20160601-1

昨日、台湾北東部を震源とするマグニチュード7.2の地震があった。そのとき、ちょうどタクシーに乗っていて地震だとまったく分からなかったが、車内でラジオの音楽が流れていたのに、急に繰り返しなにかを訴えるアナウンスに変わって「なんだこれ?」と思っていた。訪問先の台湾企業に行ったら、そこの日本担当の女性社員が「さっき大きな地震があったんですヨ~」とバタバタしている。

聞くと、スマホに地震速報があったのと、地震でまあまあ揺れたために女性社員がキャーキャー騒ぐなどしてちょっとした騒動だったらしい。
台湾でも日本のような地震の警報がスマホ経由で流れる。日本で聞いたことがある人も多いだろうが、全員のスマホが一斉になりだすとドキッとして心臓に悪い。
そのうえ、台湾では直下型の地震が多いから警報から揺れまでの時間が短い。台湾ではマグニチュードだけでなく日本と同じく震度の測定もしているのだが、私がいる場所は震度3だったが、地震警報のせいもあって震度3でも怖かったとか。

日本人は地震慣れしているきらいがあって、震度3くらいなら誰も騒がないが、台湾は地震が多いといえど慣れてしまうほどでもないし、大袈裟な人が多いからこうなるのだろう。

ホテルに帰ってからニュース番組を見ていたら地震のニュースはやっていたが、それよりも「今後、さらに大きな地震があるかも」と報道していたのが気になった。地震専門家の話として、今年は環太平洋の地震頻発地帯で震度7の地震が数回起こっており、台湾でもあり得るとしていた。
地震への備えを訴えるのならいいが、いたずらに怖がらせてどうするのかと思う。
マスコミが不安産業なのは日本でも台湾でも同じらしい。

台湾は地上波テレビ局にしてもケーブルテレビ局にしても、大きな放送局はチャンネルを複数持っていて、24時間ニュースを流すニュース専門チャンネルがある。ただ、ずっと生放送ではなく、その再放送もある。
日本のニュース番組はキャスターや解説者がしたり顔でニュースに解説をし、ときには説教を垂れるのだが、台湾のニュース番組は世界標準で、キャスターがごちゃごちゃ自分の意見を喋ることもなく、ニュースへの導入をアナウンスするだけだ。

台湾は人口2400万人ほどの国であるが、ニュースになりそうなことが四六時中起こっているわけではない。だからどうでもいいニュースがしょっちゅう流れる。たとえば、「交通事故がありました」とか「過重積載のトラックが走っていました」とか「コンビニで客と店員が揉めて殴り合いをしました」とか「道端で痴話喧嘩したカップルが殴り合いをしました」などなど。ケンカしている様子を捉えた防犯カメラの映像をニュースにするのはいいのだが、酷いのになると「YouTubeで人気の動画」とか「NHKの報道によりますと」といってYouTubeの動画を流したり、NHK報道をそのまま流したりしている。
「マグニチュード7.2の地震がありました」のあと、「賢いワンちゃんの動画がネットで話題です」ではずっこけてしまう。

そんな台湾であるが、今一番ホットなニュースはアメリカ産豚肉の輸入問題だ。蔡英文政権ではTPP加入への前段階として、対米外交へ配慮してこれまでアメリカの豚肉が禁輸されていたのを解除しようとしている。アメリカ産豚肉には成長促進剤が使われていて、それがよくないとして禁輸措置が取られていた。

それに反対するため台湾の養豚業者が反対デモを繰り広げ、それに加担するかのように沖ノ鳥島からの巡視船撤退を不満に思う一部の台湾漁民も参加。政権批判のために下野した国民党の連中も加わって大騒ぎになっている。
昨日は林全・行政院長(日本の首相にあたる)が立法院(同国会)で施政方針演説を行う予定であったが、全員で青い服を着た国民党の議員が発言席を占拠して行政院長に近づかせなかったため、国会で行政院長が演説ができないという波乱の幕開けとなった。
女性議員同士が取っ組み合いをしている様子が何度も報じられていた。

アメリカ産豚肉輸入の反対派は「毒豬入台」(毒入り豚が台湾に来る)と大騒ぎしている。台湾とアメリカの間の話なのでどうでもいいのだが、同じようなことが日本にも飛び火しそうである。昨日書いた福島近県産の加工食品の輸入解禁やほかの食品の証明書添付の緩和も、「被曝食品」とか「毒入り食品」などと言われて叩かれ、政権批判の道具にされそうな勢いだ。

蔡英文総裁は政権発足直後からいろいろ積極的にやっている。昨日も書いたとおり日本産食品の輸入が台湾でいろいろ制限されていることを解除されることに日本は手を貸すべきだし、台湾のTPP加入も中国の邪魔を撥ね退けて積極的に後押しすべきだろう。
今こそ日台間の関係をさらに深めるチャンスである。