20160831-1

安い題材の小説やドラマに、些細なウソを隠すためにウソを重ね、とんでもないトラブルに巻き込まれていくというのがよくある。
世の中には小説以上に実際にそんなことが多くある。大抵が本人の問題による自業自得である。
三菱自動車の燃費試験不正問題はまさにそれだろう。

日本のカタログスペックの燃費なんて大した参考にならないし、消費者もそれを分かっている。だから、架空の試験データで燃費試験をでっち上げ、良い数値を出してもいいだろう。研究開発費が他社に比べて少ないのだからしょうがない。
不誠実な三菱自動車の社員はそう考えた。

普通はバレなさそうだが、いろいろあってバレてしまった。そこで素直に平謝りし、これまで隠していたことを全部出すべきだった。三菱自動車はこれまでにもリコール隠しによる殺人など、様々な問題を起こした会社だった。だから、正直にゲロするしかなかった。

ところが、不誠実な三菱自動車の社員はまた考えた。ほかの車種での不正もバレたらとんでもないことになる。ここは気合いでまたごまかすしかない。

不正がバレた軽自動車の4車種以外、現行の普通車9車種の燃費再測定を行った際、最大で70回も走らせて、もっとも平均値がもっともいい値になる3回を抜き出して燃費を申請した。そのような都合のいいデータの抜き出しによる燃費申請は認められていない。
三菱自動車は「再測定したが、申請値より3%下回る程度であって、誤差範囲だから問題ない」と主張した。

三菱自動車はほかの車種の燃費不正を隠すためにウソを重ねた。
だが結局、国土交通省が行ったテストで9車種のうち8車種でカタログ値を下回っていた。RVRに至っては、8.8%も下回っていた。
同様に燃費不正が発覚したスズキが再試験を行い、現行26車種ではいずれも燃費の実測値がカタログ値を上回っていたのとは大違いである。

三菱自動車はかつてのリコール隠しによって外れたタイヤで母親と幼子を殺してしまった経験を踏まえ、二度と不正はしないと誓っていたのに、燃費不正をした。燃費の不正などリコール隠しに比べたらどうってことないと三菱自動車の人間が思うのも分かるが、この不誠実さは消費者は許さない。
しかも、それがバレてからもまたウソを重ねて他車種で燃費をごまかそうとした。三菱自動車は性根が腐っているということの証である。

何十回も計測し、めちゃくちゃ調子いいときの平均を取っていい値にしたいというのは、開発者なら理解できる行動ではある。だが、不正の検証の段階でそれをすべきではなかった。

三菱自動車が日産傘下に収まり、社員はほっと一息ついたのかも知れないが、ハッキリ言ってこの会社は終わりだ。本当の終わり。
この期に及んでも不正を働くような会社は、またリコール隠しをするかも知れない。なにをごまかすか分かったもんじゃない。他社に比べて研究開発費が少ないことも分かった。燃費のみならず、安全性能でも劣っているのではないか。

私はIT機器の開発の仕事をしているが、うるさい客がいるので、ファームウェアのバグや製品にハード的な問題があったときに客に適当にごまかしたり、ウソとは言わないがある事実を隠してやり過ごそうとしたことが何度かあった。
それでやり過ごせることもあるが、ウソや情報隠しがバレたとき、それの言い訳をするのが面倒臭いから、今では変更履歴などを全部伝えるようにし、問題があったときもなにも隠さず全部伝えるようにした。
いくらか手間がかかるわけだが、黙ってあとで爆発させるより、最初からちょろちょろと少しずつ燃やしておく方がいいのである。

私が勤める会社と三菱自動車では規模が違いすぎるが、結局のところ、どんな仕事でも共通していることはある。ウソをつかず、不都合な情報を隠さないということだ。絶対に先に出しておいた方が、あとあとのリスクを考えるといいに決まっている。
三菱自動車は余裕、余力がなく、ウソにウソを重ねた。これがバレて、消費者に本当に見放されてもいいとする最後の賭けだったのだろう。そして、三菱自動車はその賭けに負けてしまった。
安易なウソに社運を賭けるという愚かな判断により、三菱自動車は自分で自分の首を絞めてしまった。

そのような会社は潰れるに値する。日本は幸いにして、三菱自動車以外にも自動車メーカーがたくさんあるのだ。三菱自動車ごときが消えたところでどうということはない。