20170920-1

昨晩の「報道ステーション」を見ていたら、アメリカのトランプ大統領が国連演説を行う直前の様子を伝える中継に入る前に、富川キャスターが「金正恩政権は極悪なならず者政権だそうです」と視聴者に向かって話していた。
トランプ大統領が北朝鮮の金正恩政権について「極悪なならず者政権」と糾弾すると前もって情報が流れていたためであるが、なにか含みのある言い方だった。

前情報どおり、初めて国連で演説を行ったトランプ大統領は、北朝鮮やイラン、ベネズエラを「ならずもの体制だ」と指摘したうえで、金正恩について「ロケットマンは自殺任務に突き進んでいる」と述べ、弾道ミサイルと核爆弾が体制崩壊に繋がるとした。
「米国はあらゆる手段を講じて自国と同盟国を防衛する」と主張し、もし北朝鮮が軍事行動を取れば北朝鮮を「完全破壊する」と明言した。

実際に北朝鮮とアメリカが軍事衝突すれば韓国も日本のタダでは済みそうになく、実際にアメリカが軍事行動に踏み切るかは分からないが、脅しとしては効いたようだ。聞いていられなくなった北朝鮮の代表が抗議の意味を込めて議場から退場した。
また、北朝鮮を完全破壊すると言及したときには、議場でどよめきが起こった。
かつてない国連演説だった。

トランプ節が炸裂したわけだが、この人はTPOをわきまえることをせず、どこでも同じように振る舞うことがよく分かった。変にいい子ちゃんぶるよりはいいだろう。

また、トランプ大統領は北朝鮮に言及したときに「日本人の13歳の少女が拉致された。彼女はスパイの養成に利用された」と拉致被害者の横田めぐみさんのことに触れ、北朝鮮を「すさまじい人権侵害を行っている」として非難した。
これまで日本がどれだけ訴えても、アメリカの大統領は適当に聞き流すだけだった。しかし、トランプ大統領は国連の場で北朝鮮による拉致問題を強く非難した。これは北朝鮮に対する強いメッセージになるだろう。横田早紀江さんが解決への糸口になるのではと期待するのも当然だ。

アメリカ政府も日本政府も多くは語らないが、トランプ大統領による国連での拉致問題の言及は安倍外交の賜だろう。
安倍首相は拉致問題を解決するつもりがないのではないかと言われていたが、実際はトランプ大統領本人やアメリカ政府に強く掛け合っていたし、拉致議連の訪米なども後押ししていた。
産経新聞によると、拉致議連の訪米団から強い要望を受けた国家安全保障会議の上級部長が「間違いなく拉致問題を大統領に伝える」とし、「米軍がひとりの仲間も残さないように、拉致被害者も残さない」と明言したそうだ。

安倍首相や安倍政権について、国内問題については賛否両論あるわけだが、外交に関してはなかなかうまくやっていると思う。アメリカに関しては今度のトランプ大統領の国連演説もそうだし、オバマ前大統領の広島訪問も実現させた。
今月19日に日米などの安全保障関連法案の成立から2年が経ち、法案成立や米イージス艦への洋上給油を行っていたことを批判するニュースが多かった。昨日見ていた「報道ステーション」でも、よく分からないデモに参加している市民活動家の声を取り上げて安倍政権を批判していたが、結果的には今のところプラスばかりである。

安倍首相の外交的嗅覚はものすごいものがある。トランプ大統領の国連でのもの言いについて、批判する有識者も多く出るだろうが、拉致問題の言及には誰も文句は言えない。アメリカをうまく引き込んだ安倍首相の辣腕は評価されるべきだろう。単にアメリカにヘーコラしているだけに見えても、ここぞというところでうまくトランプ大統領を操っているようにも見える。
民進党の政治家でこれと同じことができる政治家がいるだろうか。

国会は10月22日投開票の解散総選挙でほぼ決まりのようだが、まるでそのことを見越したようにトランプ大統領が国連演説で拉致問題に言及し、安倍首相の評価が高まった。トランプ大統領など誰もコントロールできないだろうが、彼の言動をうまく見越して支持率アップを計算していたのならスゴイというほかない。

トランプ大統領による国連演説での拉致問題言及だけに留まらず、拉致被害者の奪還にまで至ることを切に願う。そうなれば、安倍首相は間違いなく歴史に名を残す名宰相となるに違いない。