20170723-1

昨年、高市早苗総務相が放送法第4条に定められた「政治的公平」に関して、テレビ局のなにかの番組が政治的公平性に欠く放送を行った場合、テレビ局に電波停止を命じることができるという見解を示して問題になった。
左よりの一部のマスコミは、「言論の自由の侵害」、「メディアへの干渉」などと猛反発した。法解釈による可能性を示しただけで、実際にやるとはひと言も言っていないのに、高市総務相は袋叩きにあった。

もしそれでテレビ局が電波停止を命じられていたら、「サンデーモーニング」を放送しているTBSはしょっちゅう電波停止措置を食らっていそうである。

放送法第4条には、テレビ番組の編集にあたって、次の4つをジュンスすることとしている。
  1. 公安及び善良な風俗を害しないこと。
  2. 政治的に公平であること。
  3. 報道は事実をまげないですること。
  4. 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
正直、これができていないニュース番組や情報番組は山ほどある。それでも、いまだかつて電波停止を命じられたテレビ局は存在しない。
一体どのような放送をすれば電波停止に追い込まれるのだろうか。

テレビ局は公共の資産である電波の帯域を使用しているため、事実を放送せねばならないと放送法によって定められている。新聞や雑誌は勝手に売り買いされるものなので、事実でなくともあまり咎められない。朝日新聞や週刊誌がウソばかり報じても、特に処分は受けないのである。
それに対し、テレビ局は建前上、ウソを放送してはいけないとされている。

にも関わらず、日本のテレビ番組にはやらせやウソが氾濫している。バラエティ番組を面白くするための演出としてのやらせを含めると、事実でないことが連日テレビで山ほど放送されている。

先日TBS系列で放送された「世界の怖い夜!」という心霊関係のバラエティ番組で、霊を探せというコーナーで紹介された心霊写真が制作サイドによるやらせ写真であることが発覚した。ある展望台で夜に撮られた写真をスタッフが加工し、足下に女の薄気味悪い顔を写し出した。だが、元の写真の持ち主が「元々なにも写っていなかった」と名乗り出てバレてしまった。
しかもその心霊写真、心霊研究家が「展望台から落ちて死んだ女性の霊です」などと解説していた。実際は写真加工ソフトで嵌め込まれた顔なのに。
心霊写真がニセモノだとバレたあと、その心霊研究家は「偽造されたものでも霊が宿ることがある」などと言い訳していた。

今回はたまたま番組スタッフが作ったニセの心霊写真が発覚してしまったわけだが、そもそもの話として、事実しか報道できないはずのテレビ番組で心霊写真やら心霊現象を事実であるかのように紹介することが許されるのだろうか。
怪談話などを一種のエンターテインメントとして捉えることはできるが、この手の番組では霊媒師や心霊研究家を自称する詐欺師たちに「○○の霊です」などと言わせ、視聴者を欺いている。

今の心霊写真は、デジタルで撮られた画像データが元の写真で、画像の加工技術も格段に向上しているため、どんなあり得ない画像でも簡単に作ることができる。
かつての心霊写真はフィルムで撮られていて、ネガが存在しているわけだが、それでもシャッター速度を遅くして被写体を素早く動かしたときに、体が透けたようになったり、一部が見えなくなったりすることを利用しているものが多かった。
よくある足が消えている写真は、シャッター速度を極端に遅くした状態で足を素早く動かすと撮ることができた。
霊の写り込みにしたって、手前に飛んでいる虫やゴミがフラッシュの反射で、あるいは単にレンズが汚れていただけで顔に見えただけだったりする。人間の顔認識は割とあいまいで、点が3個あると人間は顔だと認識してしまう。∵(なぜならば)という記号のような点3つで顔のように見える。

なんら科学的な検証を一切行うことなく、霊だとなんだのと放送して許されることが信じられない。
最近は、ただの心霊だけでなく、動画にUFOが映ったとか、UMAが映ったとかいうものも多い。しかし最近は動画の加工技術も進んでいるので、個人でCGを活用したすごいフェイク動画を作るヤツがたくさんいて、その胡散臭い動画がテレビで真実っぽく紹介されている。

そのほか、テレビ東京の番組では、フリーメイソンが悪の政治結社であるかのように言われ、アホ丸出しの芸人が「信じるか信じないかはあなた次第です」などとほざいている。
心霊やUFOの動画番組も同様で、「事実であるかは分からない」と、信じるかどうかは視聴者次第だと言っている。

それで許されるのだから、解説員がしたり顔でつまらない解説をするニュース番組や、日本が嫌いで嫌いで仕方がない情報番組なども、番組の最後に「信じるか信じないかはあなた次第です」とお断りしたらいい。
すべて事実であるかのように報道をするから問題になるのであって、心霊やUFOの番組のように、ちょうどいい加減でウソ臭く感じられるよう番組を作り、最後に「信じるのは自己責任」という逃げを入れておけば高市総務相から睨まれることもないだろう。是非そうすることをオススメする。