20190919-1

いよいよ明日20日(金)からラグビーW杯が始まる。11日2日(土)の決勝まで1か月半にわたる長丁場だ。
20日(金)の開幕戦はもちろん日本戦で、日本はロシアと対戦する。世界ランク10位の日本に対し、ロシアは20位と格下であり、ラグビーは実力差がハッキリと出るスポーツなので、是非とも初戦に勝って勢いをつけてもらいたい。

というか、ロシアには死んでも勝たないといけない。ラグビーW杯はサッカーW杯と違って20か国が参加、5つのチームが4つのプールに分かれて上位2チームがベスト8の決勝トーナメントに進める。ベスト8に勝ち進むには絶対に3勝しなければならない。
日本の場合、プールAの対戦国はアイルランド、スコットランド、ロシア、サモアで、ランク的には格下となるロシアとサモアには何があっても勝たねばならない。アイルランドは現時点で世界ランク1位の超強豪、スコットランドは7位でどちらも格上。3勝するにはアイルランドかスコットランドのどちらかに勝たねばならないが、正直なところ、2016年と2018年にニュージーランドを破ったアイルランドに勝つのは難しいと思われ、勝てるとしたらスコットランドだろう。

前回の2015年のW杯で、日本は初戦で南アフリカを下すなど大番狂わせを見せ、プール戦で3勝した。それまでのW杯の歴史で日本は1勝しかしたことがなく、1995年のニュージーランド戦では145対17で惨敗し、W杯最多失点の記録を持っているのが日本だ。
そんな日本が3勝したというのに、ポイント差で決勝トーナメントに進めなかった。南アフリカ、スコットランド、日本が3勝1敗で並んだわけだが、日本が負けた国がスコットランドだった。
日本はラグビーW杯の歴史で唯一、3勝したのに決勝トーナメントに進めなかった国という珍記録を作ってしまった。

日本にとってスコットランドは因縁の相手だ。前のW杯では、スコットランドのスクラムハーフのグレイグ・レイドローという選手にかき回されて負けてしまった。レイドローはキックの天才で、今回のW杯にも出場している。日本は是非とも雪辱を果たして欲しい。
ラグビーマガジンのW杯特集号で、世界のラグビー記者が挙げる注目の試合で、日本対スコットランドとする人が多かった。日本は開催国で、他を驚かせるようなパフォーマンスを発揮する力があり、正念場となるのがスコットランド戦だからだ。

そのスコットランド戦は10月13日(日)。3戦したあとのプール戦最後の試合で、ともに2勝している日本とスコットランドと対戦するという展開がもっとも盛り上がるはずだ。そうなるよう祈るばかりだ。

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ラグビー好きの間ではW杯は盛り上がっているが、世間一般がどうなのかがよく分からない。
大阪駅前のグランフロントを歩いていると、ハイネケンの広告をたくさん見かけた。W杯期間中に公式スポンサーのハイネケンの店がオープンしたらしい。ハイネケンといってもキリンビールが国内で製造と販売を手掛けるのだが、ハイネケンのビールのほか、日本の対戦国のフードメニューを用意しているらしい。いろいろやって盛り上げようとしているようだ。
ラグビーファンは試合を見ながらめちゃくちゃビールを飲むらしく、その量はサッカーファンの6倍だという。W杯期間中にビールが品薄になるという信じがたい現象が起こるようだが、今回、日本は準備万端で臨んでいるという。

イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド(アイルランドとの統一チーム)のすべてが出場するイギリスでは、イギリス外務省が国民に対して日本で逮捕されたり強制送還されないよう注意喚起しているという。フーリガンで知られるイングランドの人間は、日本で飲みすぎてへべれけになって大騒ぎしたり、迷惑行為をする恐れがあるからだ。
海外旅行先でトラブルを起こして外務省の助けを求めるイギリス人は年間2万人もいるそうで、4つのチームすべてが決勝トーナメントに進む可能性が高く、滞在期間が長くなると失敗をやらかしてしまうイギリス人が出てきそうだ。
イギリス政府は日本で国民が恥を晒さないか心配している。

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酔っ払いが日本で暴れないか心配しているイギリスであるが、イギリスを構成する国のひとつであるイングランドが札幌ドームでトンガと対戦するに当たり、札幌ドームに関するツイートが注目された。


野球のグラウンドだったものがサッカーまたはラグビーのピッチに変わるのが信じられないという今さらの内容だが、外国人には新鮮らしい。サッカーのピッチはドームの外に押し出されている状態で、それを中に引き込む形になるのだが、この変形型ドームが18年も前に作られたことに驚いている人が多い。

また、イングランドにとっては2002年のサッカーW杯で宿敵のアルゼンチンをベッカムのゴールで1対0で撃破したスタジアムでもあり、イングランド人には感慨深いものがあるらしい。
フォークランド紛争以後、イギリスとアルゼンチンの関係は最悪なのだが、サッカーW杯の再来となるイングランド対アルゼンチンの試合が10月5日に行われる。両国が入ったプールCは「死の組」と呼ばれるほど厳しい組み合わせで、死闘が予想される。

