20170921-1

私が仕事で作っている製品は海外の半導体工場で使われているので、トラブル対応で海外出張をすることがたまにある。トラブル対応で客先に行きたくはないが、行き先が海外だと話は別だ。
今のところ、台湾、韓国、中国の3つしか行き先がないが、台湾でも韓国でも中国でも1週間くらい出張するのは楽しくていい。
台湾はプライベートでも行くくらい好きで、韓国と中国は嫌いだが、短期滞在なら観光客気分で過ごせる。

それが長期滞在になると話は違ってくる。「台湾はいいところだ」などといっても、ちょっといる分にはいいだけで、長いこと住んだらイヤなこともたくさん目につくに違いない。韓国や中国なら尚更だろう。

私は韓国や中国が嫌いだが、同じくらいインドも嫌いだ。そのインドに仕事で長期間滞在せねばならない危機に晒されている。インドのとあるインフラプロジェクトに参加している日本企業から製品の引き合いがあり、採用されればシステムが安定稼働するまでテスト段階から立ち会うために1年ほど技術者を派遣しろなどと言われているのだ。
派遣する技術担当は仕事の内容的に私か先輩社員かのどちらかしか選択肢がない。ピンチである。

心情的にイヤというだけでなく、家庭の事情もあるのでインドに1年なんぞ行っていられない。まだ韓国や中国ならすぐ帰ってこられるからいいが、インドだとそういうわけにもいかない。
「もし自分になったら会社を辞める」と同僚と話した内容が上司には伝わっているが、どうなるか分からない。

私がインドを嫌う理由はいくつかある。

まず、とても不潔そうなところだ。私は潔癖症ではないが、不潔なのは苦手だ。台湾の夜市の食べものが口にできるギリギリである。台湾で大きい方を催したとき、デパートなど比較的キレイなトイレでしか用を足せない。
私のインドのイメージは映画「スラムドッグ・ミリオネア」であり、あんなところで飯を食ったり用を足したりは死んでもできない。

会社の先輩は「会社は治安の良い高級住宅地に住居があてがうから大丈夫」などというが、自分の家でしかウンコをしないなどということはあり得ないだろう。私はすぐに腹を壊す。インドではマクドナルドで頼んだドリンクに入っている氷で腹を壊すと聞く。そんな人間はトイレの心配をせずにはいられないのだ。

そもそもの話として、インドはトイレ事情が悪い。ナショナル・ジオグラフィック誌でインドのトイレ事情を特集していた。インドでは人口の4割にあたる5億7千万人が屋外で用を足しているという。トイレのないところで立ちションしたり、野グソをするのだ。自分の家にトイレがあっても野グソをするインド人が多いという。

インドのトイレは汲み取り式のところがまだ圧倒的に多いが、その汲み取りの仕事は不可触民しかできないのが屋外で用を足す理由らしい。カースト制度の範囲外、最下層にいるのが不可触民であるが、最近は地位向上のために汲み取りの仕事などの仕事を拒否する人が増えてきた。そのため、汲み取り業者が極端に減り、汲み取りが高く付くようになった。
そうかといって、自分で汲み取りをすることはできない。汲み取りは不可触民の仕事であり、そのような仕事をやるわけにはいかない。
だから、自分の家にトイレがあっても汲み取りがままならないので使用できないという。

誰がそんな国に行きたいと思うのか。

このトイレの話に関係しているが、差別が著しいのもインドが嫌いな理由だ。カーストにまつわる差別が未だ根強く残っているし、女性差別も酷い。インドでは寡婦が夫の亡骸と一緒に焼身自殺をするサティーという風習があり、一緒に火葬されないにしても、未亡人が親族によって焼殺されることがよくある。女の人権は認められていないから、サティーを理由に燃やしたり、バスの運転手と乗客が女性の外国人観光客をレイプするのだろう。

カースト制度では、異教徒は不可触民と同じ身分制度の最下層に位置される。だからインドのイスラム教徒はヒンズー教徒にボコボコにされて殺される。カーストの枠外にいる最下層の異教徒などぶち殺して構わないのだ。殺していけない異教徒はカネ持ちだけである。

インドではしょっちゅう職業を尋ねられる。私のような外国人は不可触民と同じ身分であるが、職業である程度値踏みされるのだ。インドで職業を訊かれ、労働者と答えてしまうと差別されるハメになる。
カースト制度ではその身分によって職業が決められているわけだが、私のようにIT企業に勤める場合はカーストによる制限がないため、カーストのどの身分にも当たらない。
これがあるので、インドでは差別される身分の人がこぞってIT企業に就く。制限がないので誰でもIT企業に就職できるのだ。

話を聞けば聞くほど、インドという国が嫌いになる。不潔で差別だらけ。そのうえ、怠惰な人間が多く、それと同じくらい狡猾な人間も多い。インド人の価値観は日本人と大きくかけ離れている。

日本では「中国に対抗するためにインドと友好関係を結ぶべき」という意見が多いが、個人的にはそれでいいのかと思ってしまう。安倍首相はインドのモディ首相のことを随分信用しているようだが、モディ首相は信用できてもインドという国は中国と同じくらい信用できない。

そんな国に1年も滞在することなどまっぴらゴメンだ。インド案件がなくなるよう祈るような気分で毎日を過ごしている。