20170725-1

先月からヒアリとかいう南米産のアリが日本の世間を騒がせている。初期に「アメリカで年間100人が死んでいる」と誤った情報が流れたため、"殺人アリ"などと呼ばれてマスコミがセンセーショナルに報じたせいで一気にニュースが広まった。

現状では、神戸などの港で中国から来たコンテナに紛れ込んでいるのが見つかることがほとんどで、日本に定着しているのかは定かではない。
また、今年から急に来たように思われているが、実際は何年も前からボチボチ来ていたのかも知れない。
単に中国でヒアリが増え、コンテナに紛れ込む可能性が増えたために日本でも見られるようになっただけだろう。

ヒアリの毒によって人が死ぬのは、スズメバチと同じでアナフィラキシーショックを発症したときに適切な処置が取られない場合とされている。
アメリカで年間100人死んでいるという数字の根拠は、米国疾病対策センターが出した「米国では毎年何千人もの人々が昆虫に刺され、少なくとも90~100人がアレルギー反応によって死亡している」という情報にあるという。
アメリカで100人が昆虫に刺されてアナフィラキシーショックで死んでいるとして、ヒアリで何人死んだのか不明だ。もしかしたら、ヒアリで死んだ人はいないかも知れない。
日本ではスズメバチによって毎年30人くらい死んでいるようだが、ヒアリのことを心配しすぎる必要もないかも知れない。ヒアリに噛まれても、アナフィラキシーショックに備えて誰かのそばにいれば何とかなる。

ヒアリ対策は必須だろうが、これまで侵入したヒアリを駆除できた国はニュージーランドだけだと言われている。しかしそのニュージーランドでもほかの害のあるアリの駆除には失敗している。そのことを考えると、ヒアリを日本に定着させないことは事実上ムリなのかも知れない。

20年以上前、世間を騒がせたセアカゴケグモにしても、散々危険だと煽られたが、セアカゴケグモでどうにかなった人を聞いたことがないし、セアカゴケグモ自体もあまり気にされなくなってきた。今では発見されてもニュースにならなくなった。

マスコミは不安産業と呼ばれ、人々の不安を焚き付けることを生業としている。原発は爆発し、オスプレイは墜落する。ヒアリのようなインパクトのある殺人アリは大好物だろう。連日、ヒアリ、ヒアリの大騒ぎである。ヒアリなどまだ一般人が気にするようなことでもないのに、マスコミに煽られた人々は熱心にヒアリについて学び、ヒアリについて不安になったりする。
ムカデやスズメバチの方がよっぽど身近で危なそうに思えるが、マスコミに煽られるとヒアリが気になってしょうがなくなる。

ヒアリ報道の煽りで少し前から注目されているのがマダニだ。マダニに噛まれることで、マダニが媒介する病気にかかることがあるそうだ。

マダニは屋外の草むらに潜んでいて、人間や動物の呼気の二酸化炭素や体温に反応して草からポトリと落ちて人間や動物に張り付こうとする。うまく張り付くことができれば、皮膚を探して口で皮膚を噛みちぎって血を吸う。体の何十倍もの血を吸ってパンパンに膨れ上がる。

うちの柴犬がマダニに血を吸われたことがあった。犬の顔に黒いものが付いていると思って目を凝らしてよく見たら、血を吸って膨れ上がったマダニだった。犬を飼っている人は知っていると思うが、犬がマダニに噛まれても慌てて取ってはいけない。血を吸った胴体だけ外れて、皮膚に突き刺して固定された頭の部分だけ残ってしまうからだ。人間にしても動物にしても、病院に行くのがいいらしいが、酢に浸すようにして取る方法もある。火で炙ることでビックリしたマダニが自分から離れることもあるという。
犬の顔に火を近づけることなど現実的にできないから、針をライターで炙ってそれで攻撃してやろうと思い、熱した針を近づけたたらポトリと落ちてしまった。たまたまなのかは知らない。

ほかにも、嫁さんがフローリングの床にスイカの種が落ちていると思って拾い上げようとしたら、血を吸ったマダニだったということもあった。これも恐らく犬の血を吸ったマダニが、たまたま落ちたのだろう。

マダニは血を吸うだけだと思っていたが、蚊がマラリアを媒介するように、いろんな病気をもたらすというのだからタチが悪い。

今日のニュースで、そのマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群という致死率2割の病気で50代の女性が死亡したというものがあった。しかも、マダニに直接噛まれたのではなく、保護しようとした野良猫に噛まれてその病気に感染したという。

こういうニュースがあると、それをセンセーショナルに煽るマスコミが出てくるから困る。大した被害をもたらしていないヒアリであれだけ騒いだのだから、猫経由でダニ媒介の病気にかかると煽るに決まっている。
すると、すぐマスコミに乗せられるアホな人たちが「猫は危険だ」と騒ぐようになる。世の中には、アリやダニを踏み潰すのと同じような感覚で猫を殺せるナチュラルボーンキラーみたいなヤツがいる。猫を殺すようになるかも知れないし、野良猫を捕まえろと保健所に通報しまくるかも知れない。
基本的に、保健所は野良犬を捕まえることはあっても、野良猫は捕まえない。猫は犬と違って自分から人を攻撃したりしないし、人に害を与える病気も少ない。しかし、このダニ媒介の病気のせいで、猫も殺せとなるかも知れない。
マスコミの反応に過剰反応してはいけないし、乗せられてもいけない。ここはひとつ、冷静になる必要がある。

たった1件問題が起こっただけでも、統計とか確率とかの数字に疎いバカな人は過剰に反応する。世の中、ゼロリスクでなければならないと考えている人たちだ。
マスコミは大したことがない問題でも、それらの人の琴線に触れるよう、火に油を注ぐかのごとく煽りまくる。
過剰反応するバカな人たちを量産するのがマスコミの仕事であるかのように思えてならないが、いちいちそんなもんに反応する必要はない。

野良猫に噛まれてダニ媒介の病気になって死ぬよりも、そこらへんを歩いていて車に轢かれて死ぬほうがよほど確率が高い。
意味のない心配をする必要などないのである。