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10日(土)に関西テレビで「ようこそ!外国人TVクルー Theロケ地Japan」というバラエティの特番を放送していた。宮川大輔とケンドーコバヤシが司会で、海外のテレビ番組がどんな取材をするのか日本ロケに密着する内容だった。
そのなかで台湾とタイの旅番組が少しだけ紹介されていて、食レポで普通に食べて普通にコメントを言うリポーターについて、大袈裟に「うまい!」と叫ぶ宮川大輔のような日本の芸人とは違うとVTRで紹介されていた。

番組ではそういうことになっているが、タイについては知らないが、台湾の番組はそうではない。番組が密着していた亞洲旅遊台という旅番組専門チャンネルのオリジナル番組の出演者がたまたまそうだっただけで、「愛玩客」や「食尚玩家」といった他のメジャーな旅番組ではリポーターのタレントが日本の芸人と同様に大袈裟に表現しているのをよく見かける。
台湾のテレビ番組は日本のテレビ番組の影響を強く受けていて、旅番組で食べものを紹介するときに、例えば箸でラーメンの麺を持ち上げたり、カレーパンやコロッケをふたつに割って中身を見せるインサートカットが必ず入る。タレントが「うまい!」と絶叫したり、ジタバタ動き回ったりもする。日本人でも台湾人でも、普通そんなことをする人はいない。

これらは分かりやすくするための番組上の演出だ。食べもののおいしさなど、口で説明してくれるだけでも分かるはずだが、日本のテレビはとにかく分かりやすくせねばならないと考えている。要するに視聴者がアホだから、明快にしてやらないと理解しないだろうと考えて、出演者にワーキャー言わせるわけだ。
バラエティだけならまだしも、日本はドラマでも演者が大袈裟なので、海外の視聴者が日本のドラマを「演技がリアリティに欠ける」と論評することになる。
限度はあるが、バラエティなんぞ面白おかしくやってナンボのもんなので、ドラマの演技はともかくとして、バラエティではそのくらいでいいのかも知れない。

ここ数日、テレビのバラエティ番組の演出に関して騒々しい。8日(木)発売の週刊文春が「世界の果てまでイッテQ!」で放送していたラオスの「橋祭り」についてヤラセだったと報じたからだ。
週刊文春によると、テレビ局側が存在しない祭りをでっち上げたということになっているが、実際はそこまででもなかった。番組がタイのコーディネーターから東南アジアで行われている自転車で橋を渡るイベントをラオスの祭りでやると提案されたというものだった。
自転車で橋を渡る「橋祭り」がメインの祭りではなかったことは確かだが、番組が祭りをでっち上げて全部をやらせでやったわけではなかった。コーヒーフェスティバルという祭りで初めて実施するイベントなだけだ。

番組を見ていたが、確かに大掛かりなセットが今思えばテレビ番組のセットみたいだったし、回転するバランスボールをよけるとかいうのもテレビっぽいが、まあそれなりに面白かった。
「橋祭り」というネーミングや、これまでに何回か行われているかのようなナレーションは問題あったかも知れないが、それ以外はどうということはない。
なぜここまで炎上しているのかが理解できない。

番組に対してなぜか怒っている人は、「ラオスに対して失礼だ」と言う。確かにラオス政府が「橋祭りなんかラオスにない」とか「文化をでっち上げた」と抗議しているようだが、結果がハッキリしてから番組で訂正すればいいだけに思える。
「同じことを日本の祭りでされたらどう思うか」という松本人志みたいな意見もあるが、どこぞの地方の知らない祭りで、海外のテレビ番組がゲームイベントをやり、それが祭りだと海外の番組で放送されたからといって激怒するようなことなのだろうか。

「ヤラセ許すまじ」「外国に失礼」という風潮が高まっているが、海外が絡むバラエティではもっと酷いヤラセが横行している。
以前に書いたが、TBSの「ぶっこみジャパニーズ」や「メイドインジャパン」という不定期の特番はめちゃくちゃだ。

「ぶっこみジャパニーズ」では、イギリスでめちゃくちゃ変なラーメンを2000円で客に売りつけたりしているのをラーメンの達人を名乗るオバハンが成敗し、本当のラーメンを教えてやるという内容が放送されていたが、後日そのイギリスのラーメン屋が「番組に依頼されてめちゃくちゃなラーメンを作った」とFacebookで暴露していた。

外国人が日本のいいものを故郷に持って帰る「メイドインジャパン」では、前はそんなことなかったのに、里帰りする外国人に家庭不和などのドラマ的演出が加えられるようになった。親に勘当されたが、最後は心を開かせるというのをよくやっている。
9月に放送されたブラジル人モデルは、父親との電話のシーンでスマホが通話画面でなくホーム画面になった状態で父親と会話していた。会話の演出をしていたのがバレバレである。
それ以外にも、タクシーの自動ドアを持っていった南米で、自動ドアを見た現地の人が頭を抱えて驚いたり、皆が口を揃えて「ニッポンってすごいのね」と言う。
また、お土産に持っていったパズドラのキャラクターぬいぐるみをアメリカ人の子供が大喜びするというスポンサーを喜ばせる演出もあった。アメリカ人の子供がパズドラ好きで、そのぬいぐるみを欲しがっているもんだろうか。

テレビ東京の100円ショップのグッズを海外に紹介する番組もめちゃくちゃウソっぽいし、ここでも子供が苦労している親の手伝いをするとか、どうでもいい演出が加えられている。

TBSの番組は、毎回毎回視聴者にヤラセ演出を見抜かれて問題になるのに、特番が終了することはない。ヤラセのアラ探しが恒例になっているほか、大して人気のある番組でもないからだ。
一方で「イッテQ」は毎週高視聴率を叩き出す番組で、炎上させる方は炎上させがいがあるし、ほかのテレビ局は「もしかしたら番組を潰せるかも知れない」という希望的観測を抱いてニュース番組で大層なニュースであるかのように取り上げる。
本当にバカバカしい。

テレビ番組ごときでいちいちヤラセうんぬんで騒ぐ必要などあるのだろうか。テレビのバラエティ番組なんぞ全部ウソだと思っておけばいい。海外で迷惑かけたとかいっても、大したことないのだから、あとで釈明すりゃよかろう。
海外で迷惑どうこういうのなら、台湾で最近放送された旅番組で、大阪の街なかで世界一臭い食べものといわれるシュールストレミングの缶詰めをそのまま開いて、水洗いもせずに食べていて、臭いとかワーキャー騒いでいた。これの方が迷惑だろうに。

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しかしよくよく考えてみれば、日本のテレビ番組ではシュールストレミングの缶を海岸とか山奥とか誰もいないところで開け、芸人がオエオエ言いながら騒いでいるが、発酵が進んで液状になり、缶がパンパンに膨れ上がったものでなければそこまで臭くないのかも知れない。
だとすれば、オフィスビルが立ち並ぶ大阪の街なかでシュールストレミングの缶を開けても大した迷惑ではないのではなかろうか。

それを思うと「橋祭り」なんかより、過剰すぎる日本のバラエティ番組のリアクションの方をもうちょっとなんとかした方がいいのかも知れない。