20171215-1

私は感情がすぐに顔や言動に出るタイプなので、仕事で営業によく思われない。営業は基本的に顧客の味方であり、自社の開発や生産の肩を持たないタイプが多いので、ほとんどが客にヘーコラするだけだ。努めてニコニコして、顧客からの要望をむげに断ることもしない。
私はそういうまどろっこしいタテマエが嫌いなので、ストレートに対応するようにしている。だから、できないことはできないとハッキリ言うし、客がメチャクチャなことを言えば否定もする。隠さないから、不快なことを言われれば顔に出る。

たまに先輩社員から気を付けるように言われるが、ミスでそうなるのではなく、そうしているのだから改めるもなにもない。「そんなことはできません」、「やり方が間違っています」などとハッキリ言わないと伝わらない。よく日本ではできなさそうなことについて、その場で「できない」とか「難しい」とは回答せずに、「持ち帰って検討します」などと言う。
実際は、議題を持ち帰ってどうお断りしようかアレコレ考えるだけだ。普通の相手はそうなることを見越して期待などしないが、たまに察しの悪い客もいる。だから、その場で見通しを話す方がいい。

自分の手の内を隠すのも作戦のひとつだろうが、分かりやすい方がいい。それを実践しているのが中国人だ。ビジネスの世界でも、政治の世界でも、中国は分かりやすい。

回答を先延ばししたり、結論をぼかすところが日本企業の仕事の悪いところだと思う。中国人や台湾人は「できない」「ムリ」と即決で言ってくる。そちらの方が分かりやすいし、話も早い。
日本はなにかにつけてチンタラやっているから、中国や台湾、韓国あたりの企業に負けることが多くなってきたのではないか。

外交における中国の動きを見ても分かりやすい。長らくなんの興味も持っていなかった尖閣諸島について、1970年代に海底資源の話が出ると急に興味を示すようになり、「核心的利益」という言葉を持ち出して、「死んでも欲しい」という意思表示をしてきた。ここへ来て中国の艦船のあからさまな領海侵犯が増えているように、とにかく自分の意思表示を隠そうとしないのが中国人だ。

中国政府は、韓国がTHAADを導入すれば、露骨な制裁を加えた。THAADのミサイル設置場所となるゴルフ場を提供したロッテグループについては、中国のロッテマートを市場から追い出すために様々な圧力をかけ、営業停止に追い込んだ。韓国からの輸入品には難癖つけて輸入禁止にし、韓流スターは中国のテレビに出られないようにした。中国人の韓国への団体旅行を禁止し、インバウンドを期待する韓国の観光業界に打撃を与えた。

うろたえる韓国の文政権に対して、中国政府は「三不」と呼ばれる3つの禁止事項を突きつけた。アメリカのミサイル防衛に入らない、日米韓の軍事同盟を結ばない、THAADを追加配備しない、の3つだ。
外国政府から政策や外交に関わる命令を受けるなど屈辱的な話であるが、文在寅大統領はそれを受け入れた。
韓国が中国の属国であることの証だ。国語から漢字を捨て去ることはできても、中国風の名前や儒教的な慣習が改められないように、韓国人は骨の髄まで中国の属国根性が染み付いてしまっているのだ。

文在寅は、アメリカの顔色を伺いつつ、中国に対する忠誠を誓った。中国にヘーコラしておけば、きっと中国が振り向いてくれるだろうという淡い期待である。
しかし、中国が要求してくるようなメチャクチャな要求は飲んではならない。一度受けてしまうと、次から次へと要求してくるようになる。取引先から再三の値下げ交渉に応じざるを得なかった会社はどうなるか。結局、何度も何度も値下げを要求され、その度に応じて自分の首を絞めることになる。取り引きを切られようが、最初から断った方がいいことが多分にある。

文在寅は中国に跪いたというのに、中国は韓国を罰する手を緩めない。
文在寅を習近平に"謁見"させ、首脳会談を行うことは了承したものの、空港への文在寅の迎えは長官ではなく次官補という下の役職だった。フィリピンのドゥテルテ大統領ですら外務大臣が迎えに来たというのに、国賓とは名ばかりで、この扱いである。
4泊5日の日程を申し込んだが、3泊4日にされたりもした。食事会は習近平との晩餐と、重慶市の中国共産党書記の昼食だけ。
中国のご機嫌を取るため、文在寅とは会わずに南京事件の追悼式に出席していた習近平に向けて哀悼の意を表した。

中国政府に舐められている文在寅は、民間の中国人からも舐められている。
国営放送のインタビューでは、中国人インタビュワーにTHAADについてどう落とし前をつけるのか、執拗に言い寄られ、厳しい言葉を浴びせられた。
文在寅を取材する韓国人記者が中国人警備員に制止されて殴る蹴るの暴行まで受けた。
文在寅は中韓首脳会談は実現できたが、共同声明は一切なし。文在寅がマスコミに向けて声明を出すだけにとどまった。

習近平は首脳会談のときに、相手によって表情を変える。トランプやプーチンとはにこやかに。安倍首相のときは伏し目がちで機嫌悪そうに。非常に分かりやすい。
文在寅のときは笑顔を見せ、首脳会談自体も予定を1時間もオーバーした。そのことに韓国メディアが喜んでいたが、脅したりすかしたりする中国のやり口だろう。締めすぎた水道の蛇口をちょっと緩めただけ。会談を長くやり、笑顔を見せるだけで韓国人が喜ぶのだから、中国政府としては韓国を手のひらの上で転がしているようなもんだ。
厳しいムチを打ち続けたのに、ほんの僅かのアメを与えるだけで喜ぶ韓国政府を見て、中国人が舐めないわけがない。

最近の韓国の大統領は、アメリカのご機嫌を伺い、それと相対する存在の中国のご機嫌も伺う必要があって大変だ。自分たちはそのコウモリ外交をうまくやってのけているつもりかも知れないが、中国人はもちろん、自国民からも見透かされている。なにもモノを言わず、ただ受け入れるだけ。そのうち板挟みの状態でにっちもさっちもいかない状態になるに違いない。既にそうなっているかも知れない。
中国政府からのメッセージが非常に分かりやすいため、誰にでも中国の韓国に対する考えが分かる。それを分かっていながら、ペコペコし続けなければならない大統領を見させられる韓国国民はさぞ辛かろう。

言われたことにハイハイ言うだけなら簡単だ。無能な営業が開発から嫌われるのは、客が言うことをなんでも受け入れてしまうからだ。客の要求を自社に伝えるだけのメッセンジャーならアホでもできる。
文在寅はそれと同じである。中国を上得意客と見なし、生きていくには習近平の言いなりになるしかないと思っている。無能のひとことに尽きる。
そんな無能を大統領に据えるから、こんなことになってしまう。無能な人間は決断ができない。米中へのどっち付かずの対応はまさにそれだ。中国に尻尾を振っていたが、結局THAAD導入を決めてアメリカに付いた朴槿恵の方がまだマシだった。朴槿恵は選択肢を選ぶことができた。

なにも決められず、ただヘラヘラしているだけの大統領を選んでしまったことを韓国人が今さら後悔しても遅すぎる。
文在寅が韓国大統領になってまだ半年だ。任期はまだあと4年半も残っている。