ラグビーW杯の今日の日本対スコットランド戦は勝った方がプール戦を突破できるという文字通りの大一番だった。
前回のW杯で日本はスコットランドにのみ敗れ、3勝しているのにプール戦を突破できなかった。また、台風19号の影響で試合開催が危ぶまれ、スコットランド側がゴチャゴチャ文句を言うなど余計な要素も絡み、因縁の一戦となった。大会前のエントリで書いたように、スコットランド戦が山場になることは分かっていた。まさか日本がアイルランドに勝って全勝で戦うことになるとは思わなかったが、予想通りだった。
海外のラグビー記者もプール戦の注目試合として日本対スコットランド戦を挙げる人が多く、ラグビーマガジンの特別編集号では6人の記者のうち4人が挙げていた。そのうち、ニュージーランドヘラルドで記事を書いているグレガー・ポールという人は、次のように予想していた。
日本はアイルランドとスコットランドのどちらか、あるいは両国に勝たねば決勝トーナメントには勝ち進めない。日本はスコットランドに照準を定め、ホームのファンの声援を背に、とても記憶に残る一戦を戦うことになるだろう。日本とスコットランドはともに信じられないほどの速いペースでプレーする。両国とも広く攻めてコンタクトのポイントをずらし、継続する技術に長けている。緊張感があるものの、得点の多い、表現力に富む試合になる可能性がある。実際、そのとおりになった。
前半6分、フィン・ラッセルにトライを奪われて嫌な感じの立ち上がりになり、16分に田村のペナルティゴール失敗で暗雲立ち込めたのだが、1分後に松島のトライで同点に。その後、前半は怒涛の如く日本が攻め、ポゼッションとテリトリーで圧倒し、日本のオフロードパスも冴えわたって21対7で折り返した。2トライ目、3回のオフロードパスをつないだ稲垣のトライは、大会屈指のベストトライになるのは間違いない。
後半早々42分に福岡堅樹のターンオーバーから"フェラーリ"のような猛烈ダッシュでトライを奪い、4トライで28対7となってボーナスポイント確定になったとき、「こりゃ今日は楽勝なのか」と思ったが、そこからスコットランドが猛烈な反撃を食らわせ、残り25分を残して2トライ奪われて28対21に。
星取表でいうと、スコットランドはあと1トライ以上を奪ったうえ、8点差つけて勝たないといけないのでまだまだ大ピンチなのだが、スコットランドのディフェンスは素晴らしく、日本を寄せ付けなかった。
だが、日本のディフェンスも負けておらず、最後のピンチもターンオーバーでボールを奪ってから粘りの攻めで時間となった。
最初に不安にさせられ、途中で喜ばせて安心させ、最後にハラハラドキドキさせ、耐えに耐えて勝つのだから、日本は本当に魅せる試合をする。
日本が全勝し、19ポイントを得てプール戦を突破するなど誰が予想しただろうか。
前回2015年のW杯はイングランド開催で、開催国では初めてイングランドが予選プール敗退という苦汁を舐めた。イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドという、アイルランドを含むイギリス4か国はラグビー発祥の地として予選突破が至上命題とされており、開催国でありながら予選敗退したイングランドは大いなる恥と呼ばれた。
今大会でも、イングランドとウェールズは早々に予選突破を決め、アイルランドも勝ち上がった。スコットランドにはものすごいプレッシャーがあったと思うが、日本の奮闘とホームアドバンテージを跳ね飛ばすことはできなかった。
試合前にスコットランドがいろいろ文句を垂れていたが、憎たらしいのはヘッドコーチと協会のCEOであって、ふたりには「ざまあみろ」と言うところである。
YouTubeのハイライト動画のコメントに「速報:スコットランドがベスト8に勝ち進むため、主催者のワールドラグビーに対する法的措置を検討」とあり、それにたくさんの「いいね」と賛同コメントが付いているのもさもありなんという感じだ。
