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ちょうど2週間前、バレンタインデーの2月14日は関東広域で大雪が降った日だった。
関西でも東京ほどではないが13日から雪が降っていて、14日は早めに仕事を切り上げて帰宅した。

家に帰ると、2階で犬が大暴れした痕跡があった。
我が家の犬は大きな音を怖がり、隣家の屋根からドサッと落ちてくる雪にビビリまくり、嫁さんがパートに行っている間にパニックになり、2階の寝室の前で暴れたのだ。
暴れるというのは、ドアを咬んでグチャグチャにするということである。
もしかすると寝室に私たちがいるかも知れないと思い、「開けてくれ」とアピールし、最終的にはドアに穴を開けてやろうとしていたのだろう。

何年か前の夏、強い風が吹いて雷がなっていた日、同じく留守番中にパニックになって寝室のドアをボロボロにした。
何とか木材用のテープで補修したら、それほど目立たなくなった。
同じようにまた暴れられると困るので、寝室のドアの両サイドの壁の角には木材の板を貼り付け、ドア自体にはプラダンと呼ばれるプラスチック製段ボールを貼り付けた。

そのあと何度か、木材の板を咬んだり、プラダンも角の方から咬んでボロボロにする自体になったのだが、ドア自体は何とか傷つけられずにいたのだが、前の大雪ではプラダンを粉々に咬みちぎったあと、ドアも少し咬んでいた。

早く帰宅したらその有様だったので、替えのプラダンを用意するために、カッターナイフを使ってドアのサイズに切っていた。
金定規を当てながらカッターナイフを手前に引きながら切っていた。小学校の頃から、刃物の使い方は教師や親に厳しく言われていたので慎重であったのだが、その日は勢い余ってカッターナイフを引きすぎ、金定規から少し出ていた親指を切ってしまった。
親指の爪の先、指の肉が丸くなっている部分を切り落としてしまった。中学の数学で、円上の点を結ぶ線分のことを「弦」と習うが、それと同じような感じで切ってしまった。

そのときの第一声は、「うわぁ~、やってしまった~」であった。指先から血がドクドク流れ、指がズキズキと痛む。指の先をスライスしてしまったカッターナイフの刃の右側を見ると、切り落とした部分の指の肉がへばりついていて、スケールの小さいホラー映画みたいな気色悪さがあった。

「イテー」と言いながら作業をしていた寝室から、階下のリビングに下りていって、部屋でパソコンを触っていた嫁さんに止血方法を調べて貰った。
映画や漫画では、細長い布や紐で関節を縛って止血するパターンが多いが、そんなもんでは出血は止まらない。ネットで調べると、刺身包丁で同じように指の先を切り落としてしまった人の話などがたくさん出てきて、それらによると圧迫止血をしろとあった。

幸い、うちには嫁さんが100円ショップで購入して常備しているガーゼ、コットン、包帯などがあったので、ワセリンのような軟膏を傷口に塗り、その上に傷口サイズに切ったラップを載せ、その上からさらにガーゼを押し当てて圧迫した。ラップを挟んだのは、血が止まったときにガーゼが当たっていると、ガーゼをはがすときに血の塊ごと剥いでしまうことになり、また出血するからだ。
そのまま1時間ほどすると、ダラダラ流れる血が止まった。指はズキズキするのだが、これもネットによると、キズの部分を心臓より高い位置に持って行くと血が流れにくくなってズキズキが収まるそうで、実際やってみたら本当にそうだった。

止血をしている間、「1週間後の22日がPlayStation 4の発売日なのに、こんな親指ではゲームができない」とばかり考えていた。
それと同時に、嫁さんがいて本当によかったと思った。傷の手当てのセットを持っていて、止血方法をネットで調べて手当をしてくれた。
もしこれがひとりだったら、血がドクドク流れるのを顧みず、右手一本でパソコンを起動してネットで止血方法を調べる必要があった。しかも、自分だけだったらガーゼも包帯も軟膏も持っていないだろうから、どうしたらいいのか分からなかったところだ。

末期癌でホスピスに入院している私の父の病室に、ずっと母が詰めている。たまに自宅に帰っているようだが、病室で寝泊まりできることもあって、病室にいることが多い。
何のために入院しているのかと思うのだが、父がそうして欲しいらしい。
数年前、「俺はいつ死んでもええねん」などと言っていた父も、はやり死を前にすると誰かに付き添っていて貰いたいようだ。

人生の伴侶というのは、非常に重要だ。一方が困れば助けてくれる。
今回の指先スライス事件で、結婚していて本当によかったと思った。こんなことで改めて認識するのはオカシイかも知れないが、実際の人生、そんなもんではなかろうか。何かがあって初めて人やモノのありがたみが分かる。

歳を取ってから、ひとりでこの先どうなるかという不安も、夫婦であれば少しは和らぐ。先に死なれて残された方はたまらんが、それは仕方がないだろう。先に死んだもん勝ちだ。
長生きするより、ある程度の年齢で死んだ方がいいという考え方もある。

日本では、晩婚化や未婚率が問題となりつつある。出生率が1.39となって少子化などと騒がれるが、結婚している世帯だけでいうと出生率は1.9くらいあって、悲観するようなレベルではないのだそうな。
だとすると、子育てに対する支援も重要だが、国民がとにかく結婚するように国が支援すべきではなかろうか。
結婚すると自由が奪われると嘆く人も多いが、もちろん悪いことばかりではない。いいことがもっと増えるよう、税制で優遇するなどをしても何の問題もないように思えるのだが。
結婚に否定的な話をよく聞くが、ちょっとしたことでもいいから、いいことを広めていかないと、ますます国民が結婚しなくなってしまう。
それはゆゆしき問題だ。