで当局の仕事に影響を与えたり損害をもたらす情報ということになっている。
こんな規定だったとしたら、「損害が出た」と言われればどんなものでも漏洩してはならない業務上の機密になってしまう。

反スパイ法でも同じだが、基本的に中国国内で人民や外国人を取り締まる法律は恣意的運用されるため、逮捕理由が分からない。普通の法治国家ではあり得ないが、反スパイ法違反では裁判も非公開となるため、外部からは裁かれている人がなんの罪で捕まり、なにで有罪になったのか分からない。

これが激ヤバなのは誰にでも分かると思う。中国で普通に仕事をしていただけの日本人が捕まり、反スパイ法違反で有罪になり、10年以上刑務所に入れられるというケースが増えてきた。
今後はそれがより一層厳しくなると予想される。

これがあるから中国でなんか仕事をするもんじゃない。仕事で中国の半導体工場や液晶モニタ工場に行ったが、そういう仕事だと私のような末端の人間でもどうなるか分からない。
普段、半導体工場などのクリーンルームに入る場合、作業服を着て工場に出入りするが、中国では会社から作業服の着用が禁止されていた。中国では作業服を着ているような工場の工員に見える外国人は違法労働者と見なされやすく、それが日本人であっても警察に連行されて取り調べを受けることがよくある。
そうなるとめちゃくちゃ面倒なことになり、スマホにある写真やメモ帳にある日本語のメモの説明を全部させられたりする。中国語が話せないとより最悪なことになるのは容易に想像できるだろう。何日も出られず、留置場で数日過ごすなんてことになる。

中国から外国企業やその従業員が多く引き上げているというニュースがあるが、当然だろう。これまでは大したことなかったが、ここ数年は中国で仕事をするリスクがかなり高まった。違法行為など一切していないのに、リスクを負いながら仕事なんか誰だってしたくない。

昨年、小島瑠璃子が中国の芸能界デビューを見据えて中国の大学に留学すると発表して、「正気か」と耳を疑ってしまった。日本でそれなりに売れているのだから、中国で芸能活動なんかする必要がないのに、わざわざ制限だらけの中国に行くなんて、正気とは思えない。
普通のサラリーマンなら中国赴任なんぞ嫌がるが、自分から行くなんてどうかしている。

2年前のエントリで、「乘風破浪」という中国の人気オーディション番組で、私が好きな台湾人歌手の王心凌が優勝した際、番組の最終回で総合順位が発表される前日に、中国のSNSに「只有一個中国」(中国はひとつだけ)という投稿をした。それまで政治発言とは縁遠かったのに、優勝発表直前に、台湾本島が中国の国という文字の点としてデザインされた標語を投稿したのだ。

ひとつの中国への不安 (2022/08/07)

明らかに優勝のための踏み絵である。総合優勝したおかげで、王心凌は中国で大ブレイクし、それ以来中国で頻繁にコンサートを開催している。それまで、CD発売に台湾でサイン会と握手会をしていた芸能人だったのに、雲の上の存在になってしまった。

今年開催の「乘風破浪」のシーズン5に、前田敦子が出場すると週刊文春が報じていた。AKB48のメンバーとして、中国で少しだけ知られている前田敦子にオファーがあったらしい。
「乘風破浪」のオーディションなんて出来レースであるので、招待された前田敦子は最後の方まで残るかも知れない。そして、王心凌と同じように政治発言させられるに違いない。

それを危惧していたら、今度は週刊ポストが「中国進出が経ち消えになった」と報じていた。文春報道が中国でも出回り、AKB48時代に靖国神社の桜フェスティバルでライブをしていたことや、自衛隊の広報誌に登場していたことが問題視され、番組に抗議が多く寄せられた結果、出演がキャンセルになったという。

一般人でも芸能人でも、仕事であっても観光であっても、もはや中国は渡航先にそぐわない国になった。いつ捕まるか分からないし、なにをやれと言われるか分からない。
なんの自由もなく、ありとあらゆることが秘密である国が中国で、外国人にとっては滞在するのが危険な国でしかない。
君子危うきに近寄らずというだろう。少しでも知恵があれば、できるだけ中国の滞在は避けた方がいい。

20240311-1

アカデミー賞を獲得した映画が必ずしも優れた映画だとは思わないが、それでも毎年アカデミー賞の行方が気になる。WOWOWの生中継を見るほどではないが、今年の第96回アカデミー賞もネットの速報を注視していた。