YouTubeのハイライト動画のコメントに「速報:スコットランドがベスト8に勝ち進むため、主催者のワールドラグビーに対する法的措置を検討」とあり、それにたくさんの「いいね」と賛同コメントが付いているのもさもありなんという感じだ。
しかしながら、選手たちは素晴らしかった。あの猛烈な追い上げは恐怖でしかなかった。ラスト20分、あれほどのドキドキがこの世のスポーツ観戦であっただろうか。
4か国で唯一の敗退で、スコットランドの選手たちはさぞ悔しかったことだろう。代表最後の試合であろうグレイグ・レイドローや世界最高峰のフルバックであるスチュワート・ホッグといった名選手が悔し涙を流していたのが印象的だった。
それでいながら、試合後には互いに検討を称え合っていた。試合中、ジェイミー・リッチーというジャッカルを何度も成功させていた若い選手と田村優が掴み合って喧嘩をしていたが、試合後は称え合っていたことだろう。これまでに何度も書いているが、ラグビーがこれがいい。ほかのスポーツでも試合後に健闘を称え合うというのはあるが、形ばかりでちょいちょいっとやるだけのことが多いが、ラグビーは半ば強制みたいなもんで、どれだけ悔しかろうが敗者が勝者を、もちろん勝者が敗者を称えねばならない。
日本の次の試合は20日(日)だ。今日の最高の展開の試合を中継できた日テレは、さぞ視聴率を稼いだことだろうが、次の日本対南アフリカ戦はNHKでの中継だ。日テレ大外れ。日テレは19日(土)にニュージーランド対アイルランドの試合を中継することになった。
ほかの2試合含め、全試合が19日、20日にNHKか日テレの地上波で放送されるので、是非とも多くの国民に見てもらいたい。どの試合も見ものだ。
いやー、ラグビーって本当に面白い。今日の中継を見て、そう思った人も多いのではなかろうか。
コメント
コメント一覧 (6)
世界中が決勝トーナメント進出にふさわしいと評価するでしょう。
20日の南ア戦を楽しみですね。南アは雪辱に燃えとるわなあ。
日本戦に隠れて目立っておりませんが、釜石でのカナダ・ナミビア戦が試合が台風の影響で中止となりました。カナダチームは台風の後片付けを手伝ってくれ、また、ナミビアもファンサービスもしてくれました。テレビ局は浮かれてないで、こういう美談もしっかりと放送してもらいたいですね。
前のアイルランド戦もよかったですが、ハラハラドキドキ感でいうとこちらの方が上でしたね。
WRCのSNSでカナダチームが釜石の浸水地域でドロかきをやっている動画をアップしていましたし、Yahoo!ニュースでもカナダのボランティアとナミビアの市民交流がニュースになっていましたが、テレビでは試合が中止になったことすらちゃんと報じてませんからねぇ。明日の朝の情報番組でちょろっとはやるかも知れませんが。
日本ばかりじゃなくて、よその国にも注目してもらいたいですね。
後半は、ドキドキハラハラして怖くて怖くて見ていられませんでした。
残り1分の長かったこと長かったこと。
長く語り継がれる名勝負でしたね。
勝ち上がったベスト8のすべてのチームに、心から声援を送りたいです。
どこのチームも、日本に違った文化の風を送ってきてくれていると思います。
息が詰まるような試合ってのは、昨日のような試合のことを指すんでしょうね。朝から録画したのを見返してましたが、勝つと分かっていても最後はドキドキしました。すごいもんです。
でもスコットランドのあの2m近い巨人に立ち向かうのは凄いです。今世紀の初め頃だとタックルの時、逃げ腰の選手もいたのに変わりました。
次の試合はまた東京スタジアムなので嬉しいですね。
7点差つけて残り10分くらいの段階で、スコットランドが2トライ2ゴール、あともうひとつトライかペナルティゴールなんて無理だろと思いつつ、ドキドキする展開の試合でした。ラスト数分、ターンオーバーからのラン、ブレイクダウンの連続と田中選手の余裕のあるボールさばきは本当によかったです。
次も本当に楽しみです。