20180710-1

仕事で愛知県の自動車工場に何度か行ったことがある。ひとつは三菱自動車で、もうひとつはトヨタだ。
そのときに感じた工場のイメージを色で表すと、三菱は黒、トヨタは白だ。三菱自動車の工場は古くて煩雑としており、油汚れのある黒いイメージで、トヨタは工場が新しく、小ぎれいで小ざっぱりした感じだった。

トヨタの工場では、始業や終業、休憩時間の合図でブザーが鳴って、作業員が一斉に持ち場を離れていたのが印象的だった。「あとちょっとやる」というのがほぼなく、ブザーがなったら作業を止めてさっさと帰るような感じだった。車の組み立てを全部終わらせてから帰るのではなく、そのままの状態にしておいて、続きは別のシフトの人間がやるのだろう。

三菱もトヨタも社員はどちらも慇懃無礼な感じだった。大会社の社員によくいるタイプなので、そういう偉そうなタイプには慣れてしまった。三菱は現場の工場にいた責任者がIT関係のことをまったく分かっていない、いかにも工場勤務の叩き上げみたいなオッサンで、まったく話が通じず辟易した。トヨタは賢そうだった。

生産現場に接してしまうと、その企業のイメージが勝手にできあがってしまう。古くて汚い工場でウルサイだけのオッサンが作っている三菱自動車の車より、新しくて清潔な工場で作られたトヨタの車の方がよさそうに思える。

その前に、三菱自動車に対していいイメージなどまったくない。2000年に10車種での大規模なリコール隠しが内部告発で発覚したにも関わらず、2004年には分社化した三菱ふそうのトラックでもリコール隠しが発覚した。これらのリコール隠しのせいで、走行中に外れたタイヤの直撃を受けて横浜の主婦が死んだり、冷蔵貨物トラックが制御不能になって運転手が事故で死ぬなどした。
特に横浜のタイヤが外れた死亡事故は池井戸潤が「空飛ぶタイヤ」として小説にして、ドラマや映画になった。それを見れば三菱自動車が悪徳企業であると強く印象付けられる。

個人的には、私が仕事で開発した製品を使っているトヨタ、三菱自動車、ホンダの車がいいとは思うのだが、三菱はイメージが悪すぎるので却下。トヨタでもいいが、トヨタは私の母親が以前していた仕事でトヨタの販売店と相当揉めたことがあり、母親が「トヨタだけはアカン」と言っていたので、まあそれもなし。
ホンダは初めて買った車がフィットで、13年乗って何の問題もなく、ディーラーも悪くなかった。ディーラーが家から近いのでホンダが一番いいと思うのだが、今乗っている車は日産のノートだ。
実家で買った車だが、2年しか乗っていないのに母親が車をダイハツの軽自動車に買い換えると言うので私が貰って乗っている。

13年乗ったフィットが2年落ちの一番グレードのいいノートに変わったのはよかったが、日産のディーラーは我が家から遠いし、ノートがそれほどいい車とも思えなかった。フィットは後部座席が真っ平らになって、前のシートとの隙間もできないのだが、ノートは平らにならないうえに前のシートと隙間ができる。ただシートを倒せるというだけで、隙間や段差だらけでは犬を乗せて走りにくくなる。
フィットでは一度も故障がなかったのに、ノートではスマホの充電をしようとしただけでシガーソケットのヒューズが飛んで、修理するハメになった。
ノートのエアコンの吹出口が変な丸い形でスマホホルダーを取り付けられないことも気に入らないし、フィットにはあった小銭ホルダーがノートにはない。

なにより、母親が買ったノートがアイドリングストップ機能が付いた車種なのが気に入らなかった。ガソリンを若干節約できるかも知れないが、12か月点検のバッテリー交換で3万6000円も取られた。浮いたガソリン代より、特殊なバッテリーを使う差額の方が大きい。私は車を買い物にしか使わないので年1000キロくらいしか走らないのに、アイドリングストップのためのバッテリーに2年ごとに無駄なカネをかけることになり、実にもったいない。
母親もあまり乗らないのに、そのような無駄な機能を勧めた日産のディーラーを恨めしく思う。

とはいうものの、日産はトヨタと同じで特に思うことのない自動車メーカーだった。可もなく不可もなく。
ノートがフィットよりいいとは思えないのだが、今年上半期の新車販売で軽自動車の除けばノートがもっとも売れたらしい。日産車が販売台数ランキングのトップに立つのは1970年のサニー以来48年ぶりだそうだ。

そんな日産だったが、絶好調の新車販売に水を差すようなことが起こった。またもメーカーによる不正である。
日産は半年前に資格を持たない作業員が最終検査を行う無資格検査が発覚したばかりだったが、今度は出荷前の抜き取り検査で燃費や排ガス規制の測定値を書き換えたり、検査条件に満たない不正な試験を有効な測定としていたという。

無資格検査は国の制度にも問題があり、まあ構わないかと思うような内容だったが、今度の検査の不正は酷い。国内5工場で行われており、組織的にやっていたのは間違いない。
抜き取り検査でNGが出ると、抜き取っていない車の検査や問題の改修が必要となるためごまかしていたのだろうが、メーカーとしてそれでいいと思っていたから不正を働いたのだろう。事実、日産は記者会見で「品質に問題はないからリコールは行わない」とした。排ガスや燃費に関して仕様を満たさない車を出荷して消費者を騙していたとしても、安全に走るという品質には問題ないのだろう。どうでもいいことだからごまかした。バレたあとも何もしない。それが日産。
矢沢永吉がCMで「やっちゃえ日産」と言っているが、「不正をやってしまえ」ということなのだろう。

日産がルノー傘下の自動車メーカーだったからこうなのか知らないが、日産は三菱自動車のように不正やごまかしを日常的にやるメーカーであることが分かる。会見には社長もゴーン会長も姿を見せず、CCOとかいうよく分からない役職の担当役員が頭を下げるだけ。
マスコミは「乏しい自浄能力」と批判するが、自浄能力が足りないというよりも、元からそういう悪い体質の会社なだけで、自浄するとかしないのレベルの話ではないのだろう。

しかも日産が小賢しいのが、9日(月)に緊急会見を開いたそのタイミングだ。
不正が判明して即会見を行ったわけではなく、会見をするタイミングを見計らっていたのではないか。世間が豪雨災害のニュースに注目しているタイミングで会見を開けば、ニュースでの扱いが小さくなる。
そう思えて仕方がない。

高品質高付加価値を謳うのが日本メーカーの製品のはずだが、こと自動車に関しては不正不正のオンパレード。世界中どこのメーカーも不正やごまかしだらけだが、日本メーカーがそれを倣う必要などない。
スバルも日産も消費者の不信を買ったわけだが、日産は特に酷いように思えてならない。日産が三菱自動車並みに落ちてしまった感がある。
三菱自動車のリ不正体質がなかなか変わらないように、日産の体質も変わらないに違いない。こういった不正が延々と続く可能性がある。ごまかされて製造された車を消費者が購入するわけだ。
いつも損をするのは消費者である。メーカーに舐められているとしか思えない。そんなメーカーの製品は買わないに限る。