20160214-1

13日(土)に「滋賀維新の会設立記念 草津の未来を考えるシンポジウム」というのが滋賀県の草津市で開かれ、そこに橋下徹が来て講演をするというので大雨のなか行ってきた。
長らく滋賀県に住んでいるが、滋賀維新の会というのを知らなかったが、来週の草津市長選で推薦候補を立てるということで開いたシンポジウムらしい。

2部構成になっていて、1部が市長候補の演説、松井一郎・大阪府知事や大阪府選出の代議士による応援演説、2部が橋下徹の講演だった。

政治家の演説を何度か聞いたことがあるのだが、やはり場数を踏んでいる政治家とそうでない政治家の話の流暢さは全然違う。緊張がこちらにも伝わってくる市長候補の演説はたどたどしいものだったが、松井一郎や橋下徹はさすがである。
小泉進次郎や安倍首相の応援演説も行ったことがあるが、彼らもすごい。安倍首相なんかは舌足らずな話し方ではあるが、話自体は立て板に水で、強調すべきことを繰り返しうまく話しをする。
たかだた数十人の前で話すだけで緊張してしまう私のような素人にはマネのできない芸当である。

肝心の橋下徹の講演であるが、たくさん来ていたマスコミはシャットアウト、録画録音もすべて禁止という完全非公開というものだった。
正直、録音しようと思えば録音できるし、自身の進退に関わるような話をしたわけでもなく、ニュースになるような内容の講演ではなかったが、完全非公開というていにすることで、講演を聞きに来た人になんとなくありがたさを感じさせる作戦ではなかろうか。
会場には関西の主要テレビ局や新聞社、通信社の記者が多くいたが、一体なにを記事にしたのであろうか。

橋下徹の講演はおよそ1時間で、冒頭は辻元清美が自分を「独裁者」や「詐欺師」と言っていることについて、辻元清美を「秘書給与の詐欺で起訴猶予になった詐欺師に言われたくない」と言い返すところから始まった。まずは聴衆の掴みである。関西でそれなりに知られていて、それなりに嫌われているオバハンを滅多打ちに。

返す刀で、前の滋賀県知事だった嘉田由紀子への文句だった。
橋下の講演は彼の主張がふたつあって、前半が政治家のあり方の話、後半が選挙についての話だった。嘉田由紀子への文句は前半の導入である。

かつて橋下徹は反原発を掲げて関西電力にケンカをふっかけていた。その過程で滋賀県知事の嘉田由紀子や報道ステーションで騒ぎを起こした古賀茂明と協力しあっていた。
そんななか、電力需給検証小委員会で国の電力需給について検証したところ、どうやっても足りないという結論に至った。嘉田由紀子や古賀茂明らはなにもせずに文句を言っただけ。古賀に至っては「経産省の陰謀だ」としか言えなかった。
それで橋下は原発の再稼働に反対であったが、再稼働やむなしと判断したという。核燃料廃棄物の処理が決まっていないなか、新規の原発建設は認められないが、今ある分は再稼働すべきでないかと方向転換した。

それによって反原発派からボロカスに叩かれるわけだが、彼は「政治家とコメンテーターは違う」と強く主張していた。
自分がテレビでコメンテーターをやっていたときは好き勝手に意見を述べていたが、政治家はそういうわけにはいかない。電力が足りなくなり、地域や国家の運営がままならなくなるというのに無責任に原発反対だけを唱えるのはコメンテーターだと斬り捨てていた。
なるほど、そのとおりである。

そして講演の後半、震災がれきの処分を引き受けたのは西日本で大阪市だけだったとか、大阪府知事時代に議員定数をどれだけ減らしたとか、大阪市の市営地下鉄や市バスが無料になる敬老パスを廃止し、年間3000円払えば1回50円で乗れるという制度に変えて何十億円か支出を削減したとか、トラック協会への補助金をすべてカットし、医師会、弁護士会から固定資産税を取ってやったと政治家時代の功績のアピールに続く。
公務員の削減、給与削減もやったが、まだまだ公務員の給与は高過ぎるとも言っていた。

そのおかげで、老人や公務員、なんとか協会、医師会、弁護士会をすべて敵に回すことになったと言っていた。そういう既得権益にまみれた連中は、選挙で必死になって自分たちが優位になる候補を応援し、当選させる。それら候補は応援してくれた人たち、票を入れてくれた人たちのために尽力する。政治家になってカネをばら撒く。
しかし、維新の会の候補は、自分たちを応援してくれる人に「なにもしてやれない」と言う。特定の人たちにカネをばらまくのではなく、市民、府民に広く行き渡るように税金を還元するのが彼らのやり方なのだそうだ。
老人だけに地下鉄や市バスの恩恵を与えるのではなく、それをやめて市営地下鉄の運賃を20円下げた。「効果は感じにくいが、どちらがいいか?」と橋下は言っていた。

そして最後に、特定の団体・組織の後押しを受けて、当選後にそれら支援者に便宜を図るような候補者に投票してはいけないと説き、投票したい候補がいないのであれば白票を投じ、有権者の意思をアピールすべきだと言っていた。

橋下徹が講演会で言ってたことはふたつだ。
ひとつは、政治家はコメンテーターとは違うから、言動に責任を持たねばならないということ。
もうひとつは、特定の団体とずぶずぶにつながった候補者に投票してはならず、投票すべき候補者がいなければ白票で抗議の意志を示すこと。
言っていることは実にまともである。橋下は誰かれ構わずにケンカを売りまくり、物議をかもして注目を浴びるという炎上商法が得意で、それがまったく好きではないのだが、講演内容はなるほどと思わせるものばかりだった。話も実にうまく、彼の主張に引き込まれる人が多いのもよく分かる。
一部どうかと思うこともあるが、政治家として有能なのは間違いない。このまま講演だけして、たまにテレビに出るような人物で終わることはないだろう。

ちなみに、質疑応答があれば、「週刊文春のいくつかの浮気報道が世間を騒がせているが、自身が浮気をしたことを報じられた件を含め、これら週刊誌の報道についてどう思うか?」と質問したかったのだが、質疑応答自体がなかった。
その代わり、「自分も週刊文春にやられて、9割は嘘だったけど1割は本当だった。政治家になる前の話だったけど、妻に死ぬほど謝った」と自分から話をして笑いを取っていた。
聴衆が聞きたいことを先に行って、軽く笑いを取ってさらっと流す。ここらへんもさすがだと、妙に納得してしまった。