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台湾の第四原子力発電所は、GEが受注し、135万キロワットの原子炉2基を日立製作所と東芝が建設する発電所だ。1999年に着工されたが、未だ本稼働していない。
中国語で「核四」と呼ばれる第四原子力発電所は、台湾の中心都市である台北市や新北市から近いことや、安全性が懸念されているため、商業用に稼働させられないでいる。
日立が建設した1号基はテスト稼働中で、東芝の2号基は建設工程の96%が終わっている段階だ。

本来ならば、中華民国暦100年を記念して2011年に稼働させるはずであったが、中央制御室の火災などが起こったことと、東日本大震災によって福島第一原発で事故を起こったことが台湾人に不安視され、工事が遅れたことも相まって、馬英九が稼働の延期を決めた。

昨年には、核四の稼働反対のみならず、原発反対運動が台湾全土で大きく展開され、台湾人の全住民による住民投票によって建設の続行や稼働をどうするかを決めるという方針が決定された。
この運動には、林志玲を始めとする台湾の著名人が多く参加し、複数のミュージシャンによる反核CDが発売されるなどした。台湾はテレビ局などに対する電力会社の影響が弱いため、芸能人が普通に反原発運動を行うことができる。

しばらく反原発運動の動きが弱まっていたが、先日の学生らによる立法院の占拠事件を受け、与党・国民党への風当たりが厳しくなり、反サービス貿易協定だった世論が一気に反原発へと傾いた。
昨日、台北で行われた反原発運動のデモに数万人が集まり、台北市内の交通をマヒさせるなどした。
住民に押されっぱなしの馬英九政権は、昨年決めた住民投票が行われ、原発容認の意見が出るまで、第四原子力発電所の1号基は稼働停止、2号基は建設停止にすると表明した。

台湾の反原発運動でも、「事故が起きれば取り返しの付かないことになる」と主張されている。そして、反原発派が掲げる旗には、「第二の福島は要らない」などと書かれてある。
福島県民にとってみれば、納得のいかぬ例えだろう。「ノー・モア・ヒロシマ」みたいな雰囲気で取り上げられるから、外国人に福島県が全滅したかのような印象を与えてしまう。

それはともかくとして、馬英九政権は「原発がないと電力が足らなくなる」と主張している。
台湾には水力11か所、火力11か所、原子力11か所の発電所があり、原発依存度は20%程度である。台湾は電力需要が毎年3%程度ずつ増えており、このままでは電力不足が予想されるのは間違いない。第四原子力発電所は、今後増えていく電力需要を賄うために建設されたのである。
もし第四原子力発電所が稼働停止に追い込まれ、それ以外の3つの原発までも稼働停止にさせられたら、まず間違いなく電力不足に陥る。
台湾の電力供給は、原発が20%、再生可能エネルギーが2%、水力が2%、残りが火力という内訳になっているが、20%がなくなれば、どう考えてもピンチになるに決まっている。

日本では、節電が国民の義務であるかのようになっているが、台湾人には恐らく節電はムリだろう。
台湾人は中国人とは違うとはいうものの、本質的には中国人と同じように自分勝手な部分もある。それに、普段からの節電の意識がまったくない。夏に台湾に行くと、冷房が20℃、22℃あたりになっていることが当たり前で、建物の外と中での寒暖の差によって風邪をひく日本人観光客が多い。
経費削減のため、「冷房の設定温度を24℃にしろ」と厳命された会社の社員が、「暑くて仕事にならない」と延々と私に不平不満を垂れていた。ついでに、日本の28℃設定は地獄みたいなもんだから、「夏に日本には出張しない」と言っていた。

節電意識に乏しく、反原発はいいが、節電はやりたくない、というか考えたくないという台湾人が、原発の稼働反対というお題目を唱えたところで、まったくのファンタジーのようにしか聞こえない。
台湾で1万人レベルの原発反対デモが起き、政府がそれに屈して第四原子力発電所の稼働を決めたとか、将来は住民投票で決まることを日本の一部マスコミが嬉々として報じている。
「これを民主運動だ」というわけだ。

台湾を「民主国家」として認めず、中国の原発にはダンマリのマスコミが喜んでいるのかと思うと片腹痛い。
住民投票で原発の稼働停止が決まったかのように報道されているが、台湾の住民投票は、「過半数の有権者が、過半数以上投票する」ことが条件になっている。そこで、現与党が狙っているのは、「第四原子力発電所の放棄に賛成するか」という住民投票を実施することである。この場合、有権者の過半数を投票所に向かわせ、かつその半分を賛成票に投じさせることは難しそうだ。
だから、反原発デモが行われる台湾であっても、原発が稼働停止するかは不透明である。

台湾の反原発運動がどのように展開していくか、日本としても注目する必要がある。