イングランドに対するアルゼンチンであるが、このブログで以前に書いたように福島第一原発事故処理の最前線基地となったJヴィレッジで17日までキャンプを行っていた。
アルゼンチンは2002年のサッカーW杯でもJヴィレッジをキャンプ地としており、福島県とアルゼンチン大使館が同国ラグビー協会に強く呼びかけてJヴィレッジでのキャンプが実現したらしい。
Jヴィレッジはピッチと宿泊施設、プールなどフィットネス施設が完備されていて、どれも一流の設備だ。ここだけで完結するためキャンプ地としては最高なのだが、外国人にとって気になるのが原発事故の風評である。
だが、アルゼンチン大使館や同国ラグビー協会は何ら問題ないとしてキャンプ地に選定した。

福島県では日本の対戦相手となるサモアがいわき市を事前キャンプ地とし、10日から15日までいわきFCパークに滞在していた。
それになぜか噛み付いたのが韓国の中央日報だ。韓国はラグビーがマイナーで、大多数がW杯の存在すら知らないだろう。それなのに、中央日報は日本がサモアのキャンプ地をいわき市に設定させ、ラグビーW杯までも「福島は安全」とする宣伝の場にしたとイヤミを記事にしていた。

【中央日報】「福島は安全」…ラグビーW杯も宣伝の場になるのか (2019/09/19)

いわき市は福島第一原発から50キロの地としているが、なぜか20キロの距離にあるJヴィレッジをキャンプ地に選定したアルゼンチンのことにまったく触れていない。
原発から20キロのJヴィレッジには一切触れず、釜石市の「復興スタジアム」は原発事故とは無関係なのに「原発から300キロ」と書き、まるで日本が東日本大震災からの復興をアピールするのが気に入らないかのようだ。

「大震災をお祝い」し、「義捐金をくれてやったのに教科書で独島の領有権を主張してきた」などと言う国らしいイヤなものの見方だ。韓国人からすれば東北が復興することや、原発事故からも立ち直ろうとしているところが気に入らないのだろうが、いちいち構わないでもらいたい。

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韓国といえば、日本代表のプロップに韓国出身の具智元(グ・ジウォン)という選手がいる。父親がラグビー選手で、息子をラグビー選手にするために日本の高校、大学に通わせた。今さら言うまでもないが、ラグビーの代表の資格は国籍ではなく所属するラグビー協会や継続滞在年数による。だから韓国人だろうが南アフリカ人だろうがニュージーランド人だろうが日本代表になることができる。

代表選手は当然のごとく試合前に国歌斉唱が求められるが、具智元がヘンな形で韓国メディアに注目されてしまうと、どうなるかが心配になる。
以前「リンカーン」というバラエティ番組で、韓国の女芸人であるヘリョンが君が代斉唱の際に起立して拍手したことが韓国国内で大問題になり、韓国でバッシングされ、芸能界から干されることになった。当のヘリョンは「君が代のことを知らなかったし、知っていたら番組に出演しなかった」と釈明していたが、10年経った今でも批判されているという。

日本の高校と大学を出て、日本代表8キャップの具智元が君が代を知らないわけないし、そもそも日本代表として戦っていることが韓国で許されるのだろうか。
具智元に関してはラグビーマガジンのWEB版が記事にしていた。

【ラグビーリパブリック】「ジウォンは簡単でないことをやり遂げた。応援します!」 韓国ラグビー界 (2019/09/04)

具智元は地元韓国メディアに完全に無視されている。韓国メディアが気付いていないというより、具智元のことを報道できないのだろう。報道すると、絶対に韓国国内で批判が起こる。
しかし、「韓国人が日本代表をやるなんてけしからん」という批判は、ラグビー文化を考えると欧州を中心に批判の的となるのは確実だ。ラグビー文化にそぐわない国籍批判、ラグビーに政治の話を持ち込むことはご法度だ。オリンピックのサッカー競技で「独島は我が領土」というプラカードを掲げてしまう国には理解できないかも知れないが。

韓国メディアは反日となれば見境なく行動してしまう国民のことをよく分かっているので、具智元に触れないでいるように感じる。
そういう意味では、具智元がヘリョンのように韓国国内でバッシングされる可能性は低いかも知れない。

ラグビーW杯はオリンピック、サッカーW杯と並ぶ三大スポーツ大会のひとつだという。純粋に楽しむには、競技に一切関係のない政治の話なんぞは不要だ。ただ不快になるだけである。
関係ないくせに、どうしてもそれを持ち出したい国があるようだが、そんなのは無視するに限るのだろう。
興味のある国の試合を見て、ただ楽しめばいいだけである。