作品賞は大方の予想どおり「オッペンハイマー」だった。監督賞はクリストファー・ノーラン、主演男優賞もキリアン・マーフィー、助演男優賞も同じくロバート・ダウニー・ジュニアだったが、助演女優賞は「オッペンハイマー」関連で確実視されていたエミリー・ブラントではなく誰か知らない黒人の太った女優が獲得した。
結局、「オッペンハイマー」は7部門でオスカー獲得となった。

主演女優賞も前評判どおり「哀れなるものたち」のエマ・ストーンが獲得した。「ラ・ラ・ランド」以来2回目の受賞だ。「女王陛下のお気に入り」の監督と再びタッグを組んだ作品で、かなり力が入っていたそうだが、映画の内容はまあまあどぎついらしくて見に行く気がしなかったが、日本での配給権はディズニーが持っているので、Disney+でしか配信されないかも知れない。

アカデミー賞にノミネートされた作品では、プライムビデオで「アメリカン・フィクション」と「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が見られる。
「アメリカン・フィクション」は黒人作家が黒人作品に望まれる小説をヤケクソで書いてみたら大ヒットし、とてつもない名声を得てしまうという内容で、黒人への差別や偏見、出版業界、映画業界への皮肉が効いた作品になっている。
これはアカデミー脚色賞を受賞した。

「アクロス・ザ・スパイダーバース」は140分もある長尺のスパイダーマンアニメであるが、グウェンという女スパイダーマンの目線を通して描かれる別次元の世界が視覚効果満載で、見ていてめちゃくちゃ気持ち悪くなる。こんなのが2時間以上続くのかとゲンナリしたが、全編がそうではなかった。
だが、物語は途中で終わって「次回作に続く」となり、「終わらんのかい」とツッコんでしまった。
ちなみに、女スパイダーマンという矛盾をはらんだ表現はどうかとは思うが、実写版の「アメイジング・スパイダーマン」ではエマ・ストーンが演じていた。エマ・ストーンはB級映画によく出る女優だったが、二度もオスカーを受賞すれば、もはや超一流であろう。

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」はアカデミー賞の長編アニメ映画賞の最有力候補とされていた。話が面白かったとは思えないが、アカデミー会員が好きそうな黒人や同性愛がてんこ盛りで、見た目もアートっぽい作品に仕上がっているからだ。
だが、その前評判を覆してスタジオジブリ製作の「君たちはどう生きるか」が受賞した。宮崎駿監督のジブリ作品では「千と千尋の神隠し」以来21年ぶりのオスカー受賞となった。

それには少し驚いたが、まああるだろうとは思っていた。それより遥かに予想外で驚かされたのが、「ゴジラ-1.0」の視覚効果賞の受賞である。大して注目されない賞ではあるが、今の視覚効果賞になった1977年第50回アカデミー賞で「スターウォーズ」が受賞してからずっと、ハリウッドの大作が獲得してきた賞である。「ジュラシックパーク」や「タイタニック」、「ロード・オブ・ザ・リング」に「アバター」、「マトリックス」など、金のかかった娯楽作品が獲るものと決まっていた。
今年も、「ザ・クリエイター / 創造者」の受賞が確実視されていた。製作費が8000万ドル(120億円弱)でハリウッド作品としては控えめであるが、それでも22億円の「ゴジラ-1.0」の5倍である。
VFX(視覚効果)を含めたCGは金をかければかけるほど見栄えのいいものができあがるのが定石であるが、日本では高額でもハリウッドレベルでは低予算とされる3000万ドルを下回る製作費であっても、視覚効果賞が受賞できるということを「ゴジラ-1.0」が世界に知らしめたわけだ。

これは「君たちはどう生きるか」が長編アニメ賞を獲得したことよりも快挙だと断言できる。
視覚効果賞の受賞者となった山崎貴監督は、スタンリー・キューブリック以来の監督での受賞だ。報道によると「アジア圏初」とあるが、アメリカ映画以外で視覚効果賞を受賞した映画はイギリスの「エクス・マキナ」(2015年)くらいではないか。

「ゴジラ-1.0」が日本以外でもヒットした背景として、ハリウッドのストライキによる公開延期が相次いだことでできた空白を埋める作品となったことがあり、それと同じで、視覚効果賞の受賞は「デューン 砂の惑星 PART2」の公開が遅れたおかげとも考えられるが、ラッキーだったかは別として、めでたいことには変わりがない。映画史を変えたと言っても過言ではないのではないか。

