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台湾好きが高じて台湾のテレビ番組をYouTubeでよく見ている。著作権の意識が希薄で、テレビ局側もあまり厳しく取り締まっていないので、個人がアップロードしたテレビ番組が山ほどあるほか、テレビ局側が放送直後に全編をアップロードする番組も多く、見る番組はたくさんある。

中国語は初心者中の初心者だが、台湾の番組は生放送以外字幕が必ず付いているので、ある程度中国語の単語を勉強すれば、字幕だけ見ていれば何となく分かるようになる。
個人的には、旅番組を好んでみている。特に、日本を旅行する企画のときは分かりやすくてよい。

台湾にはバラエティ番組も多いが、バラエティ番組は面白くないから見ない。言葉の理解度が足らないからとかそういう問題ではなく、日本のバラエティ番組に比べると本当につまらないからである。
台湾のバラエティ番組は大きく分けると2種類あって、トーク番組とコント番組である。コント番組は吉本新喜劇みたいな感じのものが多い。また、コント番組の特徴でいうと、誰か有名人のモノマネをしているものも多い。モノマネと言っても本格的なものではなく、本人っぽくやっているだけで、本人が言わなさそうなことをやってボケるというのが多い。

テレビのモノマネコント番組は台湾の代表的なバラエティであるわけだが、これで騒ぎになったこともあった。
2011年4月のことだが、中天電視の「全民最大黨」という番組で、天皇皇后両陛下を題材にしたコントを放送した。東日本大震災の避難所を訪れた両陛下が、「座ってください」「いや座れません」などとしょーもないやりとりをするコントである。
これが放送されたあと、日本のネットで大騒ぎになった。「被災者をバカにしたばかりか、天皇皇后両陛下を侮辱している」とネトウヨの人たちがいきり立っていた。

中天電視は中国に近い旺旺グループのテレビ局で、「日本と台湾を分断するために天皇陛下をバカにする番組を放送した」などと日本で断罪されていたが、そこまで深い意味はないと思う。
台湾人は日本人から見るとだいぶKYなところがあって、タブーというのがあまりない。「全民最大黨」ではこれまでにも天皇皇后両陛下のモノマネコントを何度も放送しているが、これまで問題になったことはなかった。台湾のテレビ局にモノマネ対象のタブーなど存在しない。日本人と台湾人の天皇陛下に対する見方は違うのだから、当然といえば当然だろう。
震災から1か月しか経っていないのに、空気を読まずにコントに仕立てたことが悪かった。ただそれだけだ。

その「全民最大黨」は台湾の代表的バラエティ番組といえる。どんなものか見て貰うとよく分かるはずだ。



例えば、上は2012年1月に放送されたもので、当時10日遅れで台湾の日本専門チャンネルのケーブルテレビで放送されていた「家政婦のミタ」をコントにしている。ミタ役は、人気タレントの安心亞だ。

これを見ていて気になるのが、BGM以外に、ボヨヨ~ンとかビヨンビヨンとか、よく分からない効果音が延々と入れられていることだ。
これは台湾や中国のバラエティ全般に共通していることで、収録現場で専門のスタッフがシンセサイザーを駆使して、場面に合わせて効果音を現場で入れているのだ。誰かがボケると、ビヨヨ~ンと面白そうな音が鳴る。

これが受け入れられないのだ。
基本的に、台湾のバラエティ番組にはツッコミがいないから、こんなことになる。ボケには効果音を入れてほったらかし。見る度に「何だコレ」と思ってしまう。

それでも、意外なことに台湾のコント番組は歴史が浅く、日本のコントの影響を強く受けているのだという。
台湾では20年ほど前に日本のテレビ番組の放送が解禁され、ドラマのほかにバラエティ番組が評価されたという。特に、志村けんの番組がとりわけ人気で、台湾で最も知られている日本のコメディアンは間違いなく志村けんだ。
台湾の飲食店やマッサージ店に、よく志村けんが来たという写真が貼ってある。20140928-2

4年連続CD売上1位を誇る国民的アイドル歌手の羅志祥(SHOW、右写真)は、「志村けんの番組ばかり見ていて日本語を覚えた」とことあるごとに言っている。日本のテレビでよく志村けんのモノマネもしているほどだ。

また、中天電視の政治的テーマを扱うモノマネコント番組でパーソナリティを務める邰智源という有名なコメディアンが、「台湾のコント番組はすべて志村けんさんのコントがベースにある」とまで言っていた。

小学生の頃はドリフをよく見ていたが、中学生を過ぎた当たりから志村けんなどまったく見なくなってしまい、今でも好きでも嫌いでもないが、こうやって台湾のバラエティ番組での伝説となっている志村けんの話を聞くと、急にスゴい人のように思えてきた。
誰がどこでどんな評価をされているのか、分からないものである。