20170821-1

中国のネット上の意見を見ていると、漢字を捨てた韓国語やベトナム語と異なり、漢字を使う日本語を評価するむきがある。日本は韓国やベトナムと違って中華文化圏に属さないが、漢字文化を受け入れていることに優越感を感じるのだろう。
その一方で、冗談めかして「日本に漢字の使用料を求めよう」という意見が少なからずある。著作権など他人の権利を一切守らない国に権利を主張されるなど片腹痛いが、仮に使用料の請求があったとするならば、日本も逆に和製漢語の使用料を中国に求めればいい。

中国語には日本語由来の和製漢語が数多くある。科学、化学、回路、電流、電圧など英語などの翻訳のために作られた和製漢語のほか、純粋な日本語として生み出された語句の和製漢語も多い。
中華人民共和国という国名は、世界の中心にシナがあるという意味の「中華」を除き、「人民」も「共和国」も英語を翻訳するときに作られた和製漢語である。中国の正式国名に含まれる3つの語句のうち、「中華」以外の「人民」と「共和国」は日本人が作った言葉なのだから、日本に漢字に使用料が求められるのなら、逆に日本は他国から和製漢語の使用料がたくさん取れそうである。

中国人は外来語を取り入れるのがヘタクソだ。
「経済」という和製漢語は、元は「経世済民」という中国の古典に出てくる語句であったが、その「経済」という略語が「Economy」の日本語訳に使われるようになり、「世の中を治めて、民を救う」という本来の意味が薄れた。中国語にもそのまま取り入れられたたが、中国人からすると「経」も「済」も経済的な意味の字ではないため、イメージが掴みにくいのだという。日本語でも同じだが、そういう語句として覚える必要がある。
「経済」では中国人にとって意味不明だったため、中国人が好きな音写で暴走族の当て字のように「Economy」の語句をそのまま中国語に漢字で取り入れるべきだと主張する中国語の学者もいるが、既に「経済」という和製漢語が中国語に浸透しすぎていることもあって、そううまくはいかない。

中国語圏に行くと、空港のチェックインカウンターでエコノミークラス利用の大多数の搭乗者は「経済」と書かれた窓口に並んでいる。中国語を話す人にとってはなんの意味もない、単に「Economy」に当てられた漢字二文字である。
日本語には片仮名という外来語に適した便利な文字があり、エコノミークラスは片仮名で「エコノミー」と書いてある。

それぞれの言語には得手不得手というものがあり、中国語にも日本語にも欠点があるわけだが、韓国人は韓国語とハングルは完全無欠の完璧な言語だと思っているフシがある。韓国語のことはよく知らないが、PとFの発音の違いがなく、フランスが「プランス」になったり、コーヒーが「コピ」になったりするそうで、問題があるように思えるのだが。

それはともかく、先述したように、韓国人は韓国語から漢字表記を取り去ってしまった。日本に併合されるまで公文書を漢文だけで記すなど、シナの子分として十二分に振る舞ってきたわけだが、その屈辱的な歴史を隠すためなのか、漢字を排除してしまった。
韓国語は日本語ほど同音異義語が多くないのでそれが可能であった。

韓国人は韓国語からの漢字の排除にとどまらず、日本由来の言葉も"日帝残滓"として排除するようにしてきた。例えば、「海苔巻き」は「キムパプ」(海苔飯)に言い換えられた。そのため、海苔巻きが韓国発祥の食べものだと誤解している韓国人が多くいる。
韓国の場合、反日感情を持ち出せばすぐに国民が動く。中国では言葉の置き換えは簡単にできないが、韓国では反日を合言葉にすればなんだってできる。

このような"日帝残滓"を排除する言葉狩りは韓国で長年続いてきたわけだが、今度は韓国与党の政治家が「勤労」(근로)という言葉は"日帝残滓"の言葉であるため、すべて「労働」(노동)に置き換えるよう義務付ける法案を発議したという。

【朝鮮日報】「勤労は日帝残滓」 韓国与党議員が言い換え法案発議 (8/20)

日本では勤労感謝の日くらいしか勤労という言葉を見かけないが、韓国では勤労者、勤労時間、勤労契約などと表現するらしい。

韓国語の語彙の8割は漢字語由来であるそうだが、その漢字語の多くは日本語由来なのだという。
韓国の与党政治家は「勤労」は日帝に由来する悪い言葉だとするが、その代わりに使う「労働」という言葉は「Labor」の翻訳のために作られた和製漢語だ。"日帝残滓"の言葉を排除しようとするが、悲しいかな、日本語由来の言葉に置き換えるしかない。なんとバカバカしいことなのだろう。
そのうち、「労働」という言葉も「海苔巻き」のようにほかの言葉に置き換えようとする動きが出てくるのではないか。

言葉というものは、時代の流れとともに自然に変わっていくものである。ところが、韓国語では漢字を排除したり、日本語を排除したりと不自然な力が働く。
この強引さは、今の韓国そのものである。