20170627-2
23日(金)に台中最大の夜市である逢甲夜市に行き、0時前になったのでホテルに帰るためにタクシーを拾った。
韓国のタクシーはヒュンダイの高級車ばかりで乗り心地がいいのが多いが、台湾のタクシーはボロいのが多い。トヨタのウィッシュのようなワゴンタイプの車は新しいのがまだ多いが、セダンタイプのタクシーは古いものが多い。

台湾のタクシーの謎として、ボロいセダンのタクシーは大体がシートに木の玉が連なったのが敷かれている。なんという名前のものか知らない。蒸れを防止するものらしいのだが、座り心地がいいわけでもない。
逢甲夜市で拾ったタクシーは、ボロいセダンで木の玉のシートが敷かれてあるハズレのコンボだった。

15分くらいで降りるからまあええわと思っていたら、60歳くらいの運転手が中国語で話しかけてきた。「どこから来たの?」と言っていることは理解できた。
「日本(リーベン)」と答えればよかったが、とっさに訊かれたので「えーっと」と言うと、運転手がその様子を見て「リーベンリーベン」と言いながら分かったような顔をしていた。

日本人は「えー」とか「あのー」と言い過ぎるきらいがある。プレゼンでは「えー」とか「あのー」という言葉はよくないとされており、実際話が聞き取りにくくなるし、冗長な感じがする。
台湾のバラエティ番組を見ていると、日本人のマネをする場面で大体が「アノ~」「スミマセ~ン」と言っている。
中国人はあまり「あのー」とか「えー」に当たる言葉を言わない。だから、私が「えーっと」と言った時点で運転手は日本人だと分かったのだ。

どの言語にも「えー」とか「あのー」に当たる言葉がある。英語で「Umm」などの言葉はフィラー(Filler Words)と呼ばれ、会話を埋めるための余計な言葉だとされている。英会話が上達すると、なるべくこのフィラーを使わないよう言われる。
ただ、日本人の性質として、言葉を慎重に選びたいとか、自分が喋るときなのに黙っているといけないと感じてしまう。しかし、海外では「えー」とか言うくらいなら黙っておいた方がいいらしい。

台湾でスーツを着ていると台湾人と思われることは殆どないが、クールビズの格好をしていると店員から中国語で話しかけられることが多い。レジで話かけられる内容は殆どが「袋は必要ですか?」なのでとりあえず「不要」だと言っておけばいいが、明らかに袋以外のことを話しかけられたり、カバンを見ていて店員になにか説明されると返す言葉に困る。口ごもって「あー」とか言っていると、「日本人ですか?」と日本語で訊かれることがたまにある。台湾は戦前を生きた年寄りが日本語ができるが、若い人でも日本語を習っている人がいて、そこそこ日本語で話ができたりする。

私を含め、日本人は外国語を話したがらない人が多い。自信がないからだ。しかし台湾人は片言でも積極的に日本語や英語で話をする。外国語を習得するには、文法を習うことよりも、アグレッシブさを学んだほうがいいと思う。
私もちょっとくらい中国語で会話できればいいと思うのだが、なかなかうまくいかない。日台交流は容易ではないのだ。

26日(月)の夜、台中市街にある一中商圏という夜市のような屋台が並ぶ場所に行ってきた。
シューマイやラーメンを売る店があり、そこでシューマイを食べた。店先に色とりどりのシューマイが並べられていて、自分でせいろに取るとその場で軽く蒸してくれて食べられる店だ。

そこでシューマイを食べていたら、私の前のテーブルに座っていた若い男性が店員になにかを訴えていた。どうもその様子から、その店の店員が休みに来ているか、まかないを食べている途中のようだった。
若い男性と店員がなにかを探して「ないわ」と話していた。よくよく見てみると、靴下が短すぎて、くるぶしのあたりが靴にあたって靴ずれが起き、皮が酷く向けていた。絆創膏を探していたのだろう。

私は財布にいつも絆創膏を何枚か入れているので、若い男性が諦めて席に戻ったところで1枚差し出してやった。若い男性は驚いた様子で「謝謝」と何度も礼をする。適当に「不客氣」(どういたしまして)と答えて「もういいから」と手を上げていたら、店員が私が食べていない種類のシューマイを2個くれた。1個15元だから、絆創膏1枚で30元貰ったようなもんだ。
絆創膏は1枚しか渡さなかったが、あとあと考えれば剥がれないように2枚渡せばよかったかと思ったが、あとからもう1枚追加で渡すとなんかやりすぎで気色悪いように感じるので、貰ったシューマイだけおいしくいただくことにした。

向こうが私が日本人だと気がついたかどうかは知らないが、一応ささやかな日台交流はできたのであった。