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つい先日、米ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」がシーズン8で最終回を迎えた。とにかく世界中で大人気のドラマで、アメリカのHBOというケーブルテレビ局が1話で映画が作れるほどの大枚をはたいて制作したものだ。
「ブレイキング・バッド」もそうだが、人気のあるドラマはどんな結末を迎えても受け入れないファンが一定数いて、「ゲーム・オブ・スローンズ」の最終回も作り直しを求める署名が既に100万人を超えているという。

その「ゲーム・オブ・スローンズ」であるが、中国ではテンセントの動画配信サービスで配信されており、20日(月)に最終回が配信される予定だった。ところが、配信1時間前になって中止が決定し、中国のファンを激怒させているという。
テンセントは「通信に関する技術的な問題」だと発表したが、配信元のHBOはそれを否定。ウォールストリートジャーナルは「米中貿易摩擦に関する配信停止」と報道しており、中国で最終回だけ配信されない可能性がでてきた。

中国人のファンなら違法な方法でなんとか視聴するだろうが、それだとしても気の毒になるほどの嫌がらせだ。中国のSNSであるウェイボを見ると大荒れの状態で、中国人にかなりのストレスとダメージを与えたと見られる。

米中貿易戦争が「ゲーム・オブ・スローンズ」の配信停止になんの関係があるのか分からないが、今後もこのような嫌がらせ小競り合いがもっと起こるのだろう。貿易摩擦にとどまらず、貿易戦争と呼ばれるに納得するような展開になってきた。

アメリカは総力を上げてファーウェイ潰しに乗り出し、ほかの中国のIT企業も軒並み打撃を受けるのは間違いない。かなりのインパクトとなり、米中貿易戦争からの不況が徐々に起こりつつある。中国経済が落ち込むことで既に日本企業の売上に影響が出ており、このままいくと安倍首相が言う「リーマンショック級」の大事になりそうだ。そうなった場合、消費税の延期もあり得る。
消費税は延期でも増税でもどっちでも構わないが、内税の税込価格表示の義務化だけは実施して貰いたいと思っている。

それはともかく、中国の出方が気になる。どう考えても負け戦だが、ヤケクソでいろいろやって来るのは目に見えている。
中国は韓国以上に司法制度がデタラメで、逮捕するしない、起訴するしない、死刑にするしないはすべて当局のさじ加減ひとつで決まる。ファーウェイの幹部を逮捕したカナダへの嫌がらせのため、カナダ人を逮捕したり、死刑判決を出すような国である。死刑判決を受けたカナダ人は中国で特に取り締まりの厳しい麻薬関連の犯罪だったそうだが、それもどこまで信用できるか分からない。
日本のアメリカに追従すると、邦人が似たような目に遭うかも知れない。

昨日のニュースで、中国で温泉の地質調査を行っていた日本人が国家機密の漏洩等で懲役15年の判決を受けたとあった。仕事で中国に行って懲役15年とは、想像するだけで恐ろしい。
中国は地図情報や軍事基地周辺の写真が機密に当たるので、いろいろ注意をせねばならない。気を抜くと逮捕され、中国の刑務所に15年入ることになる。日中関係が冷え込んだりすると、場合によればカナダ人のように死刑判決を受けるかも知れない。中国の死刑判決は執行猶予が与えられる場合があるが、執行猶予が与えられずに中国で死刑にされたら死んでも死にきれない。

私のようなIT関係の仕事の場合、中国出張だけは最新の注意を払わねばならない。主に半導体工場での現地調査とか、半導体企業との打ち合わせになるのだが、ビザの取得は必ず必要だ。
中国では観光と商談に関してはビザが不要だが、仕事の打ち合わせや現地調査はビザが必要だ。ビザの申請は面倒だし金もかかるが、怠ったときに中国国内で尋問されるなどしたときに面倒なことになる可能性がある。

中国に滞在するときは格好にも気を遣わねばならない。
現地調査するだけの海外出張の場合、私服で行って仕事のときだけ作業服の上着を着るようにしている。スーツで行くのは邪魔だし、夜や休日に飯を食うためだけに外に出るのにスーツなんぞ着ていられないからだ。私服の着替えを用意すると荷物になる。
だから、台湾やら韓国では作業服の上だけ着てホテルと現場を移動するが、中国ではそれは絶対にやらない。私服で移動し、現場で作業服を着る。

中国で作業服を着て出歩いていると、稀に警察官に呼び止められて職務質問を受けることになる。中国にも違法就労する外国人がいるため、作業服を着た外国人だと判断されると職質を受けるのだ。
日本人で中国の工場の工員として違法に働く人間などいるわけがなく、パスポートを見せて日本人だと説明すれば済む場合もあるが、それも警察官によりけりで、最悪の場合は警察署に任意同行を求められることもあるという。そんなことになったら最悪だ。中国では常にパスポートを持ち歩き、同僚とふたりで行った場合はWeChatなど中国で使えるSNSアプリで連絡が取れるようにしているが、ひとりで出張の場合は絶望的な状況に追い込まれることになる。
なんらこちらの落ち度がなくとも、中国ではなにが起こるか分からない。逮捕されても逮捕理由が開示されることが少なく、外部とまったく連絡が取れないままことが進められてしまう可能性がある。普通の国ならそんな可能性はゼロだが、中国ではゼロではない。だから、中国での仕事に慣れていないときは十分に気を付ける。用心に越したことはない。

観光で行こうが仕事で行こうが、つくづく中国という国が普通でないことを知ることになる。そんな国にはできる限り関わらない方がいい。君子危うきに近寄らずだ。