20180218-1

昨日の男子フィギュアスケートはすごかった。羽生結弦が五輪2連覇となる金メダル、宇野昌磨は銀メダル。これ以上ない結果になった。
このニュースをいつまでも見ていたいくらいだ。

特に羽生がすごかった。11月に右足靭帯を負傷してから2か月間滑ることができず、試合感のないままぶっつけ本番で望んだ金曜日のショートプログラムはノーミスで圧巻の1位通過、昨日のフリーでも大きな問題なく仕上げてきた。日本全国、羽生より緊張してテレビの前にかじりついていた人が多いことだろう。

どれだけメンタルが強ければああやって結果を残せるのだろうかと感心してしまう。私のように鬱病で不安症にかかったような人間はプレッシャーに著しく弱い。「失敗したらどうしよう」と考えてしまう予期不安という症状に襲われ、人前のスピーチなどで事前に思っていたとおり失敗してしまう。場数を踏んでいる一流のアスリートでも緊張はするのだろうが、緊張の解きほぐし方を心得ているし、ちょっとやそっとでは動揺しないのだろう。

羽生と正反対だったのがアメリカのネイサン・チェンだ。金メダル候補だったのに、ショートプログラムで自分の直前に滑った羽生が高得点を叩き出したことに動揺したのか、すべてのジャンプに失敗するなどボロボロの結果だった。フリーでは4回転ジャンプに6回チャレンジし、史上初めて5回成功させ、フリーで最高得点を叩き出した。ショートのあとに「なにがなんだか分からなかった」と弱音を吐いた様子や、翌日のフリーで吹っ切れたように見事な滑りを見せつけたのはソチ五輪での浅田真央に重なるところがある。
彼はまだ18歳だったからこういう結果になったのかも知れないが、次の五輪までにメンタルが鍛えられれば金メダルを獲るかも知れない。

銀メダルに輝いた宇野昌磨もよかった。結果的に、ハビエル・フェルナンデスの4回転が2回転になったことが効いたようだ。フィギュアスケートの得点は基準が同じ技術点と、審査員が主観で決める表現力などの構成点のふたつで構成されていて、素人目にはなんのことか実に分かりにくい。それでも、審査員が決める構成点はともかくとして、技術点は知れば理解できる。宇野は転倒した4回転があったが、フェルナンデスは4回転サルコウが2回転になってしまったためにジャンプの基礎点が10点近く目減りした。4回転を飛び終わって転んでも少し減点されるだけで、4回転できなかったのとは全然違う。

元々フェルナンデスは基礎点が低めの演技構成でフリーに望んだのに、そこでさらに基礎点を下げてしまっては勝ち目がなかった。
得点結果については読売新聞が見やすくまとめていた。

【読売新聞】五輪男子フリー解析:フリー2位の羽生が逃げ切れた理由 (2/17)

これで見れば、羽生が金メダル、宇野が銀メダルになった理由が一目瞭然である。バカな韓国人が宇野の銀に納得いかないとネット上で不満を垂れているようだが、ジャンプの技術点の差を見ればフェルナンデスが大きく点を下げたのがよく分かる。宇野も羽生も日本が審判を買収したから勝ったなどというバカな意見があるが、前回、前々回の五輪でキム・ヨナが日本人から同じように叩かれていたことを思い出す。ようするにやっかみである。

フィギュアスケートは難しい演技で攻めて勝つか、無難にまとめて勝つかの選択が重要になる。羽生も宇野も前者だ。キム・ヨナは間違いなく後者だった。羽生が憧れるフィギュアスケートの皇帝・プルシェンコがトリプルアクセルにこだわる浅田真央を絶賛し、誰とは言わないまでも高難度のジャンプに挑戦しない選手を批判したことがあった。
見る側としては、無難にまとめて構成点で得点を重ねるよりも、難しいジャンプをバシバシ決めて勝ってくれる方がいい。

キム・ヨナが現役の頃、彼女の得点に関してゴチャゴチャ言われることが多かった。不正があったのかは知らないが、大して面白くないスケートをしていたのは間違いないと思う。それにロシア人の選手やロシア人コーチにそこそこ嫌われていた。なぜだか理由は知らない。
キム・ヨナは韓国の国民的英雄であり、だからこそ平昌五輪の聖火の最終点火を担当したのだろうが、彼女が韓国以外では嫌われるとまでは言わないにしても、大して好かれていないことを考えるとビミョーに思えてならなかった。まあ、ヨナ以外に冬季五輪の最終点火者にふさわしい人物はいなかっただろうが。

オリンピックで勝って金メダルを獲得する選手が無条件で一流になるわけではないだろう。勝ったうえに、さらに尊敬されないといけない。ほかの選手から尊敬されるような人物でなければならないと思う。尊敬されない金メダリストはただの金メダリストで、尊敬される金メダリストが一流の金メダリストだ。

そういう意味では、羽生の憧れであるプルシェンコは一流の金メダリストだし、羽生も多くの選手から目標とされているのだから一流だろう。
銀メダルを獲得した宇野昌磨がテレビのインタビューで「これから若い人たちの目標になりますが…」と問いかけられ、「自分ではなく、みんな羽生選手を目指す」と答えていた。羽生はそれほどの選手なのだ。
一流選手ならば、こうありたいものである。