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子供の頃から見ていた「サザエさん」で、ついにマスオさんの声優まで変わってしまった。「サザエさん」は声優がときどき変わっていたが、大きな変更として波平の声が変わってようやく慣れたと思ったら今度はマスオさんだ。
サザエさんの声優陣は高齢化が進んでいると昔から言われていたことなので仕方がないが、マスオさんは波平同様にかなり慣れ親しんだ声なので、変わると違和感がある。
しかしながら、波平に慣れたように、そのうち慣れるのだろう。残すはサザエさんであるが、サザエさんが変わっても果たして受け入れることができるだろうか。

私は高校生くらいからアニメをまったく見なくなったので詳しくは知らないのだが、「クレヨンしんちゃん」の野原しんのすけも声が変わったらしい。CMに出てくる声も変わっているらしいが、嫁さんに言われるまで気づかなかった。「ルパン三世」の栗田貫一のように、元の声に似せてあるものはあまり気にならないようだ。

その反面、声優の変更が今でもまったく受け入れられないのが「ドラえもん」だ。2005年に作画の雰囲気とともに声優も一新された。大山のぶ代が水田わさびというのに変わったが、これまでのもっちゃりした声が「いよー」とか言う威勢のいいドラえもんに変わったのが受け付けなかった。
「ドラえもん」をあまり見ないからかも知れないが、14年経っても慣れないのだから、この先一生慣れないに違いない。

その「ドラえもん」であるが、先週の金曜日、早めに帰宅して何となくテレビで見ていた。昔は30分の放送で2本の短編を流すとき、CMは最初と最後、そして話が終わって次の話に移るまでの真ん中にCMが流れていたが、最近は短編の話の途中でCMに入るのが衝撃的だった。子供向けの番組でもチャンネルのザッピング対策をせねばならないらしい。
ついでにいうと、「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」がテレビ朝日の番組改変の煽りを受け、10月から土曜日午後5時からの放送になるという。夜7時のアニメ番組は絶滅しかけだ。

それはともかく、30日(金)の「ドラえもん」の放送の後半は「レプリコッコ花火」という話だった。ドラえもんが出した道具「レプリコッコ」はニワトリの形をしていて、そのニワトリが見たものについて小型の複製(レプリカ)を卵として産む。卵を割ると小さくなった複製が手に入る。
その道具を手にドラえもんとのび太が書店に向かい、立ち読みを追い払う店主をよそに漫画本の卵をたくさん産ませていた。

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近年、書店で本や雑誌のページをスマホで撮影するデジタル万引きが問題になっているが、これはデジタル万引きよりも酷い。どう考えても犯罪ではないか。「フエルミラー」で自分の所有物であるどら焼きを増やすならともかく、他人のものを勝手に複製したのだから、出版社や漫画家の権利を侵害している。

これがコンプライアンス的に問題があるとネットで少しだけ話題にされたが、漫画本の複製をしたのび太より酷いと思ったのがスネ夫だ。

ドラえもんから「レプリコッコ」を借りたスネ夫は、不動産雑誌を使って「レプリコッコ」に一軒家のミニチュアの複製を作らせた。雑誌に掲載されている家の写真を見せたら、雑誌か家の写真の複製ができるんじゃないかと思うが、漫画なので都合よく家ができる。
それはいいとして、スネ夫はさらに特撮のテレビ番組を「レプリコッコ」に見せて、怪獣の複製と戦車の複製を作らせた。家のミニチュアを並べたジオラマで怪獣と戦車を戦わせ、それをビデオに撮っていた。

家の写真が家のミニチュアになったことを考えると、怪獣はおそらく本物の生物として複製されているはずだ。その生きた怪獣を戦車に攻撃させて殺すところをビデオ撮影しているのだから、やっていることは動物虐待YouTuberと同じだ。
アニメでは怪獣が口から出した光線でスネ夫のママが命より大切にしている花壇を燃やしてしまい、大騒ぎになって場面転換していたが、その後怪獣はどうなったのだろうか。
怪獣は棒きれで殴られるなどして殺されてしまったに違いない。スネ夫のジオラマ撮影が終わって用済みだし、怪獣はママの花壇は焼き尽くすほど凶暴だ。こんな危ない生き物を放っておくわけにはいかないだろう。

漫画本を複製するだけにとどまらず、ドラえもんたちは軽々しく生物をコピーしていた。道徳心のみならず、倫理観も著しく欠如している。このようなアニメを子供に見せるのは、子供の教育に悪い。

というように、子供向けのアニメはいくらでもツッコミどころがある。とはいうものの、バットを買ったから試しに殴らせろとのび太を脅すジャイアンというサイコパスが出てくるのが「ドラえもん」だから、いちいちツッコんでも仕方がない。

つい最近、「アンパンマン」のアンパンチは暴力であり、子供に悪影響を与えることを心配する親の話がネットで話題になっていた。本当にそんな親がいるのか知らないが、アンパンチが子供に悪影響を及ぼすのなら、日本は暴力野郎だらけになっているはずだがそうでもない。つまり、影響なんかないってことだ。

しかし、「アンパンマン」の世界を現実世界になぞらえてマジメに考えてみると、アンパンチは問題がある。アンパンマンが勝手にバイキンマンに罰を与えているわけだ。現代社会ではそのようなことは許されない。

「ジャッジ・ドレッド」というイギリスの漫画を元に作られた映画があった。主人公は「ジャッジ」と呼ばれる集団に属し、「ジャッジ」は犯罪者に対してその場で裁判と判決、刑の執行を下すことができる。殺人犯ならその場で死刑判決を受け、殺される。
アンパンマンがやっていることはこれと同じだ。警察に引き渡しもせず、裁判も受けさせず、その場で地平線の彼方へぶっ飛ばしている。現代社会で同じことをすれば、一般市民からは賛同されるかも知れないが、間違いなく逮捕されるだろう。カバオくんを苛めていたバイキンマンをアンパンチでぶっ飛ばすように、誰かを苛めていた子供を殴って半殺しにするのはよくない。

アンパンマンの世界ではよくても、現実世界でダメなことは山ほどある。アンパンマンは現実世界を投影したものではないので、現実世界の常識を持ってくるとおかしなことになってしまう。ジャムおじさんはアンパンマンの顔をした車に乗っているが、あんな車はどう考えても車検に通らない。車検に通らないから当然無保険だろう。そんな車に乗っているジャムおじさんは人間性に問題がある。

そのように、漫画の世界と現実の世界が違うということは、親が子供に説明すりゃいいだけの話だ。漫画と現実の区別もつかない子供がいたら、アンパンマンがアンパンチせずに話し合いで解決したとしても、別の何かで悪い影響を受けるに決まっている。

最近、クソもミソもいっしょくたにして話をするヤツが多くて困る。作りもんの世界に現実世界を重ね合わせようとするバカな人たちの意見なんぞ、制作サイドは無視しておけばいい。