20181211-1

産業革新投資機構の民間出身取締役9人が一斉に辞任したとかでニュースになっていた。
その理由はこうだ。

田中正明社長ら役員は産業革新投資機構を9月25日に発足させるにあたり、経済産業省から固定報酬1550万円と成功報酬として最大1億1000万円の提示を受けていた。
ところが、高額すぎるのではないかとする朝日新聞の記事を境に政府内で批判が噴出。まだ仕事もしていないのに「報酬が高額すぎるから下げる」と一方的に通告を受けたことにキレた人たちが報酬を捨ててファンドを去ったということだ。

経産省は民間ファンドのトップや役員たちの報酬を元に算出し、「このくらい出せば泊の付いた人たちが集まるだろう」と額を決定した。
それを提示しておきながら、「貰いすぎ」であるかのように批判されて報酬を下げるなどと通告されれば誰でも腹が立つのは当然である。

三菱UFJ銀行のナンバー2だった田中正明社長が記者会見でたいそう憤慨しながら「仮に報酬が1円でも社長を引き受けていた」と言っていた。それが本当かどうかは知らないが、自分から提示さた額でもないのに守銭奴呼ばわりされたらプライドが許さないのだろう。
「(固定報酬が)1500万円なんて情けない」と田中社長がぼやいていたと経産省の人間がマスコミに暴露していたらしいが、守銭奴に思わせるための卑劣な暴露にしか見えない。

最大で1億2550万円の報酬が高いか安いのかは知らないが、経産省の最初の算出がおかしかった。
産業革新投資機構は官民ファンドとは名ばかりで、資産の95%は国が出しており、民の要素などほとんどない。それにも関わらず、民間のファンドと同レベルで幹部の報酬を決めるのが間違っている。民間ファンドの連中は失職のリスクと隣り合わせで仕事をしているが、国がやっているファンドの幹部なんぞノーリスクの公務員みたいなもんで、報酬を同じで考えるのが間違っている。
欧米ではこのような公的な仕事では報酬を低く抑え、ボランティア的に仕事をしてもらうのが一般的だ。
ほぼ公的機関のファンドのくせに民間ファンドみたいにやろうとし、批判を受けたらすぐさま報酬を下げることにしたブレブレの経産省に問題があるのは明らかだろう。

人の仕事の価値は得られる報酬によって区別される。誰でもできるような仕事は給料が低く、誰にでもできないような仕事は高い。
人のためにボランティア的に仕事をする人など、世の中にはその一般的な枠組みに属さない人もいるが、その一方でカルロス・ゴーンのように仕事の対価として報酬がすべてと考える人間は1円でも多く稼ぐために必死になる。
世の中のほとんどの人は後者だろう。仕事は報酬の多寡で評価されるべきであり、それなりの仕事をする人はそれなりの報酬を貰うべきだと多くの人が考えているはずだ。

にも関わらず、金の話が自分のことでなくなると無責任なことを言う連中がいる。

例えば、広島カープの丸についてゴチャゴチャ文句を言うような連中だ。巨人へのFA移籍が決まった丸について、一部のカープファンが「結局金か」と批判している。巨人が5年35億円、ロッテが6年30億円、広島が4年17億円提示していたという。そんなもん、巨人嫌いの私だって巨人に移籍する。巨人に行けば引退後の将来も約束されるし、なによりたくさん年俸が貰える。
プロ野球選手にとって、自身の評価は年俸がすべてだ。いくら口で「評価してます」と言われたところで、球団の懐事情があるとはいえ、4年17億円と5年35億円では比較にならない。
広島カープはヤンキースとの高額契約を蹴って復帰して男気を見せた黒田という前例があるため丸が批判されたのだろうが、黒田みたいな選手は特例中の特例だろう。

自分が同じ立場ならたくさん給料を貰いたいと思うくせに、人には厳しい連中はなんなのかと思う。
原発事故を起こした東電の給料について、「東電のくせに貰いすぎだ」という批判が起きたこともあった。「社員に高級を出すくらいなら賠償金を増やせ」という意見がまかり通り、東電社員の給料が大きく下がることに。あれだけ重大事故を起こしたのだから仕方のないことではあるが、給料を下げすぎたせいで優秀な人材が多く流出してしまった。優秀な人材は東電に残らなくても転職してもっと稼げる。
それでもまだ東電の給料が高すぎると言う人が多いが、下げすぎると東電から優秀な人材がすべて流出し、残りカスしか残らないのではないか。残りカスでもそこらへんの三流企業の社員よりは優秀かも知れないが、残ったカスだけで仕事をしろとは酷ではないか。
それとも、東電の社員は罪人みたいなもんだから安月給でもガマンして仕事をしろということか。

自分にできないことを他人に求めるのはみっともない。特に金の話はその傾向が強いが、ただの妬みや嫉みではないか。