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台湾の鉄道やバスで利用できるICカードの悠遊卡(ヨーヨーカ、悠遊カード)に、日本のAV女優である波多野結衣が起用されて問題になったのが4年前の2015年だった。
悠遊卡はハローキティなどとコラボしていろいろな絵柄のものを出しているのだが、波多野結衣版の悠遊卡2バージョンが限定発売されることになったのだ。

それに対してさまざまな方面から批判が噴出した。「AV女優の悠遊卡なんてふざけてんのか」という意見が多く出て台湾で大問題になり、販売中止になりかけたのだが、最終的に電話予約のみでの販売となった。
台湾はエロの規制が厳しいのでAVも禁止されているのだが、日本のAVの人気は高く、AV女優がよくテレビ番組に出演している。日本でAV女優が交通系ICカードの絵柄になるとか、年末特番に特別ゲストとして登場するとかありえないが、台湾ではよくある。

波多野結衣は日本でも人気だったが、台湾で特に人気が出たのは、彼女の端正なルックスが台湾人女優の林志玲(リン・チーリン)とよく似ているからだ。波多野結衣は台湾で「暗黒版林志玲」と呼ばれている。
林志玲はジョン・ウー監督の中国映画「レッドクリフ」で絶世の美女とされるヒロインの小喬を演じたことでよく知られている。日本でも木村拓哉のドラマに主演していた。モデル上がりで身長が174cmもあるため、キムタクと並ぶとキムタクがちんちくりんに見えてしまう。

「台湾一の美女」と称される林志玲が昨日、EXILEのAKIRA(37歳)と結婚したと発表して台湾でニュースになっていた。林志玲は10年以上前から台湾女優の収入ランキングで1位を維持するビッグネームで、正真正銘の国民的大女優だ。それが日本のEXILE(中国語名で放浪兄弟)のAKIRAとかいう誰だか知らない日本人と結婚したのだから、台湾では大ニュースだ。エンタメニュースのほとんどが林志玲の電撃婚ばかり。
波多野結衣が林志玲の結婚について「なんか嬉しい」とInstagramに書いていたことまでニュースになっていた。

台湾のニュース記事のコメント欄を見ると、祝福するコメントが半分、残りを「志玲姉さんが日本人に嫁いでしまった」と嘆く声が占める。
フォロワーが1900万人いる中国のSNSの微博の結婚報告はリツイートが32万件、コメントが33万件もある。コメントを見ると、「その男は誰やねん」「楽しくない」といったコメントが目立つ。

嫁さんに「林志玲がEXILEのAKIRAと結婚したらしいで」という話をすると、「リン・チーリンって誰?」と言われた。リニューアル版GTOで大根演技を見せ、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で主人公の声のしょぼい吹き替えをしてマッドマックスファンを怒らせたEXIELのAKIRAは知られていても、林志玲は知らないという日本人が多そうだ。
だが、どう考えてもタレントランクでは林志玲の方が5段くらい上だ。林志玲も大して演技がうまくないが、それでもアジア圏での知名度と収入では比較にならない。

その林志玲が微博で結婚報告した際、ファンに向けた自筆のメッセージが画像として添えられていた。「私は結婚しました!親愛なるあなたたちにも幸せが訪れることを望みます」と締めくくられている文章が台湾でニュース記事になっていたのだが、辛辣なコメントが並んでいた。内容や結婚に関することではない。「自筆らしいけど、なんで簡体字?」「大陸に長くいると繁体字を忘れて簡体字を使うようになるんだな」とたくさん書き込まれていた。

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台湾人には中国大陸で使われる簡体字を嫌う人が多い。仕事で初めて台湾に行ったとき、現地の台湾企業で管理職をやっている女性らと食事に行ったのだが、その女性が「簡体字は文革のときに毛沢東が作った醜い文字なんです」と熱心に説いていた。
台湾や香港で使われる繁体字(正體字)と異なり、省略しすぎの簡体字はいかにも邪道な感じがするのは何となく理解できる。例えば、「发」という簡体字は「發」と「髪」のふたつの文字を兼ねている。発音によって使い分けるのだが、正直「なんじゃそれ」と思ってしまう。

簡体字に敏感な台湾人が多いのに、林志玲が簡体字で書いたのは軽率だったかも知れない。繁体字で書いていても中国人が過剰反応したようには思わないが、簡体字で書いたら台湾人の多くが心中穏やかでなくなる。

ちなみに、中国語を勉強すると、基礎学習で「おはよう」と「こんばんは」を「早上好」「晩上好」となっているが、台湾人はあまりこの言い方を好まず、「早安」「晩安」と言うことが多い。「どういたしまして」は「不客気」となっているテキストばかりだが、台湾ではあまり使われず、「不会」と言うのがほとんどだ。
詳しくはよく知らないが、外国人が中国的な言い回しを使わずに台湾風の言い方をすると好まれる傾向はあるようだ。

それはさておき、林志玲が日本人と結婚して歯噛みしている台湾人や中国人が多い。彼女はかつて台湾のアイドルグループF4のメンバーだった言承旭(ジェリー・イェン)と10数年も付き合っていたのだが、破局したと思ったらどこの馬の骨とも知れぬ日本人と半年付き合っただけで結婚したのだから、「台湾の男どもは何をしている!」と台湾人が怒るのも仕方ない。

EXILEのAKIRAは中華圏の人たちから厳しい目で見られることになるだろうから、「ヒモ」と呼ばれたり、林志玲を不幸にすることがないよう精々頑張って貰いたい。