20170716-1

4月からフジテレビの月9で放送されていた「貴族探偵」の第9話に田中千絵がゲストで出るとしてYahoo!ニュースのトピックに取り上げられたが、コメントの反応を見ていると「誰それ?」というものが多かった。田中千絵が日本のドラマに出演するのは12年ぶりらしく、知られていないのも当然かも知れない。

私は台湾の映画やドラマをチラホラ見ているので、田中千絵のことはそこそこ知っている。カノジョは台湾を拠点に活動している女優だ。2008年に台湾で大ヒットした「海角七号 君想う、国境の南」のヒロインに抜擢され、台湾で一躍ときの人となった。
「海角七号」は台湾の歴代興収2位を記録するほどヒットし、それまで不振だった台湾映画が再び脚光を浴びるきっかけとなった。

田中千絵は台湾の映画やドラマにバンバン出ているわけではないが、台湾で知られた日本人女優としてテレビ番組の呼ばれることが多く、よく見かける。先日も、自分が台中に行く前に参考にしようと見ていた「愛玩客」という旅行番組にゲストで出ていた。



この日の「愛玩客」には田中千絵のほか、隠しゲストとして大久保麻梨子も出ていた。大久保麻梨子は日本でグラビアアイドルなんぞをやっていたが、一念発起して台湾へ留学し、女優になった人物だ。この人も台湾のドラマで主演を務めるなど、台湾で有名だ。だが、田中千絵と同様に日本ではあまり知られていない。

台湾で芸能活動をしている日本人の特徴として、日本であまり成功しなかったが、台湾では売れたというのが多い。日本で売れなかったから海外に活路を見出すのだから当たり前の話かも知れないが、台湾で売れたからといって日本に凱旋帰国できるわけでもなく、台湾に骨を埋めるというパターンがほとんどだ。

台湾で毎週月曜から金曜の夜11時から放送されている「小燕有約」というトーク番組に、千田愛紗という日本人が出演した。放送された動画をYouTubeの公式ページで見ることができるが、他の日の再生回数が4万~7万回が多いのに、7月6日に放送された千田愛紗の回だけ21万回再生されており、千田愛紗が注目されていることがよく分かる。
千田愛紗は台湾で歌手をしているタレントで、入籍を済ませていた台湾人モデルと4月に沖縄で結婚式を挙げ、6月に台湾の有名芸能人を招いて披露宴を開いた。そののろけ話などを番組でしていた。



この千田愛紗もほとんど知られていないと思う。千田愛紗は大嘴巴(Da Mouth)という台湾の音楽グループでボーカルを務めていた。大嘴巴自体は解散してしまったが、アメリカ育ち、カナダ育ちの台湾人ボーカルとラッパー、日本と台湾のハーフのDJ、沖縄出身の千田愛紗の4人で構成されるかなり風変わりなグループだ。



この人は元々、台湾でデビューした日本人4人組のガールズグループSunday Girlsのメンバーだった。このグループには千田愛紗のほか、佐藤麻衣というのちに台湾で超有名なタレントになる人物がいた。佐藤麻衣は台湾のバラエティ番組で司会を務めるほどになり、台湾でもっともよく知られている日本人タレントにまで登りつめたが、2014年に台湾の大企業の御曹司と結婚してタレント活動を辞めてしまった。

田中千絵、大久保麻梨子、千田愛紗、佐藤麻衣と、台湾で成功した日本人タレントは多い。特に女性ばかりだ。だが、台湾でどれだけ知られても日本では知名度ゼロで、箸にも棒にもかからないようなタレント扱いされてしまう。
これがアメリカであれば話が別なのだろうが、台湾や韓国の芸能界は日本では日本よりも低く見られがちだ。実際は、台湾や中国に関してはマーケットが中国語圏なのでバカにできるようなレベルではないのだが、評価はその程度にとどまる。
日本で知名度が上がらないことが報われないと表現していいのか分からないが、こういう現実を見ると芸能界は厳しいと思う。アメリカのドラマにちょっと出たら日本で凱旋帰国扱いされ、ゴールデンタイムのテレビにゲスト出演できるが、アジアのよその国でいくら成功してもなんの評価もされない。ディーン・フジオカがいるが、彼は別に台湾や香港での仕事が評価されたわけでもなんでもない。

私が俳優ならば、アジアを目指すことはないと思う。日本でダメなら外国で食っていくという根性は立派だが、現状では祖国でその仕事が評価されないのだから、どうしても二の足を踏んでしまう。だから、それでもアジアで一旗揚げてやろうと頑張っている日本人俳優・女優は素直にスゴイと思えてならない。