20180712-1

数日前にマイクロソフトの2in1 PCの新製品「Surface Go」の発表が行われ、ネット界隈ではにわかに期待が高まっていた。
メモリ4GB、eMMC 64GBの最安モデルが399ドルだったからだ。日本円にしておよそ4万4000円。日本で販売されるときは為替の差額が大きめに取られるので、4万9800円くらいかと思っていた。

ところが蓋を開けてみれば、昨日のマイクロソフトの発表会で衝撃の事実が判明した。海外で399ドルで販売される最安モデルは日本には存在せず、「Microsoft Office Home and Business 2016」をバンドルしたモデルのみを6万4800円で販売するという。Office 2016単体で3万5千円くらいするから、Officeを新しく買う人にとってはお得だが、既にOfficeを持っている人、クラウドサービスのOffice 365に入っている人、Officeなんかいらないという人は2万円も無駄に高いSurfaceを買わされることになる。

これにカバー兼用となる専用キーボードを1万5千円で買えば8万円である。個人で使うにしてもOfficeなんぞいらないから、私が絶対に買わない製品になってしまった。

これはいわゆる「おま国」というヤツである。単に価格が高いだけなら「おま国価格」だが、強制でOfficeが付いてくる製品仕様だから「おま国仕様」か。

「おま国」というのは、「お前の国だけ◯◯」となっている販売形態のことを差す。「日本だけ販売されない」とか、「日本だけ高い」とか、「日本だけ仕様が違う」というものだ。特にゲームソフトで多いようだ。
「おま国」によって海外のゲームソフトが販売されないことが多々あり、販売されてもゲームのストーリーをめちゃくちゃにしてまで、民間人を殺すシーンや敵の首をもぐような残虐シーンを全部カットされたりする。

日本では昔から国内メーカーが販売するPCにはOfficeがバンドルされている場合が多かった。それ以外にもいろんな事情を鑑みてマイクロソフトが決定したらしい。「お前の国にはOfficeバンドル版しか売ってやんねーよ」と。
PCにOffice絶対必要マンがいるかも知れないが、不要だとしている人も多いはず。ならばOfficeバンドル版となし版を併用して販売すれば一番いいのに、バンドル版しか販売しない。日本人なら余計なソフトが付いて高くなっていても買うだろうと思われているのだろう。
どう考えてもマイクロソフトの判断ミスで、これのせいで売り上げを落とすに決まっている。この価格ならiPad Pro 10.5と大体同じで、仕様面から比較するとiPad Proの方が優れている。誰が「おま国」の「Surface Go」を買うのか。

とはいうものの、「Officeいらないなぁ」と思いながら「Surface Go」を買う日本の消費者が相当数いるのだろう。アメリカで399ドルで売られていることを知らずに買う人もいるかも知れない。
そんなんだから、日本で販売される「おま国」製品が減らないのだろう。

日本人は「大は小を兼ねる」といわんばかりの高付加価値商品が大好きだ。オプションてんこ盛りの一番グレードのいい新車を購入する人が結構いるし、洗濯機や冷蔵庫の白物家電を買うときですら自分が使わわない機能がある一番グレードがいいものを買ったりする。
訳が分からない機能でも何でもとにかく付けて高付加価値にして売ればいいと勘違いした日本の家電メーカーがシンプルで安いものを好む海外でも同じものを販売し、惨敗に次ぐ惨敗を喫して中国や韓国のメーカーに取って代わられたのも当然だ。

海外メーカーも日本の商売では足元を見てくる。私が今使用しているZenfone 3は2年前に台湾で2万5千円で買ったものだ。ほぼ同じ仕様のスマホが日本では4万円超で販売された。超絶おま国価格である。台湾版を日本人が日本で使用するのは電波法違反だが、海外で2万5千円で売っているものを日本で4万円で売ることを取り締まって欲しいくらいだ。
4万円でもそこそこ売れたが、さすがに日本だけ高いという情報が出回ったため、Zenfone 3はいいスマホながら思ったほど売れなかった。2年経ってやっと海外と同じ価格まで下がってきた。
それに懲りたのか、ASUS JAPANはZenfone 4以降で日本で無駄に高い値段を付けなくなった。

SIMフリースマホは競争が厳しいので「おま国」はそれほどでもないが、日本ではドコモやauなどのキャリアが独占状態で、どうでもいい機能がてんこ盛りでべらぼうに高いスマホを買わされている人が多い。スマホの買い替えを促され、スマホを買い替え費用のサポートは利用者の利用料金として跳ね返ってくる。日本だけの特殊な商売なので「おま国契約」とはいえないが、酷い状態が長らく続いている。

価格や仕様での「おま国」をメーカーにやめさせるには、ユーザーが買わないことに限る。「おま国」でも買うヤツが多いから、メーカーは旨味の大きい「おま国」の販売をやめられない。
消費者は賢くなる必要がある。メーカーに消費者がバカだと思われているから、「おま国」で足元を見られる状態が続くのである。