20190220-1

昨晩の「報道ステーション」はトップニュースが堀ちえみの舌がんのニュースだった。これから闘病生活に入るらしいが、リンパにも転移しているステージ4の段階であり、52歳という若さなので、残された時間はそれほど長くないかも知れない。

堀は昨年7月に主治医に舌にできた口内炎を診察してもらって塗り薬を処方されたが改善せず、11月には別の歯科で診察を受けた。定期検診では服用していたリウマチ薬の副作用を指摘され、薬の服用をストップしただけにとどまった。今年に入ると舌に激痛が走るようになり、1月に改めて診察してもらうと舌がんだと判明したという。
初期の舌がんは口内炎と間違われることが多いそうだが、2週間経っても改善しない場合は舌がんのを疑うべきだという。それでも口内炎と診断された場合はセカンドオピニオンを求めて別の病院での診察が勧められるそうだ。

今や国民のふたりにひとりが何らかのがんで死ぬ時代だから、がんの話は人ごとではない。とはいうものの、堀ちえみのがんを報道番組のトップで10分にもわたって報じるべきなのだろうか。
その後「ニュースゼロ」を見たら、そこでもトップニュースで10分くらい時間が割かれていた。

池江璃花子の白血病も堀ちえみの舌がんもトップニュースだった。国民に広く知られる有名人の重篤な病気ということで関心が高いのかも知れない。だからほかのニュースを差し置いてトップで報じるよう番組の制作者が判断したのだろうが、日本の報道番組のワイドショー化を感じざるを得ない。
世界屈指のトップアスリートである池江の白血病はまだ分かるが、堀ちえみのがんがそれほど重要なことなのだろうか。

がんに対する国民の関心が高いと書いたが、その関心というのは病気に関するものだけではないだろう。病気になって気の毒な有名人のニュースを見たいという視聴者心理があり、番組の制作者はそれを汲んでトップニュースにするのだと思う。
視聴者の思いは野次馬根性みたいなものだが、深層心理では人の不幸を知りたいという欲求があるに違いない。人間は幸せとか不幸せという感情を相対的にしか感じることができない。人の不幸を見れば、自分が幸せだと感じることができる。
堀ちえみのニュースを見て「可哀相」と思いつつ、心のどこかで堀ちえみと自分の境遇を比較して、自分のほうがまだマシと思っている人も少なくないのではないか。

俗っぽい私もそのタイプだと思うが、堀ちえみのニュースはあまり見たくなかった。どう考えても堀ちえみはこの先、これまで経験したことのないような苦労をする。22日に舌の半分とがんが転移した首のリンパの切除を行うらしいが、対象療法みたいなもので、がんが完治するとは思えない。ステージ4の舌がんの5年生存率は45%とはいえ、残された時間を大切にして子供と接していかねばならないし、その残された時間も抗がん剤を用いた治療をし、痛みに耐えながら生きねばならない。半分の確率で5年以上生きられるかも知れないが、質のいい生活が送れるわけでもない。
義母や実父が60歳くらいでがんで死んだので、堀ちえみも同じようになるかと思うと気の毒で仕方がない。まだ10代の子供も可哀相だ。そんなことを考えてしまうニュースなんぞ見たくない。

なぜ日本の報道番組は芸能人ががんになったくらいでトップニュースで扱い、延々と10分以上も報道し続けるのだろうか。これが総理大臣ならまだ分かるが、芸能人がひとり病気になったくらいでは正直なところ世の中になんの影響もない。堀ちえみの心境の報道や舌がんの解説なんぞは朝や夕方の情報番組でやっておけばいいのではないか。
国内政治や国際情勢よりも芸能人のがんを知りたい視聴者が悪いという見方があるかも知れないが、どちらかというとテレビの制作者側が報道番組とはいえないニュースを作り、それを好む視聴者を生み出しているだけに思えて仕方がない。