これまで日本映画は予算がしょぼく、CGもいかにもショボショボで、ハリウッド作品と比較するとチープさが目立つことが多かった。
「ゴジラ-1.0」は、工夫すればそこそこの製作費でもハリウッド作品と張り合えるVFXの映画を作ることができると知らしめてくれた。日本贔屓の映画監督として知られ、日本のロボット作品に影響を受けた「パシフィック・リム」を作ったギレルモ・デル・トロが「ゴジラ-1.0」の受賞について、「KAIJU KING + Tokusatsu = OSCAR」とXにポストしていたが、日本映画には怪獣という特異なコンテンツがあることを改めて知らしめてくれた。
先日のエントリで、日本の映画やドラマにはサムライとかニンジャとか世界にウケるものがあると書いたが、カイジューもそのひとつだろう。それを利用しない手はない。

20240310-1

8日(金)に産経新聞が自民党関係者の品性下劣な懇親会についてのスクープを報じていた。
昨年11月18日に自民党和歌山県連主催で青年局近畿ブロック会議なる会議が行われ、近畿2府4県の若手地方議員や党の関係者50名が参加した。会議の後の懇親会にはほぼ全員が出席したが、そこには下着のような衣装を身にまとった女性ダンサーが少なくとも5人来て、セクシーなダンスを踊った。懇親会の参加者の中には、ダンサーに口移しでチップを渡す者、衣装にチップを挟んで尻を触るも者がいたという。

【産経新聞】自民党青年局近畿ブロック会議後の会合で過激ダンスショー 口移しでチップ渡す姿も 費用は党が支出 (2024/03/08)

裏金問題で政権と自民党の支持率が急降下しているさなかでの秋醜聞である。政治資金パーティーでの裏金問題が明るみに出たのは昨年12月に入ってからで、この懇親会はその前のことだろうから、気が緩んでとかの話ではないだろうが、それでも懇親会でいつもこんなことをしているのではと疑われても仕方がない。しかも、自民党の本部や和歌山県連が費用負担したわけで、正常助成金などの公費やパーティで集めた政治資金から捻出されているに違いない。

私は風俗店はおろか水商売の店にも行ったことがない。自分で金を出して踊っている女を見たいと思わないし、知らない女と話したいとも思わない。
それでも、こんなのを純粋に楽しめるやつらがいるというのが情けない。個人の金でバーレスク東京、バーレスク大阪に行って楽しんでるなら勝手にやれと思うが、公費を含む人の金で呼んだダンサー相手によく楽しめるもんである。しかも、それほど親しくもない知り合いの前でだ。

結局、自民党の青年局局長と局長代理が辞任することになった。自民党に対して悪い評判ばかり目立つこの時期に、こんな醜聞を世間に晒してしまったのだから、責任を取るのは当然だろう。

いつもこんな感じで会議の打ち上げでハメを外していたのかと思うと呆れるばかりだが、それよりなにより問題だと思うのが、和歌山県連青年局長の川畑哲哉県議なる3期目の県議の言い訳だ。
「彼女たちは世界的に活躍するダンサーであり、多様性の表現として出演を依頼した」と言っているが、これほど白々しい言い訳があるだろうか。なにが多様性なのか。誰が世界的に活躍するダンサーなのか。そこらへんにいるエロダンサーであり、多様性もへったくれもない。オカマのダンサーを呼んでからそれを言え。

「多様性」でどうにか弁明しようとした苦しい言い訳は、捕まった痴漢が「仕事のストレスで」と動機を言い訳するのとよく似ている。それを聞いて誰が「それならしょうがないか」と思うのか。「性癖なので」と言う方が清々しくて立派に思える。
「エロい女の子を呼んで楽しみたかった」と言えばいい。それはそれで顰蹙を買うだろうが、取ってつけたような言い訳は見苦しく、恥の上塗りでしかない。

人はなぜ、このような見え透いたウソの言い訳をしてしまうのだろうか。追い詰められてテンパってしまうと、とっさの思いつきで言ってしまうこともあるだろうが、和歌山県連青年局長はマスコミへの返答を考えたうえでの結果である。だとしたら、ホンモノのバカではなかろうか。
見え透いたウソをついても誰も信じてくれないわけで、だとしたら本当のことを言うべきだ。本当のことを言うのが恥ずかしいのなら、黙っている方がまだマシである。

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