20151127-1

今日の産経新聞朝刊1面トップの記事を見てめまいがしそうになった。
消費税の軽減税率制度について、低所得者にプリペイドカードを配布する方式が自民党内で検討されているのだという。

【産経新聞】プリペイドカード方式が浮上 全飲食料品が適用対象に 限度額年4千円が有力 政府・自民党が検討 (11/27)


記事によると、低所得者に対してスーパーでの食品や外食で使えるプリペイドカードを配布し、それを使って精算すれば10%の消費税が8%になるという。そのようにすれば、どの食品に軽減税率を適用するかなどを考える必要がなく、消費税軽減分の上限を4千円として決まった数の人に配布すれば、軽減税率の条件としていた税収減4000億円で済ませることができるのだという。

これまで、軽減税率を適用するには小売業者にインボイスの提供をさせる必要があって負担増になるといっておきながら、このようなことを思いつく思考回路を知りたい。

この自民党案を実現させるには、カードの読み取り装置が必要だ。記事には読み取り装置を政府が事業者に配布するという案があるというが、日本にPOSレジが一体何台存在すると思っているのだろうか。
例えば、セブンイレブンは国内に1万8千店舗あり、1店舗あたり2台から多くて5台くらいレジがある。平均して3台とすると、セブンイレブンだけで5万4千台もあることになる。

個人経営の小売店や飲食店から巨大チェーンまで含めて、飲食関係の店舗にレジが50万台あったとしよう。カードの読み取り装置のコストに1台あたり1万円かかれば、装置を無償配布するだけで500億円もかかってしまう。
それはいくらなんでも費用がかかり過ぎるとして、店側の負担にしたら店側は大変なことになる。

それに、読み取り装置が接続できないような古いレジを使っている店はレジごと買い換えなければいけない。その費用は店持ちになるに決まっている。
そうなると、「軽減税率適用カードは使えません」という店が続出するのではないか。

新しいレジを使っている店にしても大変である。読み取り装置をポンと付けて終わるわけではない。POSにプリペイドカードから消費税軽減の2%分を引くという改修をせねばならないが、それをやるのも大変である。システム屋が半泣きになって作業している姿が目に浮かぶようだ。

そもそもの話として、本当に消費税10%のアップを予定通りに行うのだろうか。8%になったとき、予想以上に消費マインドが下がって、アベノミクスによる景気の上昇に相当な邪魔になった。次も絶対に同じことが起きる。
軽減税率制度を導入して少しでも消費マインドの下げを防ぎたいのなら、ケチケチせずに「食品は0%、それ以外は10%」とすべきではないのか。
決められた枠分しか税収を減らさないとうい財務省の思惑通りに動こうとするから、どの食品に軽減税率を適用するか悩む必要が出たり、プリペイドカードを配ろうかとアホなことを考えたりするのだ。

正直、食品で2%分の消費税だけ安くなるとか、1年で4千円まで還付されるとか聞いても全然お得な感じがしない。たった2%である。食費に毎月5万円使っていたとして、月々たったの千円でしかない。4千円の上限があるなら4か月だけ。

軽減税率制度を導入するのなら、分かりやすいように0か1、0%か10%にするべきだ。欧米人はアホで暗算をしないから、商品ごとにバラバラで、しかも端数だらけの消費税にしたりする。
フランスではキャビアが19.6%、フォアグラとトリュフは5.5%である。なんだそれは。適用の仕方も気になるが、税率が信じられないようなハンパな値ではないか。

そんなめちゃくちゃな消費税にする必要などない。今の8%でも暗算しにくくて困っている。
10%は数値的にはいい数値だ。だから、邪魔くさいから「全部10%」か、「食べられるものは0%、ほかは10%」などと明確なものにして貰いたい。死んでもそれをしたくないのなら、価格表示は全部内税方式を義務付けるしかない。
幾ら食ったのか分からない飲食店の会計じゃあるまいし、もっと"明朗会計"を心がけるようにして欲しい。