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ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長がトランプ大統領の掲げる保護貿易主義を批判したうえで、アメリカでの生産を求められたら「撤退する」と明言したとニュースになっていた。

ユニクロのペラペラのTシャツに代表されるような安物の服は中国、ベトナム、カンボジアで作ってなんぼだ。アメリカの連邦政府が定める最低時給が7.25ドル、州によっては最低時給が10ドルを超えている。
中国の最低賃金はもっとも高い上海市でも月3万6500円で、ベトナムは月1万6500円だ。月160時間の労働として、ベトナムだと時給100円である。ものの値段でもっとも幅を占めるのが人件費であり、時給100円が1000円になったら販売価格に転嫁せざるを得ない。
そんなんで安売り商売なんぞやっていられないから撤退するのも当然であろう。

トランプ大統領は自動車やiPhoneについて、「アメリカで売りたいならアメリカで生産しろ」と言っていた。そうやって雇用を生み出すつもりらしいが、消費者のためにならないのは明白である。コストがかさんで高くなり、誰も買わなくなることで企業の経営が傾いたり、失業者を生むことにもなる。
アメリカはこれまで市場主義経済を日本に押し付けてきた。それを放棄するということは、日本にもそれを求めなくなるということだろう。その代わりにアメリカの保護主義を押し付けられては、結局アメリカだけが得をして、アメリカが納得するよう努力せねばならないのは変わらない。

自分さえよければいいというジャイアン的な振る舞いを続けているトランプであるが、こいつはしばしば言行不一致が見られる。
例えば、アップルにiPhoneをアメリカで作れなどと言うわりには、大統領になるまで愛用してきたスマホがサムスンのGalaxy S3だった。2012年に発売されて大ヒットしたが、型遅れも甚だしいスマホである。韓国のスマホメーカーがベトナムやら中国やらで製造しているスマホをトランプは使用していた。ツイッターをやるだけならこれでいいのかも知れない。

トランプがサムスンのGalaxy S3を使用することになったのは、アップルがFBIから銃乱射事件の犯人のiPhoneのロック解除要請を拒否したことが発端だった。大統領選挙中だったトランプはアップルの対応を批判し、アップル製品のボイコットを呼びかけた。このとき、自身はなぜかすごく古い機種であるGalaxy S3を使い始めた。めちゃくちゃカネを持っているくせに、カネ持ちのやることは分からん。芸人がボケているんじゃないかと思うくらいだ。

とにかくアップル製品をボイコットするという筋は通したらしいのだが、さすがに大統領の立場とあっては古すぎるAndroidを使うことにセキュリティ上の懸念もあり、再びiPhoneを使い始めたようである。ボイコットを呼びかけたアップルのiPhoneを使うことに本人はどう思っているのか知らないが、普通の人が恥ずかしいと思うようなこともトランプなら平気なのかも知れない。そうでもない限り、あそこまでいろいろ問題のある振る舞いはできないだろう。

それを考えると、思ったほどこだわりはないらしい。私ならいろいろ気を遣ってしまう。アメリカ製造のスマホはないとしても、過去にあれだけアップルをボロカスに言ったのだから、GoogleのNexusか、マイクロソフトのWindows Phoneを使ってしまいそうだが、トランプはiPhoneを使った。
アホだから過去のことを忘れたのではなく、部下から言われて妥協したのだろうか。

トランプはジコチューを絵に描いたような大統領で、こいつのご機嫌を取らないといけないのかと各国の政治家がウンザリしていることだろう。
安倍首相は訪米した際に満面の笑みで迎え入れられ、トランプのホテルに泊まり、一緒にゴルフをした。それに対しドイツのメルケル首相は、マスコミから握手を求められたトランプが握手すらしないという冷遇ぶりだった。
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これだと安倍首相がアメリカの忠犬のようだが、安倍首相としては馬が合うトランプと親密にやりながらも、うまくトランプを操るつもりなのかも知れない。

トランプが分かりやすいのか予測不能なのか未だによく分からないが、入国制限は反撥ばかり招き、オバマケアの代替法案は取り下げになり、メキシコ国境に築く壁は予算計上の先送りが決まった。政策の目玉が次々と早期実行が不可となっており、アメリカ国内では実行力に対して疑問が湧き出てきた。結局は口だけでなにもできないのではないかという疑問だ。
まあそんなもんだろう。

トランプ大統領の目立ち方は歴代随一だが、残した結果はイマイチになるかも知れない。
4月6、7日は中国の習近平と会談する予定だが、とりあえずそこで米中貿易の大幅赤字や雇用問題を取り上げ、厳しいものになるだろうと宣言した。
Galaxy S3からツイートしたものではないようだ。トランプに期待できることは、彼以外では不可能だった厳しい対中政策くらいだろう。
お笑いはもういいから、せめてそのくらいでは結果を残して貰いたいものである。