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先日、東京メトロ北千住駅の駅名表示板が「北千住」ではなく「北干住」になっていたというニュースがあった。「千」(せん)ではなく「干」(ほす)だったのだ。
LED照明化にあたり表示板27枚が新調されたが、デザイン会社も東京メトロの担当者も気が付かなかった。7月1日~7日に入れ替えされたが利用客も気付かず、21日になって運転士が誤りに気がついたのだという。

どうやったらこのような間違いになるのだろうか。なんとなく想像がつくのは、デザイン会社がCADなどでデザインをするとき、「きたせんじゅ」を変換して単語にすると文字と文字の間隔が調整できないから、「北」「千」「住」をそれぞれ1文字ずつ出力して、ちょうどいい塩梅に並べたからではなかろうか。
それでも「千」ではなく「干」になることが理解できないが、「北千住」の地名を知らない人だったら、デザインのラフ画のようなものを見るとそうなってしまうのかも知れない。外国人が担当していて、日本の地名を知らないとこうなる可能性がある。

東京メトロは恥をかいたが、これはデザイン会社の責任でもあるので、取り替え費用などは折半したのかも知れない。
いずれにしても、笑い話である。

「干」という漢字にまつわる間違いで、英語圏で有名なのが中国のめちゃくちゃな英訳表示の吊り看板だ。
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「干菜类」と書いてあるが、その対訳として下に「Fuck Vegetables」と書かれてある。どう考えても、看板に「Fuck」という単語が出てくることがふさわしいと思えない。
どうすればこんなことになるのか。

簡体字表示の「干菜类」は、日本の漢字で表記すると「乾菜類」である。日本人なら、この字面を見れば乾燥野菜の類が売られているスーパーの吊り看板なのだろうと思うはずだ。

「干」という漢字は「乾」という漢字の簡体字であるが、「幹」という字の簡体字でもある。ふたつの漢字をひとつで表記する意味が分からないのだが、とにかくそうなっている。

「乾」という字は中国語でも乾燥を意味する。
「幹」はだいぶ違っていて、「やる」とか「する」とかそんな意味なのだが、中国語圏でよく聞くのが「幹嘛」(ガンマー)という単語だ。親しい間柄のときに「なんだよ」といった意味で使われる。
ただ「幹」には「女を犯す」という意味もあって、英語の「Fuck」の訳として「幹」が当てられることになる。

「干菜类」の英語訳を担当した人物は、「干(幹)だからFuck」、「菜类(菜類)だからVegetables」とアホみたいな翻訳をしてしまったのだろう。
少しくらい英語の常識があれば、不適当であると分かりそうなもんだが、中国には驚くほど英語を知らない中国人がたくさんいる。

同じように、「干」の字が関わる中国語でめちゃくちゃな英語訳があったと7月28日に中国で話題になったことがあった。
広東省の道路看板について、地元紙の羊城晩報が「广佛新干线をGuangfo Shinkansenと訳している」とニュースにしていた。
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【羊城晩報】快速路“广佛新干线”变“日本列车新干线” (7/28)

「广佛新干线」を日本の漢字で表記すると「広仏新幹線」である。「広仏」は地名で、「新幹線」は「新しい幹線道路」という意味だ。
ところが、この看板のデザインを担当した人物は、「广佛」を「Guangfo」としたのはよかったが、「新干线」をGoogle翻訳などで訳すと「Shinkansen」と出る。それでそのまま「Guangfo Shinkansen」としてしまったのだろう。

ちなみに、中国ではGoogleにアクセスできないが、その代わりにメジャーな百度にも翻訳サービスがあって、そこで「新干线」を翻訳してみたら「new trunk」と出た。「trunk」だと電話線などの幹線になってしまう。本来ならば高速道路だったこともあり、「Guangfo New Highway」とすべきだったと思う。

日本にも酷い英語表記が山ほどあるので人のことは笑えないのだが、それでも中国の間違いは程度の差では済まされないほどぶっ飛んでいる。
なにもかも適当な中国らしい間違いが本当に多く、ある意味でスゴい国だと改めて思い知らされた。