20170224-1

食事中にクチャクチャ食べる音などに嫌悪感を通り越して怒りまで感じてしまう人をミソフォニア(音嫌悪症)と呼ぶらしい。ミソフォニアは他人がクチャクチャ食べたり、鼻をすすったり、タイピングで大きな音を立てたり、ノック式ボールペンをカチカチ鳴らす音に怒りを覚える。
私はそれらの音に嫌悪感を抱くが、ムカつくことも多いので、多分ミソフォニアなのだろう。雨だれの音が気になったり、通勤電車内でつまらない会話を延々しているヤツがムカつくので、シャットアウトするためにイヤホンを付けて音楽を聴きながら寝るか、動画を見ている。職場で昼食を取るとき、食事のマナーの悪い同僚にムカついて仕方がない。ボールペンをカチカチ鳴らし続ける先輩社員、キーボードのリターンキーをめちゃくちゃ強く叩く上司には殺意を覚える。

イギリスの大学の最近の調査で、ミソフォニアの人はそうでない人と前頭葉の構成や脳の働きが異なるのだという。そのため、他人がたてる特定の音が引き金となり、脳を極端に興奮させてしまうのだという。早い話が脳の障碍みたいなもんだろう。
昔、ピアノ騒音殺人事件というのがあった。犯人がアパートの階下のピアノの練習音に耐え難い苦痛を覚え、夏の暑い日に怒りが爆発。ピアノを弾いていた8歳の女児、4歳の妹、母親の3人を刺し身包丁で刺殺したという。
犯人は死刑判決を受けるが、「拘置所内の騒音に耐えられないから死にたい」として控訴を取り下げ、死刑が確定した。この男は1977年に死刑が確定したが、現在まで死刑が執行されていないのだという。
牢屋で聞こえる音が苦痛で死刑を望んだのに、死刑執行されないのは別の罰を与えられているようなものである。

ここまで行ってしまうといろいろ問題だが、わりと音に過剰に反応してしまう方なので理解はできる。一度気になってしまうと気にならずにはいられなくなる。
職場はオッサンばかりなので、とにかくうるさいヤツばかりだ。みそ汁のみならず、おかずまですすって食うヤツがいる。コーヒーを飲んでいちいちプハーと息を吐くヤツがいる。貧乏ゆすりをしてドンドン音を立てるヤツがいれば、四六時中鼻をすすsっているヤツもいる。必要以上にでかい声で話をするヤツもいる。
とにかく、どいつもこいつもうるさいヤツばかりだ。どうしてもっと音を立てずに静かにできないのか。

私は音に過敏であるが、音ではなく匂いに過敏な人もいるという。選擇時に用いる最近の柔軟剤は、衣類を柔らかするというより匂いを付ける方に重点が置かれているように思える。ほのかに香るくらいならいいが、たくさん柔軟剤を入れて香水かと思うほど衣類から匂いを漂わせている人がいる。
化学物質過敏症は厚生労働省が2009年に病名リストに登録した立派な病気で、患者には倦怠感や筋肉痛、頭痛、不眠などの症状が出るという。ただ、化学物質が人体に及ぼす影響は研究が進んでいないうえ、化学物質過敏症が科学的、疫学的に立証されたわけでもないので、病気として見ることに懐疑的な医師もかなり多い。
もしかすると精神的なものなのかも知れないし、脳の問題なのかも知れないが、とにかく柔軟剤などの化学物質の匂いを受け付けない人がいることは間違いない。

ただ、それらの人たちが「柔軟剤を使わないで」と主張することが受けいられるかは別だ。気持ちは分かるが、それはそう感じる側の問題であって、みなに受けいられるような主張ではない。私が職場で先輩社員や上司に対して「もっと静かに仕事しろ」とブチ切れても思ったほど理解が得られないのと同じだろう。
音を我慢したり、電車内で音楽を聴いてごまかすように、マスクをして緩和して、満員電車を避けるなど自分でなんとかするしかない。ピアノの音と同じで一度匂いが気になりだすと、本当はなんでもないのに過剰に気にすることになってしまうのだろうが、そんなことは他人からすれば知ったこっちゃない。

化学物質過敏症までは理解できるのだが、電磁波過敏症になってくると分からなくなる。10%の人が化学物質過敏症であると言われているが、電磁波過敏症も4%いるという。電磁波過敏症は疾病とは認定されておらず、病気だと主張する人がいるだけの病気だ。
私は電磁波だらけの職場で仕事をしている。電波を出す機器もあるのだが、基本的に電気を使う機器というのは電磁波を出すので、パソコンなどから電磁波が出まくる。スマホを3台、タブレットを1台持っており、それからももちろん電磁波が出る。しかし、電磁波を受けてカラダが不調になったなどということはない。普段の寝不足のほうがよほどカラダに影響を与えている。
電磁波という概念を知らなければ、電磁波過敏症などないのではないか。電磁波のことをなにも知らない人が電磁波防護エプロンを着用する。電磁波は回折するので、跳弾のように反射した電磁波を上から下から背後から受けるというのに、エプロンで前だけ防ごうとする。
大昔じゃあるまいし、今やどこへ行ってもテレビやラジオ、ケータイなどの電波が飛び交っているが、いろんな電磁波に過敏に反応してしまう人が不憫で仕方がない。電磁波など知らなければよかった。

そういう意味では、電磁波過敏症に似たもので放射線にも過敏症があると思う。なんら影響がないのに、あるかのように感じてしまう。放射線を僅かでも浴びるとカラダに悪い影響を与えると信じ込んでいる。そのくせ、酒を飲み、タバコを吸い、不摂生で太ったりしている。
しかも悪いことに、ピアノ騒音殺人事件の犯人のように、キチガイのようになって他人に自分の言うことを聞かせようとする。この犯人は自分の訴えが聞き入れられずに暴発してしまった。放射能やら放射線がどうとか口うるさく言う連中も、他人に自分の考えを聞かせようとしている。原発を動かさないのはもちろん、被災地のゴミ焼却すら許さない。現時点ではほぼ言うことを聞かせられているが、そのうち思い通りにならなければ暴発しないかが心配だ。

そういう意味では、ほぼミソフォニアの私も暴発しないようにせねばならない。イライラしても自分を落ち着かせるようにできないといけない。
原発や放射線のことで文句ばっかり言っている連中も、まずは自分を落ち着かせる方法から学んだ方がいいように思う。