20180720-1

韓国の文在寅大統領は有力支持基盤が労働組合で、労組からの支持を得るために2020年までに最低賃金を時給1万ウォン(約1000円)に引き上げるという公約を掲げて当選した。
昨年、早速今年度の最低賃金をいきなり16.4%も引き上げた。来年も10.9%引き上げるという。2020年までに1万ウォンに到達しない可能性があるが、文在寅は韓国の最低賃金が日本の最低賃金を上回るよう息巻いているという。

朝日新聞の調べによると、韓国の最低賃金は2010年に4110ウォン(約410円)だった。それが来年は8350ウォン(約830円)になる。10年足らずで最低賃金が2倍になったわけだ。
日本の最低賃金は都道府県によって異なるが、全国平均で848円だ。日本は毎年3%くらいずつ最低賃金を上昇させてきたが、韓国はここ10年で毎年7%以上、文在寅になってから一気に10%以上引き上げている。この賃金引き上げがいかに異常かがよく分かると思う。

最低賃金が上がったことがアルバイトをする韓国人の利益に直結するとは限らない。最低賃金の引き上げによってコンビニや飲食店の経営者は人件費の高騰に悩むことになり、アルバイトを切って経営者自らが働くようにした。そのため、最低賃金に伴って解雇されるアルバイトが増えた。

工場などでも従業員の解雇が相次ぎ、最低賃金が上がったものの職を失う韓国人が増えてしまったが、支持者から外交のみならず経済の天才と称される文在寅は考えた。元から仕事にあぶれていた人、新たに仕事を失った人たちは公務員にして仕事を与えればいいではないか。
かくして文在寅は80万人の公務員増をぶち上げた。公務員の給料は税金から賄われるわけだが、公務員だらけにしてしまうさまは経済破綻したギリシャを見ているかのようである。

公務員増やムリな最低賃金引き上げなど、庶民が喜びそうなことを文在寅が政策として掲げているさまはかつての民主党政権を思い起こさせる。民主党政権は高速道路無料化や子ども手当などニンジンだけぶら下げて選挙で票を獲得し、実際はほとんど撤回してしまった詐欺政権だったが、文在寅はとりあえずやってはいる。極めて社会主義的な動きであるが、元々北朝鮮寄りのリベラルな大統領なのだから仕方がない。

少し前まで、韓国人の平均的な給与は日本人の7掛け8掛けくらいが多かったが、今では同じくらいになりつつある。最低賃金の引き上げによって日本を上回れば、常に日本をライバル視する韓国人には誇らしいことだろう。それでうまくいくのかは話が別だが。

韓国のコンビニで最低賃金が830円になったとする。日本の最低賃金はあくまでの下限であって、実際はそれよりも多いことがほとんどだが、韓国は最低賃金で働いているアルバイトがほとんどだ。
日本はコンビニでも飲食店でもどこも人手不足でアルバイトを常に募集しているが、韓国でアルバイト募集の張り紙を見たことがなかった。最低賃金引き上げによって働き手が供給過多になっているのがよく分かる。

日本と韓国のコンビニでアルバイト店員の時給がどちらも830円だとすると、明らかにしんどいのは日本のコンビニである。日本のコンビニは商品の販売から公共料金の支払い、宅配の受け付け、チケットの販売などやることが多すぎる。どの店員もだいたいマジメで、空き時間には店の掃除をしていたりする。
韓国のコンビニは、店員が軒並み椅子に座ってスマホを眺めている。どこの店もそうで、100%と断言しても過言ではない。スマホを眺めながらダラダラ過ごして、たまにレジ対応だけして830円。日本のコンビニであくせく働いても830円。同じ830円ならアルバイト店員の目線からなら韓国の方がいい。
しかし、経営者からすればたまったもんじゃない。ろくに仕事もしないアルバイトに高いバイト代を支払わなければならない。同じ830円を支払うなら、日本のコンビニ店員くらい働いてもらわないと納得いかないのも当然で、最低賃金引き上げについて文在寅に抗議するのもよく分かる。

韓国の店員や工場の工員など勤務態度は極めて悪い。百貨店の店員までも勤務中にスマホを見ているし、仁川国際空港では薬局で働いている薬剤師3人ともが椅子に座ってスマホをいじっていた。
工場に勤める工員は勤務時間中でも自分のやることがなくなればすぐにスマホをいじりだし、スマホゲームに熱中する。ある工場では、勤務時間中に仕事用のパソコンでネットサーフィンしながら音楽を流していた。
台湾や中国のコンビニや工場と比較して、韓国はメチャクチャだ。国民全員がスマホ中毒なのではないかと思うくらい常にスマホをいじっている。台湾や中国では個人商店の店員が店先でスマホを見たり飯を食ったりしているが、コンビニではそんなことはないし、なにより工場の従業員がネットしながらダラダラ仕事をしているなどということはない。
韓国にしばらくいれば、韓国はとんでもなく生産性が悪い国であることがよく分かる。

そんな国なのに、最低賃金を日本に追いつけ追い越せで上げまくり、返す刀で残業制限で週あたりの勤務時間の上限を52時間になる。韓国では残業代が出る一流企業でも残業をせずにさっさと帰る社員が多いが、それでも働いている人は働いている。しかし、今後は残業が週あたり12時間しかできない。毎日2時間ちょっとである。正直、そんなもんでやっていけるのかと思ってしまう。従業員全員を残業代が出ない年俸職にする必要があるのではないか。

民衆の歓心を買うため、経済の実態にそぐわない賃上げや労働時間を政治主導で強制して果たしてうまくいくものなのだろうか。うまくいかないに決まっている。
日本は、今後韓国で起こりうることを他山の石とすべきだ。こういう安易な政策は、絶対にマネすべきではない。