20210506-1

大阪府が緊急事態宣言の延長の国に要請する方針を固めたそうだ。大阪府の新規要請者数だけでいうと5月3日から1000人を下回っているが、単に連休中であるため医療機関が休みでPCR検査数が少ないだ。大阪府の新規陽性者数は2日前の検査を前日に集計したものが発表されているそうで、基本的に2日前の検査による確定診断の数であり、連休明け後2日ほど経たないと実際どの程度の数なのかが分からない。

この際新規陽性者数はいいとしても、大阪府で問題なのは重症病床使用率だ。新型コロナのイギリス型変異株N501Yは感染力が強いうえに重症化しやすいという厄介さがあり、大阪府では爆発的に重症患者が増え、5日には361ある病床に対して重症者が371人となり、使用率が103%で初めて100%を超えたという。
病床使用率が100%を超えるというのがよく分からない。ひとつの病床を複数で使わないと100%を超えないように思うのだが、もしかすると使用率というよりも重症病床に対する重症者の割合なのかも知れない。

吉村知事がテレビの情報番組に出演し、大阪府の医療の現状を「医療極限だ」と言っていたが、医療崩壊を認めない屁理屈のようにしか聞こえない。大阪府では今やコロナで危なくなっても入院先が見つからず、重症化すれば死んだも同然になっている。コロナの患者ばかりか、ほかの病気の患者にも影響が出ているわけで、医療崩壊としても差し支えがないように思える。政治家としてはそれを認めなくないのだろうが。

新型コロナで新規陽性者数が減らないのは政治家のせいではなく国民のせいだ。
日本では都市封鎖も極端な私権制限もできないので、お願いレベルで外出や外食を控えてもらうしかないし、仕事をしている人は会社が出てこいというから出勤せざるを得ない。国民が極力リスクの高いことを控え、企業がもっと在宅勤務を進めるべきであるが、皆が自分のことしか考えないから感染者数がなかなか減らない。
我慢の効かない国民を政治のせいにするのはおかしい。

しかしながら、医療の逼迫は間違いなく政治の問題だ。日本は7割が民間病院で、法的に政府や行政がコロナ病床を増やせと命令するのは難しい。だからこれもお願いレベルでしかなく、病床数を増やさない病院を公表して国民に告げ口することしかできない。「あそこの病院は非協力的だから攻撃しろ」と国民に言っているようなもんである。
それは仕方がない面もあるが、そんなお願いを含めて病床数を増やす努力を怠ってきた。ちょっと増えればそれで満足し、緊急事態に備えて中国やアメリカで行われたようなプレハブを使った病院を作るとかは一切なし。
なにもせず、どうにかやり過ごそうとするだけ。ゾンビが襲ってきて、「きゃー」と喚いてうずくまるボンクラな登場人物みたいもんである。生き残るかは他人か運任せ。

なにかできないかと知恵を絞って考えたのが百貨店の休業だ。「人流を減らすため」と説明されていたが、コロナ対策担当の西村康稔大臣がテレビの情報番組で「エビデンスはないが休業してもらった」と説明していた。百貨店を閉めることで人流が減ったり、コロナの感染拡大が少なくなるという根拠はないが、とりあえず閉めてもらったというわけだ。
新型コロナウイルスは分からないことだらけなので根拠がないことでもやらないといけないことがあるのは分かる。ただ、それは1年前なら許されただろうが、今も昨年と同じことをやってスケープゴートのように百貨店に休業してもらって、「1日20万円出します」はいくらなんでも酷すぎる。
「サザエさん」でもあるまいし、休みの日に家族総出で百貨店に出かけようという人がどれほどいるのだろうか。

とりあえず百貨店を休業にしたのはいいが、連休明けも休業させると百貨店に大打撃を与えるし、補償もそんなにできない。だから今度は商業施設で入場制限をやれと西村大臣が言い出した。どうやって入場制限などやれというのだろうか。
台湾の百貨店には1階の入り口に現在何人いるかとう電光掲示板がある。以前からこれはなんのためにあるのかと思っていたが、普段から入る人と出る人をカウントしていれば入場制限をやりやすそうだが、それでも出入り口でごちゃごちゃ揉めるに決まっている。入り口付近でごちゃごちゃなるくらいなら、なにも制限しない方がいい。

鉄道の減便要請も愚の骨頂だった。国や東京都などが鉄道各社に減便を要請したため、例えばJR東日本では通勤時間帯に山手線内回り15本、外回り7本を削減した。そのおかげで4月30日や5月6日の通勤時間帯にこれまで以上の混雑が起きてしまった。あまりにも混雑したため、結局JR東日本は7日から減便を取りやめることになった。
電車の数を減らすことで「混雑するから休みにしよう」という会社なんか出てくるわけがない。これを考えたのはサラリーマン、いや社畜を飼いならす企業がどのようなものか一切理解していない官僚や政治家なのだろう。

なにか対策を取っても、考えるヤツが常識知らずで民間企業の実態も知らないのだから、マトモな対策が出てくるわけがない。

1年前はコロナの感染者数を低く抑えて「さすが日本人」と自画自賛していた日本であるが、1年経って化けの皮が剥がれた。抑制の効かない人たちばかりで、マトモな対策も出てこない。1年間まったく進歩がないどころか、より一層悪くなってしまった。
1年で退化したというより、日本は元々こうだったのだろう。

コロナのことに関しては、もう諦めの境地だ。少しも我慢できない国民があまりにも多く、在宅勤務できるのに社員に在宅勤務させないなど感染拡大抑止に非協力的な企業ばかりで、政府から出てくる対策は百貨店の休業とか鉄道の減便とかいうキチガイじみたものばかり。
このまま通勤を続けて自分や家族がコロナに感染して死んでしまうかも知れないが、それもこれも運次第。毎日何十人か死んで、同じくらいの人が重症になっているが、日本全体から考えるとそれほど多いわけでもない。気にするようなことではないのかも知れない。
そう思い込むしかない。

今度の新型コロナウイルスはそうやって目をつむるだけでやり過ごせたとして、今度似たような感染症、もっと酷い感染症が出てきたとき、まったく同じことをやって大惨事になってしまうような気がしてならない。
台湾ではSARSによる苦い経験があったため、今度の新型コロナウイルスでは世界に先駆けて先手を打った行動をとって感染を抑えた。日本で同じことができるだろうか。まあ無理だろう。1年経ってできないものが、10年経ってできるようになるとは思えない。
新型コロナウイルスは大きな災いではあるが、災いのレベルからいうと真ん中くらい、5段階の3くらいではないか。これでレベル5の感染症が発生したらと想像するだに恐ろしい。

トヨタの工場に見られるように、生産現場でのカイゼンは日本の得意分野かも知れないが、想定外の緊急事態でのカイゼンが苦手なのはよく分かった。