今月5日(日)、岩手県矢巾町の矢巾北中学校2年の松村亮(13)がJR東北本線矢幅駅で飛び込み自殺をした。
少年は中学1年の頃から同級生に殴られたり、体操着や教科書をなくされたり、バスケットボールを頭にぶつけられるなどの酷いイジメを受けており、それらを苦にしての自殺と見られる。
このニュースで注目されているのが、中学校の担任と普段の生活などについて連絡する「生活記録ノート」である。
少年が1年生だったときの担任は30代の女性教師で現在は他校に転任、2年の担任は40代の女性教師だったのだが、少年がノートにイジメを訴える内容を書き連ねても何ら適切な対応を取っていなかったのだ。
しかも、イジメを訴える内容の返信が酷すぎるため、特に2年の担任の40代女性教師について「サイコパスではないのか」とネット上で言われている。
1年でのやりとり。
先生にはいじめの多い人の名前をおしえましょう。もうげんかいです。
上から目先(目線)ですねイジメには何ら触れず、「教えましょう」と少年が書いたことについて誤字を交えて上から目線だと注意する非情ぶりである。この教師は今年度から別の中学に転任している。
2年からのやりとりは、およそ正常ではないと思えるような内容がいくつかあった。
5/13
づっと暴力、づっとずっとずっと悪口。やめてといってもやめないし、もう学校やすみたい。そろそろ休みたい氏(死)にたい
いろいろ言われたのですね。全体にも言おうと思います。5/15
なにかの夢をみたようです。誰一人いない世界に一人ごっちになったようなかんじ
(反応なし)6/8
実はボクさんざんいままで苦しんでたんスよ?なぐられたりけられたり首しめられたりこちょがされたり悪口言われたり!
そんなことがあっと??それは大変、いつ??解決したの?
6/9
解決してまセン。またこりずにやってきた。もうほんっとやめてほしい。もうそうじの前に殴っちゃったよ
(反応なし)
6/28
ここだけの話、ぜったいだれにも言わないでください。もう生きるのにつかれてきたような気がします。氏(死)んでいいですか?(たぶんさいきんおきるかな)
どうしたの?テストのことが心配?クラブ?元気を出して生活しよう
6/29
ボクがいつ消えるかはわかりません。ですが、先生からたくさんの希望をもらいました。感謝しています。もうすこしがんばってみます。ただ、もう市(死)ぬ場所はきまってるんですけどねw まあいいか
(二重丸を付けて)明日からの研修たのしみましょうね
明らかに少年がSOSのシグナルを出しているのに、華麗にスルーした上で、見当違いの反応を示すか、何も反応を示していないという人間とは思えないような対応を取っている。iOSのSiriでももうちょっとマトモな回答を寄越すだろう。
この回答を見ると、回答にはテンプレートみたいなものがあって、どれかを適当に当てはめて書いているようにしか見えない。40人もいたら毎日面倒臭いのだろうが、ある意味こんな対応ができることがすごいと思える。私だったら気になって仕方がないのだが。
大津市のイジメ自殺事件では、イジメの現場を目撃した教師がニヤニヤしながら「そのへんでやめとけ」などと言っていたことが問題になったが、こちらはイジメをしていた犯人が極悪非道すぎたのであまり注目はされなかった。
矢巾北中の事件の場合、イジメの程度がどのくらいだったかは判然としないわけだが、ありふれたイジメにも思える。
教師の対応さえちゃんとしていたら、この少年が死を選ぶことなどなかったはずだ。
自殺した少年は、両親が離婚し、いったんは母親に付いて東京に行ったが、父親を心配して「父親と暮らしたい」と言って矢巾町に戻ってきたのだという。
父親は息子がイジメられていることを知り、学校に訴えたが、学校は何ら有効な対策を取ることはなかった。担任が生徒間のトラブルを認識していたが、「双方から話を聞き、問題が大きくなることはないと判断した」としている。
通常、中学の男子生徒は親に自分がいじめられていることを話さない。だから、父親はイジメの内容を詳しく知ることはなかった。息子が「死にたい」などと言っていることも知らなかった。
最低でも、担任が父親に連絡するなどすれば、少年は学校に行かないなどすれば死なずに済んだはずだ。
ところが、「問題にしたくない」と考えた担任が"鈍感力"を働かせ、親にも学校にも報告せず、少年の訴えは適当にあしらった結果がこれである。
子供というのは身の回りの社会が狭く、経験もないから、「イジメられたら学校など行かなければいい」とはなかなかならない。自分の周囲の小さい世界で悩み、自分で問題を抱え込み、自分を消すことで問題を解決しようとしてしまう。
担任や親がほかの生徒の暴力などをやめさせることはできないかも知れないが、少なくともイジメ被害者がさらなる苦痛を味わわずにすることはいくらでもできたはずだ。
この無責任な担任は、現在学校を病欠しているという。
矢巾北中の校長は、マスコミの「イジメがあったのか?」の問に対して、「調査結果が出てから答える」などとにべもない。そうやって時間稼ぎをし、なんとか責められないよう知恵を絞っているのだろう。
校長は4月に赴任してきたばかりで、自分のツキのなさ、巡り合わせの悪さを嘆いていることだろうが、こんな対応しかできないのかと思ってしまう。
担任の「面倒に巻き込まれなくない」という対応でひとりの少年が死に、その担任は責任逃れで逃亡。学校は時間をくれの一点張り。
担任や学校からすれば、「少年のせいでえらい迷惑」、「巻き込まれた自分が可哀相」くらいにしか思っていないのだろう。
教師がイジメの事実を意図的に見逃すことによる生徒の自殺は繰り返される。教師は他人の失敗を他人ごとだと思っているのだろう。そして生徒が自殺してから後悔する。生徒は生き返らないし、自分が人から責められる。
「他山の石」とはいうけれど、意味は知っていても自分の役に立てようという教師は多くないように思える。