21日(月)の日経新聞の報道によると、富士通が携帯端末事業の売却を検討しているようだ。スマートフォンの「ARROWS」ブランドは維持したまま、海外の投資ファンド、もしくは中国のレノボ、台湾の鴻海あたりに事業の売却を計画しているという。
れいによって富士通は日経新聞の報道やその後追い報道について「当社が発表したものではない」とよくある回答をしたが、「様々な可能性を検討している」としており、売却は濃厚なのだろう。
「ARROWS」は6年前のピーク時に800万台を売っていたが、今年度の予測は310万台だ。310万台と聞くと多いように思えるが、国内スマートフォンが年間で3000万台の出荷され、そのうちの1割でしかない。アップルのiPhoneが国内で1600万台近く出荷していることを考えると、心許ない数字である。
このままスマホの開発を続けてもカネがかかるだけで、売れるときにさっさと売ってしまう方がいいのかも知れない。富士通にとっては事実上の敗北宣言である。
ガラケー時代はNEC、パナソニック、三菱電機など10社近くが端末を開発・販売していたが、スマホ時代になって国内メーカーがあっという間に淘汰され、残るメーカーはたったの3社。ソニーモバイル、シャープ、京セラのみである。
シャープが台湾の鴻海傘下であることや、京セラがショボい端末しか出してないことを考えると、実質的に国内のスマホメーカーはソニーモバイル1社と考えていいかも知れない。
そのソニーモバイルの「Xperia」シリーズは国内ではそこそこのシェアがあるが、世界的に見ると1%に満たず、統計で「その他」に含まれるような惨状だ。
その反面、世界シェアでは韓国のサムスンが23%、アップルが15%、中国のファーウェイが10%もある。
中国はシャオミに勢いがあったが、ここ数年で評判とシェアが著しく低下し、その分OPPOとvivoという勢いのあるメーカーが急伸している。
ハッキリ言って、日本メーカーのスマホ事業はどれも悲惨である。こうなったのはどう考えても、ドコモ、au、ソフトバンクという携帯電話キャリアが原因だ。
日本はガラケー時代から、キャリアがメーカーを選択し、メーカーにあれこれ注文して独自の端末を作らせてきた。おかげで、ガラパゴスケータイの名の通り、日本のみの特殊仕様の端末ばかり作られることになった。
ガラケーはそれでもよかったが、スマホ時代もそれを続けたため、日本国内にしか売れないスマホばかり作るようになり、国際競争力が失われてしまった。
日本のほとんどの人は、キャリアが販売する端末を購入し、キャリアと契約をする。よその国の多くは、そこらへんで好きな端末を買い、好きな携帯電話事業者と契約をする形でSIMカードを買う。
日本のキャリアは、ユーザーに高額な契約を結ばせ、それで儲かった分をスマホの販売促進として端末購入代金と足しにする。メーカーが高額な端末を作っても、キャリアが販売価格の一部を補う形で販売してくれるのだから、価格的な競争力も失われるわけだ。
キャリアから購入するスマホは、余計なアプリがてんこ盛り入っていて、ワンセグという日本でしか使えないテレビ機能があり、日本でしか使えないおサイフケータイの機能も有する。そんなもん最初から全部なくし、シンプルなスマホを売ればいいのに、それはキャリアが許さない。
キャリアの言うがまま事業を続け、日本企業の携帯電話事業は軒並みダメになった。
アップルのようにブランドを確立できれば高くても売れるし、アップルがキャリアに口出しすることもできる。日本のメーカーはキャリアが言うがままやってきて腑抜けにされ、開発力も競争力も削がれてしまった。
現状では、ハイスペックな高級機はアップルとサムスンが二分し、それ以外のミドルスペック以下を世界中の企業がしのぎを削ってシェア争いしている。まさに群雄割拠という状態である。
一定のブランド力を築き上げたハイスペック市場に日本企業が割り込めるわけがなく、ミドルスペック市場で安売り競争をしては企業の体力が奪われるだけである。世界、特に中国と安売り競争しても負けるのは目に見えており、最初からやらない方がいい。
ソニーモバイルの「Xperia」シリーズも先行きが怪しく、そのうち日本メーカーのスマートフォンは消滅してしまうかも知れない。アメリカ、韓国、台湾、中国のメーカーあたりからスマートフォンを選ぶことになる。寂しい限りだが、最大の戦犯は日本の携帯電話キャリアと総務省だ。キャリアとその監督省庁である総務省が日本メーカーをダメにした。それに甘えていた日本のメーカーにも問題があるわけだが。
今後、日常で使う電子機器で海外メーカーのものを使うことが多くなるに違いない。スマホは数年後にはそうなっているだろうし、家電もそれに近い。キッチン家電や洗濯機などはまだ安泰かも知れないが、テレビやレコーダーの類はすでに海外メーカーの進出が激しい。
中国メーカーなんぞ安かろう悪かろうと思いがちだが、最近はそうでもなくなってきた。日本のSIMフリー市場ではファーウェイが存在感を出しまくっている。安くてそこそこ性能がいいものを出せば売れるのである。
サムスンやLGなど韓国メーカーは心情的に使いたくないが、中国の一流企業は競争力のある製品を日本市場に投入してくるあなどれない存在になっている。
少し前まで、日本の企業が没落し、中国や台湾の企業が台頭してくるとは思いもしなかったが、今は現実にそうなってきている。いつまでも「メイド・イン・ジャパンは世界一」などとうぬぼれていたら、多くの分野であっという間に抜かれてしまうだろう。
コメント
コメント一覧 (2)
なんとも寂しい限りです。
クアルコムは最新のSnapdragonをサムスンとか中国のどこかとか、売れてるとこに優先的に出し、ASUSですら後回しにされているそうですが、日本のスマホは出荷数で箸にも棒にもかからず、最新SoCと最新OSのを世界に先駆けてリリースとかできませんしね。
競争力とかどんどん離される一方でしょう。
ここらへん、もう諦めの境地ですね。