20171114-1

ガラスのコップをよく見ると、白いくすみが付いていることがある。これは、コップを洗ったときに水滴を拭き取らずに乾かすと、水道水に含まれるカルシウム分などのミネラルが残ったものらしい。だから、それが気になる人はコップを洗ったあとはよく拭き取る必要がある。

私は台湾茶が好きで、台湾に行ったら必ず阿里山烏龍茶や凍頂烏龍茶を買ってきて、ガラスの急須を使って淹れている。そのガラスの急須は、しばらく使うとシャレにならないくらい白くくすんでしまう。ガラス製品にちょっとくすみが付いたくらいなら、激落ちキングなどのメラミンスポンジで軽くこすればすぐに取れるが、使っているガラスの急須は細長いのでメラミンスポンジで掃除しにくい。
そのような場合、キッチンハイターなどの台所用漂白剤に浸けておけばキレイになる。

水道水に含まれるミネラルが付着したガラスの白いくすみはメラミンスポンジか漂白剤で取り除くことができるわけだ。

同じようなものに、風呂場の鏡がある。風呂を使ったあとに浴室乾燥をすれば浴室に水垢が発生したり、鏡にうろこ状のあとが残ることなどなくなるが、鏡が白く汚れた場合でもキレイにすることができる。こちらはガラスのコップよりしつこい汚れなので、鏡を磨くための研磨用スポンジでキレイになる。昔は高かったが、今は100円ショップで売っている。

日本の水は軟水で、カルシウムやマグネシウムといったミネラルは少ない。逆にヨーロッパはミネラル分を多く含む硬水で、コップやら水回りの白いくすみは日本の比じゃないほど付きやすいという。

それでも、日本の水道水に含まれるカルシウムなどのミネラルのせいで、コップがくすめば、ポットにはカルシウムが白く貯まる。ポットにはクエン酸洗浄機能があって、クエン酸を投入して洗浄すれば、白く溜まったカルシウム分を取り除くことができる。

コップやポットに白いものが付着していると見た目はよくないが、別に不潔ではない。水道水に含まれるミネラル成分なのだから当然だ。
しかし、それがいかにも不潔だとCMで言いふらしているのが花王のキュキュットだ。

【花王】キュキュット

花王のキュキュットのCMでは、コップのくすみ、着色汚れには菌がいるとしている。だが、これは消費者に誤ったイメージを与える情報だ。
以前、このブログで花王のキュキュットが茶渋に菌がいると宣伝しているとして批判したことがある。

茶渋と台所用洗剤に関する調査 (2015/04/02)

茶渋は菌ではなく、水道水に含まれるカルシウムなどの金属イオンがお茶のポリフェノールの結びついて付着するものだ。にも関わらず、キュキュットのCMでは茶渋が菌であるかのように誤認させ、いかにも不潔であるかのように宣伝しまくった。不潔な茶渋を取り除くため、キュキュットを使えというわけだ。

今のCMはなぜか茶渋といわず、「くすみと着色汚れ」に変わったが、今度はそれが菌がいるかのように宣伝している。コップのくすみも茶渋も似たようなものだが、そこにだけ特に菌が集まるわけではあるまい。コップの表面にはあまねく菌が存在するのではないか。くすみに菌はいるが、くすんでいない部分にもいる菌がいるのである。

本来であれば「見た目が悪いコップのくすみはキュキュットで取り除きましょう」と宣伝すべきなのに、花王は消費者に誤認させるような悪質なCMを何度も制作してテレビで流している。
これは、企業による一般消費者への脅しに近い。「あなたたちは普段とても不潔なものを使っているんですよ」と脅し、「それがイヤなら我が社の製品を使いなさい」と言っているのとなんら変わりがない。

これは、過度に潔癖な日本人の特徴を利用した宣伝だ。似たようなものに、同じ花王のリセッシュやP&Gのファブリーズといった消臭スプレーがある。
これらのCMでは、過度に匂いを強調し、なにがなんでも匂いを取り除かないとダメだと消費者に主張している。
体臭用のデオドラントスプレーも同様だ。

潔癖すぎる日本人は、昔から匂いにものすごく敏感だ。日本人は他国の人間に比べると圧倒的に匂いを気にする民族なのは間違いない。外国人は変な匂いがするのが多いうえに、それをごまかすためか香水をめちゃくちゃ付けているのが多いが、日本人にはそれが少ない。オッサン臭い日本人も多いが、テレビでスメハラなどなんだと散々脅したおかげで、加齢臭やタバコ臭を漂わせる人は減ってきたように思う。

他人の体臭を感じるということは、他人から発せられた匂いの粒子を自分の鼻の粘膜で吸収することである。赤の他人が発する粒子を体内に取り込んでいることを思えば気持ち悪く感じるのも当然で、それを防ごうとするのは悪いことではない。しかし、少々やり過ぎ、脅かしすぎの感がある。テレビCMを見れば、不快な匂いを出すことが刑法に抵触する犯罪と同じくらい悪いことであるかのようにされている。

匂いのみならず、先のキュキュットのCMのように不潔でないものが不潔であるようにされ、無菌であることがいいことであるかのようになっている。
人間は体内も皮膚も菌だらけで、体重60キロの人には60兆個を超える菌がいて、その重さは1キロにもなるという。コップにいるかも知れない菌が許せない人たちは、自分の体にうじゃうじゃいる菌は許せるのか。

日本の企業はコンプライアンスが云々と上辺でキレイごとを並べ立てるくせに、一部では消費者をバカ扱いし、モラルもへったくれもないやり方で宣伝をしている。疑問を抱かずになんでも受け入れてしまう消費者も悪いが、これは詐欺師に騙される被害者が悪いと言っているようなもので、消費者が悪いと一概には言えない。悪いのは、このような宣伝をする企業である。

マスコミは広告主である企業側の宣伝に対して問題提起することはなかろう。だから、企業は無意味な潔癖という誤った情報を消費者に植え付けるCMを流すことを自主規制すべきではないのか。
一体なぜ、消費者をむやみに脅すような宣伝が許されているのだろうか。