インドネシアの高速鉄道計画での日中の競争において、中国に土壇場で寄り切られて日本が中国に敗れた。
日本の整備計画を丸パクリした中国に負けたことが納得いかないが、中国がカネを出す条件を出したため、安さに釣られたインドネシア政府が決めてしまった。インドネシアにとって悪い選択だと思ったのだが、現実に中国があとから合弁会社の事業失敗の際の債務保証などカネのことでゴネてきた上に、中国語でのみ書かれた計画書のためにインドネシア側が困っていたり、地震対策などの安全性確保が不透明なため建設許可も下りないなど、様々な問題を抱えて一向に工事に取り掛かれない状況にあるという。
安物買いの銭失いとはよくいったものだが、インドネシアの決定はまさにそれになりそうな感じだ。
一方で、日本はインドネシア最大となる港湾整備を受注する見込みだという。2019年開講予定で、2000億円規模の事業費になるという。日本案の高速鉄道が7000億円弱の事業費だったから、2000億円の港湾整備も悪いものではないだろう。インドネシアに対し、中国との違いを見せつけるチャンスである。
インドネシアは人口が2億5000万人と多く、しかも人口ピラミッドは富士山のような形で若年層が非常に多い。これから先が非常に期待できる国であり、日本企業も近年多く進出している。
安倍政権は高速鉄道計画でのインドネシアの決定を「失望した」としたわけだが、それでもインドネシアには期待している。インドネシアからのインバウンドを増やそうと、2014年の12月にはインドネシアに対して15日以内の短期滞在に対して事前にIC旅券の登録を行えばビザを免除することにした。
それでどうなったか。2014年のインドネシアからの入国者数は16万4246人で、2015年には21万412人に増えた。4万6166人増えたわけだ。ビザの要件を緩和しても、3割しか増えなかったと表現してもいい。
その代わり、2015年1月に1258人だったインドネシア人の不法滞在者が、2016年1月には2228人と倍増した。
ビザ要件の緩和で訪日インドネシア人が3割増えたが、不法滞在者が1200人からおよそ倍の2200人になったわけである。
それだけならまだしも、2014年には17人だった難民申請が2015年には969人とめちゃくちゃ増えた。57倍である。
インドネシアは難民が出るような国ではないが、訪日インドネシア人が増え、日本に来たその足で「難民だから日本にいさせろ」と申請する輩が57倍に増えたのだ。
これはビザ緩和の失敗の典型ではないのか。日本は難民認定しない国だと強く批判されるが、こういうヤツらばかりが難民申請するのだから、却下して当然である。
安倍首相は個人的に親しくしているインドのモディ首相との首脳会談で、今年の1月から短期滞在数次ビザの発給要件を緩和し、滞在期間やビザの有効期間の延長をすることを明らかにした。これまでは「十分な経済力がある有識者とその家族」に限って1回15日まで滞在可能な有効期限3年のビザを発給していたが、今年の1月からは有識者という条件が外れ、滞在期間30日、有効期限5年となった。
インドへの期待と親しみを込めた決定なのだろうか。
インドの金持ちにしか発給しないビザだから、インドネシアのようにはならないかも知れないが、それでもビザ発給要件が今後さらに緩くなるとどうなるか分かったもんじゃない。
中国も同様である。中国の金持ちには行き先制限のない数次ビザが発給され、個人または団体の観光をする金持ちではない中国人は旅行会社を通じてビザの発給を受けねばならないため、日本に観光に来て不法滞在をしたり、難民申請をすることは難しいが、今後このビザ発給要件が変わると激増する恐れがある。
金持ちも貧乏人も等しくおもてなしするのが日本人としての矜持かも知れないが、だからといって誰かれ構わず受け入れるのは間違っている。外国人でもいい人ばかりだろうなどと甘っちょろい考えは捨てて、貧乏な国からはロクでもないヤツが来るということをある程度覚悟しておかねばならない。
日本が犯罪者も自称難民も受け入れるというのなら別だが、「観光客だけ来てください。ほかの悪い人は来ないでください」ではいかにも都合がよすぎる。
「悪いことも起こる」と国民に知らせた上で、外国人訪日者数を伸ばすべきだろう。都合のいいことばかり国民に言い聞かせるのは、それは国による詐欺のようなもんである。