20150128-1

私の母親が京都市内の病院に12月から入院している。理由は、膝の手術をするためだ。
昔から太っていた私の母は、還暦を超えて膝を痛めたらしく、膝の痛みを堪えながら歩いていたらしい。だが、「よくなることはないから、もっと歳をとってから手術するよりも、今のうちに手術をやっておいた方がいい」という医師の勧めがあって、膝に金属の何かを入れる手術を受けた。詳しい内容は知らない。

私の母のように、膝の手術によって膝に金属が入ると、肢体不自由の理由で「障害者6級」になるらしい。
術後のリハビリで膝が曲がるようになり、杖をついて歩けるわけだが、「障害者6級」なんだそうだ。

「障害者6級」になって障害者手帳を貰う身分になると、税金の減免やや公共サービスの割引などが受けられる。
例えば、私の母は父の遺族年金で暮らしているだけなので関係ないが、所得税や住民税についてそれぞれ27万円、26万円の控除を受けることができる。自動車税や自動車取得税の減免も受けられる。

JRや私鉄などでの100キロを超える長距離移動について、乗車券や特急券が半額になる。高速道路も半額だ。
NHKの受信料については全額免除だ。携帯電話料金の割引もある。

正直なところ、「障害者6級」なんて屁みたいなもんだと思うのだが、たくさんの恩恵が受けられる。
母親は収入が大してないので助かるのだろうが、数か月もすれば普通に歩けるような気がするのに、「障害者6級」とは何なのかと思う。
障害者手帳の交付を受ける受けないは自由なのだが、母親はちゃっかり申請していた。

こうして公的に「障害者」になると、ほかにも役所から補助のようなものがでる。
例えば、膝が悪いと風呂に入るときに難儀するわけだが、足が悪い人の風呂椅子とか、滑り止めのマットを購入すると、合計で9万円までは購入金額の1割負担で済むらしい。両手で踏ん張って立てる脇息のようなものが付いた風呂の椅子は2万5千円もするが、2千500円で買える。マットも9000円くらいするのだが、900円だ。市町村が指定する業者で見積もりを取り、役所で申請すれば、1割で購入できる。残り9割は税金で賄われる。

母に頼まれて風呂の椅子と滑り止めマット、折りたたみの杖を購入したが、9割が税金で賄われるのかと思うと、何だか悪い気がした。
ただ、介護用品を扱う販売店には爺さん婆さんその家族がよく来ていて、それなりに繁盛していたようだった。役所ぐるみで食いっぱぐれのない商売に思える

9万円分の介護商品購入の補助サービスは、一度使うと6年間は使えないらしい。だとすると、9万円満額まで買わないと損なように思えるが、ムリに不要なものまで買うわけにはいかないので、結局4万円分ほどだった。負担は4千円だ。
ちなみに、風呂の滑り止めマットなどを予備として余分に買うことはできないらしい。そこらへんは役所が認めないんだとか。

国の一般会計予算のうち、社会保障費が30兆円ほどある。支出のおよそ3分の1である。市町村の財政も似たようなもんで、歳出に占める社会保障費の割合は多い。
母親が受けておきながら何だが、いろんな料金の減免とか、介護用品の1割負担などをやっていれば「そら支出が減らないわけだ」としか思えない。年寄りが増えると当然体の悪い人も増える一方なのだから。

死んだ私の父は、サルコイドーシスとかいう肉芽種のせいで心臓が悪く、不整脈が頻発していたので心臓に小型のAEDを入れる手術を受けた。サイボーグ化された父は不整脈が起きなくなったわけだが、分類で「身体障害者1級」になった。
どこから見ても健常者だが、自分で動くこともできない人と同じランクである。正直、手術を受けてAEDを入れることで死にかけることがなくなって健康そうに見える父と、全盲の人、手や足が動かせない人などが、重度とされる「特別障害者」に分類される理由がよく分からなかった。
ペースメーカーを入れた人は「障害者1級」になるらしいが、ペースメーカーにしてもAEDにしても、心臓に取り付けて前よりよくなるのだから、少なくとも「障害者1級」ではないように思えるのだが。

これは、高血圧の治療を受けている私のような人間は新たに生命保険に入れず、高血圧治療もせずに高血圧をごまかしてるヤツが生命保険に入れるのとよく似ている。
降圧剤によって血圧を下げる治療をしているのだから保険に入れて、治療していないヤツが入れないのなら理解できるのだが、実際はそうではない。

死んだ父とまだ生きている母が障害者手帳を所有しておきながらいうのは何だが、補助金を大盤振る舞いするのもどうかと思う。このままじゃ、年金や生活保護の制度と同じで、貰う人が増えすぎてそのうち破綻を来すような気がしてならない。
「貰えるもんは貰っとこう」という気持ちになるのは当たり前だし、そもそもが役所や病院が障害者手帳をほいほい勧める傾向にある。

減らす対象を増やして、本当に必要な人は減らさない。
介護や福祉などの知識はゼロだが、素人考えで行政側が思い切って何かやらないといけないのではないかと感じた。