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YouTubeでよく台湾のテレビ番組を見ている。台湾はテレビ局や番組がYouTubeに公式チャンネルを開設していて、放送後すぐ、あるいは翌日までに公式動画としてアップされる番組が多い。
台湾のテレビ番組は中国のものと違ってドラマだろうがバラエティだろうが、生放送以外は必ず字幕がついていて、中国語の勉強をするのにちょうどいい。台湾のテレビ番組は、日本のものに比べると圧倒的につまらないが、YouTubeで見られるものが多いのがいい。

今週10日(火)、国慶日や双十節と呼ばれる台湾の建国記念日に放送された夜のトーク番組は、親と行く旅行がテーマだった。
台湾は建国記念日が10月10日、中国は10月1日で、この時期は中秋節(旧暦8月15日)と重なることが多く、大型連休になる。台湾人も中国人のこの時期に旅行をする人が多い。
日本人は成人したり結婚してから親と一緒に家族旅行をすることはあまりないと思うが、台湾人や中国人は親と同居している人が多く、日本よりも親を敬う文化があるので、家族旅行は両親や祖父母と一緒というパターンが多い。

そのトーク番組のなかで、楊千霈(ヤン・チェンペイ)という台湾人女優が父親の話をしていた。
楊千霈の父親は大変な日本好きで、年に4回も日本旅行に行っているという。楊千霈は今年結婚したが、結婚するまで毎年両親と行っていた家族旅行で、自分はヨーロッパ、特にスペインに行きたいと言っていたのに、父親は「自分は日本しかいかない」と頑として話を聞かなかったという。
番組では何とかしてヨーロッパに行くようにできないかと話をしていた。

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楊千霈(中央)とその両親

日本以外に家族旅行に行きたい本人の心中は察するにあまりあるが、日本人からすると楊千霈の父親のようにリピーターとして何度も日本を訪れる観光客はありがたい存在だ。
台湾には日本に何度も来ているタイプがたくさんいて、そういうベテランになればなるほど、東京、大阪、京都、福岡といったメジャーな都市ではなく、地方に行くようになる。外国人観光客が地方に行けば、インバウンドの恩恵が地方にも分散するのでメリットが大きい。

訪日外国人の数はここ数年で爆発的に伸びた。それについて、目に見える安倍政権の成果として、もっと評価されてもいいように思う。
政府は2020年までに訪日外国人の数を4000万人にすると意気込んでいるが、そこまで行くにはホテルの数が圧倒的に足りておらず、問題が山積だ。
私が住む滋賀の駅前のホテルでは、韓国人や中国人の宿泊客が激増した。京都に泊まれなかった観光客が泊まっているのだが、彼らが観光に行くのは滋賀ではなく京都や大阪だ。彼らはホテルがないから仕方なく地方に宿泊しているわけだが、これを地方観光に向けるようにするしかない。
そうするには、日本観光のリピーターを増やす必要がある。来日数回なら東京や大阪を選んでしまうのは仕方がないが、ベテランになってくると地方へ行く。日本は地方でも街は栄えているし、観光資源も豊富であるため、何の問題もない。

日本政府観光局が毎月発表している訪日外国人の数を見ると、圧倒的に多いのが韓国、中国、台湾、香港の4地域だ。韓国は8月までに466万人が来日しており、昨年比で41.7%増だ。慰安婦問題で日本を死ぬほど叩いておきながら、日本に旅行にする神経がよく分からないが、日本にカネを落としてくるのだからありがたい存在ではある。
8月までの訪日外国人を人口比で考えると、韓国は466万人/5125万人、中国は488万人/13億8000万人、台湾は311万人/2355万人、香港は151万人/734万人だから、香港が圧倒的に来日比率が高いことが分かる。ついで台湾、韓国だ。爆買いによって中国人ばかりが目立っているが、人口比率でいえばゼロに近い。
人口比率が高い国は訪日リピーターが多い国であり、さらなる増加を後押ししていくべきだろう。

中国人観光客は外貨を落とす額がほかの国より高いということで、これまで日本でチヤホヤされてきた。ところが爆買いブームはあっという間に去り、中国人も薬などの日用品ばかり買うようになった。
そのうえ、THAAD報復で韓国への団体旅行を禁止したように、日本への団体旅行に関しても制限するよう中国政府が旅行会社に言い渡したようで、来月再来月あたりから中国人の数がぐっと減るようになるだろう。
そんなお達しがなくとも、国慶節の8連休で中国人が行った旅行先のベスト5は1位から順にロシア、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアだった。それでも連休中に60万人の中国人が来日したというが、もうすぐそれも終わるだろう。

中国人観光客が激減して韓国の観光業界は大打撃を受けているようだが、現状の日本は外国人観光客が多すぎるくらいだったので、中国人の団体旅行がゼロになるくらいでちょうどいい。個人のビザが取れずに団体旅行で来る中国人はカネ持ちでないうえにマナーがなっていないのも多い。

だから、日本は中国人観光客にばかり焦点を当てて、中国人をチヤホヤしている場合でない。すぐに激減するのだから、ターゲットを変えるべきだ。
大阪駅近くのドン・キホーテに行くと、中国人向けに簡体字中国語で書いたポップが多くある。中国人より多いはずの台湾人や香港人は繁体字を使う。彼らに向けて店内のポップは繁体字に書き直すべきだろうし、簡体字の案内表示、飲食店のメニューなど、全部繁体字にしていいくらいだ。

爆買い中国人のせいで台湾人や香港人がまったく目立たず、日本の観光地はまるで中国人観光客しかいないかのようになっている。中国人に向けて簡体字でアピールしているポップやチラシ、看板を見て、自分が台湾人や香港人ならどう思うか想像してみれば、どうすればいいかおのずと分かるはずだ。
中共政府の意向によって数が増減する中国人観光客ばかりアテにしていれば、韓国や台湾の観光業界のようにあとで手痛いしっぺ返しを食うことになる。
誰が友人で、誰を大切にすべきか、よく考えるべきだろう。