20171113-1

政府が家電エコポイント制度なるキャンペーンを展開し、エアコンや冷蔵庫、テレビを買い換えることでエコポイントなるポイントが貰えたことがあった。2010年から2011年にかけての話だ。
テレビを買い替えてもそれほど省エネになるわけではないが、アナログ停波で地デジ化を促す必要があったため、テレビが加えられた。
我が家はそのときに地デジ対応テレビを買ったクチだ。

当時、地デジ対応テレビを買うなら東芝のレグザだと決めていた。他メーカーが録画用HDDを自社製品に制限するなか、東芝のレグザはそこらへんで売っているUSB接続のパソコン用外付けHDDを録画先にすることができた。クソ高いHDDを消費者に売りつけてオイシイ商売をする他メーカーをよそに、東芝のレグザは思い切ったことをしていた。今では当たり前になっているが、当時一流企業だった東芝がやったことには大きな意義があった。
だから、我が家の少しあとに実家がテレビを買い換えるとき、東芝のレグザを推薦した。我が家も実家も、リビングのテレビは東芝のレグザだ。

今ではソニーでもパナソニックでも外付けHDDを自由に選ぶことができるが、次買い換えるときも東芝にしようかと思っていたが、その選択肢はなくなった。
テレビ事業で儲からなくなった東芝はレグザの自社生産をやめ、海外委託するようになった。その時点でもう買う気が失せたが、ウエスチングハウスの原発事業失敗で傾いた東芝は、テレビ事業そのものから撤退しようとしている。今後のサポートなど不安しかないテレビを買う理由などひとつもない。

東芝は虎の子の半導体事業を売却し、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電事業も売却した。それに加え、テレビ事業、パソコン事業からも撤退・売却しようとしている。テレビのレグザ、パソコンのダイナブックというブランドは残るかも知れないが、どこぞの海外企業として残るだけになる。

これまで東芝のパソコンなんぞ使ったことがないが、ノートパソコンの草分け的存在だった東芝からダイナブックがなくなってしまうのだから、寂しいというほかない。
東芝からコンシューマ向け製品の事業がなくなり、原発とエレベーターという事業だけが残ることになる。

日本のパソコンメーカーが次々となくなりつつある。特に大手メーカーでいうと、今やパナソニックとソニー傘下のVAIOくらいしかない。あとはエプソンダイレクトとかマウスコンピューターなど小さいのがあるだけ。NECのパソコン事業は中国のレノボに売却された。つい先日、富士通のパソコン事業もレノボに売却された。
日本のパソコン市場の先行きは暗く、まったく成長が見込めない。そんな日本向けに商売を続けるのは容易ではない。そのうち、ノートパソコンは台湾メーカーか中国メーカーの二択しかなくなるだろう。

これはスマートフォンでも同じことが言える。日本メーカーは次々と敗北し、事業撤退を迫られた。唯一ともいえるソニーは上昇の兆しがまったくない。シャープは台湾のホンハイ傘下になった。
スマートフォンの選択肢は、ドコモやauのキャリアではアップル、サムスン、ソニー、シャープあたりから選ぶことになり、格安SIMでは台湾と中国の二択のようになっている。

スマホ事業での台湾と中国の競争は熾烈だが、中国が勝利を収めつつある。
市場が著しく縮んでしまったタブレット市場であるが、台湾のASUSが格安タブレットから手を引くという話があり、アップルのバカ高いiPadか、ファーウェイの安いタブレットくらいしか選択肢がなくなると見られる。

ファーウェイは日本市場でスマホもタブレットも売りまくっている。ファーウェイの通信機器はかつてはスパイウェア入りなどと言われていたが、今ではそうではないようだし、十分な性能があり、価格が安い。中華製だとバカにできない存在だ。ファーウェイと同じレベルのスマホを作れるメーカーは、残念ながら日本には存在しない。

細菌発売されたファーウェイのP10というスマホは、ライカ製のダブルレンズを搭載していて、一眼レフ並みの写真を撮影することができる。それでいて、SIMフリー端末で6万円である。レビューも上々だし、なにより評価サイトで写真のサンプルを見ると、その写りのよさにため息が出る。

私が今使っている通信機器は、メインのスマホが台湾で買ったASUSのZenFone 3(2.5万円)、テザリングで利用したり動画を見たりするタブレットがASUSのZenPad 3 8.0(3万円)だ。どちらもSIMフリーなので海外でも使える。非常に安上がりだ。
これがそのうち、ファーウェイに取って代わられる日も近い。タブレットは買ったばかりだが、それでも3~4年して買い換えるときにはファーウェイしか選択肢がないかも知れない。
心情的に中国メーカーの製品はあまり使いたくないが、ファーウェイのP10のできを見てしまうと、それを選ばざるを得ない。
どちらにしても、台湾か中国かという選択肢だ。

かつて日本の家電が強かったのは、品質がよかったからだ。特にテレビは、ブラウン管のようなアナログ要素が強い製品においては設計、製造、検査とかなりのコツを要するため、中国やら台湾のメーカーが簡単に作れなかった。だが、今やパソコン、スマホなどはほぼデジタルな要素ばかりだ。簡単に設計、製造ができ、検査が適当でもそこそこのものができあがる。
そうなってくると、性能や品質は似たりよったりになり、あとは価格勝負になってしまう。高付加価値から囚われて抜け出せない日本メーカーが負けるのは当然だろう。

これと同じことが起こりそうなのが自動車産業におけるEV(電気自動車)である。テスラのようなぽっと出のメーカーが急成長したように、アナログ要素満載のエンジンがなくても走る車ばかりになれば、競争する内容が変わってくる。自動車だけは安泰だとは言っていられない。

テレビや洗濯機、スマートフォンから日本製が消え、車までも日本車でなくなる日もそう遠くはないかも知れない。中国や台湾、韓国のコンシューマ製品を使わざるを得ない状況になる。「内部の部品は日本製」などと強がっていられるのも今のうちかも知れない。半導体でサムスンにやられっぱなしのように、基礎技術で中韓台に追い上げを食らい、日本の産業を根こそぎ全部持って行かれる可能性がある。
うかうかしていられないが、日本の社会も企業も構造改革なんてものは遅々として進まない。このままでは、日本はただ沈みゆく船になってしまいそうである。