20170721-1

アメリカのトランプ大統領が19日のニューヨークタイムズのインタビューで、ドイツのハンブルグで先日行われたG20の夕食会で、安倍首相夫人の昭恵氏がハローも言えないくらい英語が話せなかったと語って物議を醸している。
トランプ大統領はインタビューで、「私は安倍首相の妻の隣に座っていた。彼は素晴らしい男だし、彼女も素晴らしい女性だが、英語を話さない。ハローも言えないぐらいだ」などとわざわざ話をしたのである。

「彼女は可愛らしく、素敵な夜を過ごせたが、通訳がいなかったら大変だっただろうね」とトランプ大統領は付け加えていたが、これに関して米メディアから事実であるかどうかのチェックが入った。
昭恵夫人は小中高を聖心女子学院で学び、その後、聖心女子専門学校英語科を卒業している。2014年にはニューヨークで行われたHIVのシンポジウムで英語のスピーチもしている。昭恵夫人がどの程度英語が話せるかは分からないが、どう考えても挨拶くらいはできるだろう。
米メディアの判定は、トランプ大統領の話がフェイクというものであった。

実際どうなのかは分からない。この話にはふたつの見方がある。

ひとつは、森友学園で政権にダメージを与えた昭恵夫人に対し、首相やら官邸のサイドからトランプとなにも話すなと言われていて、本当になにも話さなかったというものだ。それでも挨拶くらいはしそうなもんだが。
とにかく、トランプとマトモに会話をしなかったことで、昭恵夫人がトランプを無視したとして反トランプ陣営からヒーロー扱いされている。

もうひとつは、わざわざこんな話をでっち上げ、トランプがインタビューで披露したというものだ。トランプはG20の夕食会で、ロシアのプーチン大統領の横の席に移り、1時間45分の夕食会のうち1時間もプーチンと話し込んでいた。ロシア疑惑でいらぬ腹を探られたくないから、昭恵夫人の隣が退屈だったからプーチンの横に移ったという言い訳にしたいのかも知れない。

正直どっちでもいいが、トランプ大統領が話題作りに事欠かないことがよく分かる。
フランスに行ったトランプ大統領が、マクロン大統領夫人に対して「いいカラダしてるねぇ」というニュアンスの発言をした。
今日の産経新聞の外信コラムに載っていたが、自分の娘について「イヴァンカが俺の娘でなければ、付き合っているのにな」と発言するなど、いちいち下品でデリカシーに欠けることを言う。
漫画で見るアホなアメリカ人の実写版である。

また、自身が米プロレス団体のWWEに参戦している動画を加工し、ボコボコにしている相手の顔に関係が悪化しているCNNのロゴを貼り付けた動画をツイッターにアップするなどした。
反トランプのメディアをフェイクニュース呼ばわりするなど、反応が子供のようである。わざとやっているのかも知れないが、これが一国の大統領、しかも世界でもっとも重要な国であるアメリカの大統領であるのかと思うと、溜息を通り越して薄ら笑いが出てしまう。

トランプ大統領の誕生で世界がメチャクチャになるかと思ったが、まだ数か月では短すぎるのだろう。小ネタみたいなニュースを提供するにとどまっている。だが、そのどの小ネタも想像を超えたものが多く、トランプ大統領の凄まじさを物語っている。

アメリカで20年続くアニメの「サウスパーク」で2016年に放送された最新のシーズン20では、歴史教師のギャリソン先生がアメリカ大統領に就任し、トランプの髪型を模したカツラを被り、アニメのなかでトランプのように振る舞っていた。シーズン20はその話が中心になっているのだが、今年のシーズン21ではそのネタをやらなくなるそうだ。
シーズン20の最中に行われた大統領選で、まさかトランプが勝つと思っていなかった制作陣は、トランプに見立てたギャリソンが落選する話を作っていたが、放送数日前に大急ぎで話を作り直すハメになった。
いろいろ苦労してギャリソン先生が大統領になる話を進めていたが、それも終わりだ。制作陣曰く、「風刺が現実になった」。アニメよりもバカバカしいことが政治の世界で起こり、政治こそコメディのようになってしまった。
だから、アニメから今のアメリカの政治の話を取り除くのだという。コメディは政治家にやらせろというわけだ。

思えば、日本の政治もコメディ要素を多分にはらんでいる。トランプ大統領率いるアメリカの政治とは質の違いではなく程度の違いくらいだろう。
世の中、なんだかんだで政治家がやる政治の世界が一番滑稽なのかも知れない。