20181115-1

小説や漫画などの書籍は本屋で買うと決めている。なんでもかんでもAmazonで購入すると、Amazonだけが儲かり、近所の実店舗が儲からなくなるからだ。

食品や日用品をネット通販で買う人は少ないと思う。実店舗で買った方が安いものが多いためで、スーパーやDIYの店がAmazonに押されて潰れることはあまりないように思えるが、本屋はそうではない。実店舗の本屋は万引被害があるが、Amazonは絶対に万引きされない。それだけでも実店舗は不利なのだが、Amazonで本を買うと定価より僅かに安く、さらに3%くらいポイントが付く。
買いに行ったら品切れということがなく、いちいち出かけなくても家に届けてくれて、ポイントも付くならAmazonで買った方がよさそうに思えるが、やはり本は本屋で手にとって買うべきだ。

本屋を何件か巡って買えなかった本をAmazonで注文することはあるが、Amazonで1冊だけ注文すると薄い緩衝材付きの封筒で送られてくるだけなので、本の角が傷んでいたりする。私は本を集めることも趣味なので、傷んだ本は本棚に入れたくない。
また、本をネットで買うと帯が付いているのか分からないし、発売日直後に買っても初版第1刷でない場合もある。
だから本屋で手にとって買うことが重要なのだ。

先週末、本屋に行って百田尚樹の「日本国紀」を購入した。百田尚樹の本なので「待ってました」と思っていた人も多いかも知れないが、私の場合はたまたま本屋にあって面白そうだから買った。内容を簡単に言うと、小説ではなく保守目線で書かれた日本の歴史で、その昔話題になった作る会の歴史教科書を買って読んだことを思い出した。それに百田本人の思いが追加されているようなもんだ。
Amazonのレビューを見ると左派と思われる連中が☆1のレビューを付けているが、☆5とはいわないまでも十分楽しめる。日本の歴史の復習にピッタリだ。

本屋には「日本国紀」を買いに行ったのではなく、スティーヴン・キングの「ミスター・メルセデス」という文庫の新刊を買いに行くためだった。
私は小説は文庫本で集めているので、キングの作品も文庫本しか持っていない。上下巻で4000円はするハードカバーは高すぎる。

文庫本は日本独自の出版形式で、海外ではペーパーバックにあたる。ペーパーバックはカバーもなくわら半紙みたいな質の悪い紙に印刷されており、いかにも読み捨てみたいな感じがするが、文庫本はキレイだし場所も取らないので集めるのにちょうどいい。

長らく文庫本は安いと思っていたのだが、最近はそうでもなくなってきた。
今回買った文春文庫の「ミスター・メルセデス」は、380ページ程度の普通の厚さの文庫本上下巻なのだが、1冊が税抜きで980円もする。税込みで1058円だ。
個人的なイメージでは文庫本は500円前後、1000円を超える文庫本はものすごい分厚いサイズだったのだが、今やイメージの倍くらいの価格になっている。
嫁さんに買ってきた文庫本の値段がいくらだと思うか尋ねてみたら「600円くらい?」との回答だった。1000円だと教えると「高すぎる」と言っていた。

文春文庫は新潮文庫などよりも少し高いが、海外文庫だからさらに割高だというのもある。同じ文春文庫でも海外の作家は3割くらい高い。キングは売れていると思うのだが、印刷する量が少なめなのと、翻訳の経費がかかっているからかも知れない。

それでも日本の作家も海外の作家問わず文庫本はかなり値上がりしていると思う。小中学生の頃に買い集めた星新一の文庫本は300円台で買っていたが、今では600円くらいする。
物価上昇分も含まれるのだが、物価上昇とは関係なく、文庫本、ハードカバー問わずに書籍の価格はここ数年でかなり上昇した。
出版不況と呼ばれる昨今、やはり印刷量が減っているのと、流通コストの上昇が原因らしい。

さらに来年10月には消費税の増税もある。税抜き980円の文庫本は8%なら総額1058円で、10%なら1078円になる。20円値上がりするわけだが、「20円値上がったから買うのをやめよう」とは思わない。
とはいうものの、消費税アップによる値上げの影響がないわけないので、出版業界が書籍への軽減税率適用を求めている。
出版業界としては是が非でも軽減税率適用を実現させたいところだろうが、個人的には軽減税率の適用自体に反対なので、書籍も消費税10%でよい。

出版社4団体と議員連盟2団体の提案では、有害図書を除く書籍に軽減税率の適用を求めている。軽減税率が適用される書籍には映倫のように出版倫理コードを付与し、コードを管理する機構を設立するという。
なんという邪魔くさいことを考えているのだろうか。成人向けだから有害とするのではなく、本の内容を1冊1冊審査するのだという。そんなややこしい仕事を増やしたいほど出版業界は人手が余っているのか。

10%も8%も大して変わらないのに、政府が消費増税の批判を減らすために軽減税率適用を決めたのがそもそも問題だった。早々に新聞に軽減税率の適用を決定し、新聞業界を黙らせた。「新聞に適用されるなら書籍も」となるのは当然だろう。
食品は最初から適用分野であるが、食品業界は軽減税率適用のみならず、消費税込みの内税価格とする総額表示にすることにも文句を垂れているという。消費者目線ではどう考えても総額表示のほうがいいのに、「見た目の価格が上がると売り上げに影響する」という自分勝手な主張をしている。

食品に関する軽減税率でも、コンビニやファストフードは持ち帰りなら8%、イートインや店先のベンチで食べるなら外食扱いで10%になるという。ということは、ファストフード店で持ち帰りと言っておきながら店内で食べるヤツが出てくるだろうし、コンビニで食品を買うたびに店で食うのか持ち帰りか尋ねられることになる。それを質問するバイトも面倒だと思うが、いちいち訊かれる客の方も面倒臭い。
とにかく面倒なことしか起きない。消費税が20%になるならともかく、8%が10%になるだけで軽減税率を適用することを考えたヤツはアホだろう。

軽減税率だけでもウンザリするのに、キャッシュレス決済で消費税分のポイントを返すことも決まっているし、またぞろ公明党がプレミアム商品券の発行を検討しているという。地元で使える2万5000円の商品券を2万円で買えるようにしたいらしいが、以前にプレミアム商品券でさんざん揉めたことをもう忘れたのだろうか。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはよく言ったもんである。
しかもプレミアム商品券には所得制限があるのだが、子育で世代も買えるとか何とか。
もうグチャグチャのメチャクチャである。

世の中にはものごとを複雑にしたがる人がいる。そうやって本質をごまかしたいのかも知れないが、ものごとは単純であればあるほどいい。
消費税は一律10%、総額表示でいいではないか。どうしてこう批判を抑えるために小手先の対応をしてしまうのだろうか。消費増税時の混乱が目に浮かぶようである。