台湾の総統選は事前の予想通り、民進党の蔡英文主席が勝利し、同時に行われた立法院(国会)の選挙でも民進党が大躍進。与党だった国民党は総統選でも敗れ、立法院でも多くの議席を失い、歴史的大敗となった。
国民党の歴史的大敗の原因はもちろん馬英九政権にある。支持率が9%にまで下落し、「馬英9」と呼ばれた台湾総統は、台湾総統として初めて中国共産党のトップの習近平と会談するほど中国寄りの姿勢を見せたわけだが、中国に擦り寄ったところでいいことはなにもなかった。
初当選したときも2回目のときも、中国との経済的な繋がりを重視した台湾人の支持を集めたが、台湾経済が上昇することもなく支持を失った。
馬英九が2014年に強引に進めようとした中国との自由貿易協定では猛反撥が起こり、学生らがひまわり学生運動を起こし、大規模な反対集会や立法院の占拠を行ったことは記憶に新しい。
台湾人のホンネとしては、「大陸との経済的な結びつきによって利益を得たいが、中国人に見られることはまっぴらごめん」というのが大勢を占める。中国との商売はしたいが、自分たちは道端やディズニーランドの順番待ちで子供にウンコをさせる人間ではないと思うのは当然だろう。
しかし、台湾独立を訴える人は案外少ない。やはり中国との経済的な関係がある以上、そこでゴチャゴチャ揉めても損が大きい。台湾人は理想論者は少なく、現実主義者が多いのだ。
実際、国民党から分裂し、「台湾独立反対」を訴える親民党の宋楚瑜主席が予想を覆し100万票以上集めた。「国民党がダメなら民進党」という人が意外に多いのだ。
それはともかく、台湾が民進党政権に変わったことにより、日本と台湾の関係はさらにいいものになりそうだ。蔡英文主席は昨年に安倍首相と密かに会談していたとされており、安倍首相とインドのモディ首相のような仲になるかも知れない。安倍首相は民主党政権の親中首相連中と異なり、台湾を重視しているからだ。
台湾での民進党大勝、国民党大敗の結果はこれからの数年を見据えると大変いいニュースだった。
その台湾総統選が台湾で盛り上がり、いい結果が出た一方、総統選前日から当日にかけて中国と台湾の関係にまつわる非常に悪いニュースがあった。
先週12日(火)のエントリで、中国の黄安というタレントが自身のSNSで次々と「香港独立派」や「台湾独立派」と認定したタレントを糾弾し、そのターゲットにされたタレントが中国でテレビ出演が取りやめになったり、中国での芸能活動が禁止されていると紹介した。
そのなかで、韓国のTWICEというガールズグループの台湾人メンバー・周子瑜が韓国のテレビ番組で台湾の国旗とされる青天白日旗を持つなどしたことが黄安の目に止まり、「台湾独立派」として糾弾されていることを危惧したのだが、それが現実となってしまった。
"中国人"タレントの末路 (1/12)
【産経ニュース】韓国アイドルグループ「TWICE」の台湾出身ツウィに“台湾の旗を振った”と批判殺到 中国での活動休止にビデオで謝罪 総統選への影響も (1/16)
黄安が糾弾したこと受け、北京のテレビ局がTWICEが出演していた中国の春節の歌番組においてTWICEの出演をカットする動きを見せていた。それに焦ったTWICEの所属事務所であるJYPエンターテインメントが、周子瑜に謝罪をさせる動画をYouTubeなどの動画サイトにアップした。ちなみに、中国ではYouTubeを見られないが、この事務所はいったいなにを考えているのか。
この動画で周子瑜は、テレビ番組で青天白日旗を持ったことを謝罪したうえで、「中国はひとつです。私は中国人です」と発言した。
どう考えても事務所に言わされている。たかだか16歳の女の子が「私は中国人です」と言わされて台湾人としてのアイデンティティを否定させられたのだ。さらには所属事務所からひとりだけ中国での活動禁止を言い渡され、グループ内でひとりだけ干されることになってしまった。
すでに台湾では政治問題化しており、総裁選で候補者がそれぞれこれに言及していた。
これほどの人権侵害を許していいのだろうか。問題は中国にあるわけだが、それと同じくらい問題なのがTWICEが所属する韓国の芸能事務所JYPエンターテインメントである。
JYPは韓国の三大芸能事務所のひとつらしいが、そのような大手事務所がこうも簡単に中国に屈服し、なんの罪もない16歳の女の子を酷く傷つけ、ひいては台湾人も侮辱したのである。
周子瑜は事務所の指示で台湾の国旗を持ち、テレビ局の演出で自己紹介の名前に台湾の旗を入れられた。それなのに謝罪をさせ、挙げ句の果ては「ひとつの中国」、「私は中国人」と言わせた。親日問題で叩かれた楊丞琳が謝罪会見の場で「私は中国人です」と言わされたのと同じだ。
所属タレントにこんなことをさせる芸能事務所が許されていいわけがないが、韓国ではこれが許されるのであろう。自分たちが中国で商売するための足枷は取り除いて当然で、ひとりの女の子の人権やプライドなど知ったことではないというわけだ。
台湾の総統選の裏で、考えられないような酷いことが起こっていた。これは「海外の芸能人や芸能事務所の話」で済むような内容ではない。中国の政治的な言論弾圧に手を貸すような韓国の芸能事務所を許してはならない。
幸いにも日本の芸能界は中国と縁遠いため、このようなことは起こらないだろうが、これと近いことはよくある。政治家や財界人はたびたび中国に与するような発言をする。とても許されないような発言をするヤツもいる。
中国市場という毒まんじゅう食った韓国の芸能事務所は正義や正常な感覚を失ってしまった。
日本人はこうであってはならない。