20171109-1

昨日、Amazonの日本法人がAIスピーカー「Amazon Echo」シリーズの日本での発売を発表した。アメリカではGoogleの製品とともに売れに売れている製品で、AIスピーカーの大本命といわれている。
販売ページを見ると希望者に抽選販売するとなっており、早いうちに申し込んでおけば、もっとも標準的なAmazon Echoが4000円引きで購入できるので、とりあえず申し込んでおいた。
実際に買うかどうかは分からない。
8000円くらいなので別に買って試してみるのも構わないが、すぐに使わなくなるのは火を見るより明らかだ。

AIスピーカーをインターネットに接続することで、スピーカーに向かって天気予報を尋ねれば答えてくれるし、カップ麺を食べるために3分後に知らせてくれと頼めば知らせてくれるし、6時に起きたいといえば目覚まし時計の代わりになってくれるだろう。だが、それほど便利な機能だろうか。

天気を知りたければ、常に持ち歩いているスマホに「Yahoo!天気」などお天気アプリを入れておけば、タップ1回で確認することができる。カップ麺を食うために何分か待つにしても、スマホの時計を適当に見ておけばいいし、目覚まし時計だって別に持っている。
そもそも、機械に向かって声に出して命令するのが恥ずかしい。「ヘイ、シリ」とか「オッケー、グーグル」とスマホに向かって呼びかけている人はこの世の中にどれほどいるだろうか。

Amazonの新しいFire TV Stickを買ったが、新機能の音声検索なんぞほとんど使っていない。見たい映画やテレビ番組を検索するなら、タブレットでプライムビデオのアプリから調べた方が手っ取り早い。

AIスピーカーは対応する家電があれば本領を発揮できるかも知れない。対応している照明やエアコンがあれば、スピーカーに命令することで電気をつけたり消したり、エアコンの温度調整などもできるだろう。そんな高そうな家電を持っていればの話だが。

映画「デモリションマン」で2032年の近未来が描かれていた。ウェズリー・スナイプスが部屋に入って「イルミネート」と声に出すと勝手に電気が付いた。
そんな未来の生活が2017年に体験できる。スゴイことだと思うが、繰り返すが、対応する照明があればの話だ。

ただ、もし仮に「アレクサ、電気をつけて」と声に出して照明がつけられたとしても、多分そのうち使わないだろう。ほとんどの住宅は部屋の入口に照明のスイッチがあり、入ったらすぐに手を伸ばしてスイッチを切り替えればいいだけの話だからだ。いちいち喋るより、自分でスイッチを入れるほうが早い。
就寝時に電気を消す際も同じで、今ではリモコン付きの照明が当たり前だから、枕元にリモコンを置いておけば、寝るときに手を伸ばしてポチッとするだけでいい。

要するに、なにかをするのにいちいち喋るのは面倒なのである。「ヘイ、シリ」→「ご用件はなんでしょう?」→「今日の天気を教えて」というやりとりが、キーボードで打つだけでも面倒くさい。話すのはもっと面倒だ。「アレクサ、電気をつけて」などと口にするのは面倒でしかない。

「ドラえもん」の漫画で、ドラえもんがのび太に対して「口を利くのもめんどくさけりゃ死んでしまえ」と激怒するシーンがあった。のび太が思っていることを口にしなくても通じるようにしてくれる機械を要求したときである。
ぐうたらすぎるのび太にドラえもんは激怒したが、実際口を利くのは面倒である。

だから、AIスピーカーというたいそうな名前を付けられているのであれば、AIスピーカーはこっちが天気予報を訊いたり、電気をつけろと口にする前に、スピーカーが勝手に考えて天気を教えたり、電気をつけるべきだろう。言われたことだけやるAIでいいのか。AIというくらいなら、もっと賢くなければならない。

知りたくもないのに勝手に天気を教えてくるかも知れない。そのとき「ウルセー」と怒れば学習して、本当に知りたいときだけ天気を教えるようになるかも知れない。
カップ麺にお湯を注いでいることを察知して、3分のタイマーを勝手に動かしてくれるかも知れない。どん兵衛は5分だが、もちろんカップ麺の好みも学習せねばならない。
そこまでやってこそAIだ。AIならば人間より賢くなければならない。AIは持ち主の思考や感情を忖度せねばならない。

そういえば、今年の流行語大賞に「AIスピーカー」も「忖度」もノミネートされているという。流行語大賞はここ近年、政権批判を行うための政治的な言葉が選ばれるため、「忖度」は間違いなく選ばれるだろう。
人間が選ぶからこんなことになる。選考をAIに任せ、本当にはやったものだけノミネートし、大賞に選べばいい。AI時代の到来だ。

なんでもかんでもAIに任せると、「ターミネーター2」のスカイネットのようなことにならないか心配する声もあるが、多分大丈夫だろう。AIの方が人間よりもずっと賢そうだし、公平そうではないか。