先週の土曜日だったか、朝日新聞の朝刊に福井県知事が何やらごちゃごちゃ言っていた記事が掲載されていた。
なんでも、「定期点検中の原子炉の再稼働は絶対に認めない」とのこと。
簡単に言うと、「やっぱり原発はなんか危なそうだから、運転させない」という決意を示したわけである。
福島第一原発の4号機は、定期点検中でも建屋が爆発してメチャクチャになったが、福井県知事は安全を確実にするため、自分が納得しない限りは、関西電力に圏内11機の原子炉全てを廃炉にしろと命ずるつもりなんだろうか。
これで、関西も電力不足が確定だ。
今年の夏はギリギリ大丈夫かも知れないが、冬はどうか分からないし、来年になれば原発全停止で絶対にダメになる。関電管区はほかよりも原子力発電の割合が高いため、このままだと絶望しか感じない。
「危なそうだからやめろ」と、イメージでしかものが言えない連中を相手にしたって、電力会社は勝ち目がない。しかも非論理的思考が国民の多くに受け入れられるバカな国だから、どうにもならない。
「福島を見ただろ。原発を止めろや」と言っている連中は、木を見て森を見ずといった感じで、極めてミクロ視点になっているとしか言いようがない。日本の産業や経済はおかまいなし。
「福島みたいになったらどうする」で、全てを納得させられると思い込んでいるのだ。
これは、飛行機事故が怖いと言って、飛行機に乗らないのとよく似ている。
平壌から北京まで飛行機ならすぐなのに、ちんたら列車でしか移動しない金正日と同じだ。
多少面倒でも、船や電車でいいというならそれでも結構だし、飛行機に乗れないと行けないような海外旅行は、行かなければいいだけの話。
だが、原発はそう単純ではない。
今度の福島の惨状を見る限り、太陽光とか地熱とか、再生可能エネルギーへの転換にはちょうどいいチャンスではあるが、飛行機を使わずに列車に乗るみたいに、簡単に原発を斬り捨てられない。
天然ガスや石炭などの火力発電は金もかかるし、施設も足らないし、CO2も出しまくる。
今の試算では、現状での原発停止と火力発電への転換によって、日本が京都議定書を守るために年間1兆円もCO2の排出権を買わねばならない。火力にすることでただでさえ金がかかるのに、それに付随してCO2の後始末のために、毎年1兆円も払うとは、正気の沙汰とは思えない。
これから、再生可能エネルギーによる発電に切り替えるにしても、どう考えても20~30年はかかるだろう。その間、原発がなくて何とかなるとは思えない。どう考えても、日本の産業・経済は壊滅的な打撃を受け、立ち直れなくなる。
電気代が高くなるだけで、工場は次々と閉鎖され、海外に分散するに決まっている。当然、その分失業者が増えるし、倒産する会社も続出する。
今日の産経新聞が社説で、原発をこれからも使うしかないと主張したことに対し、「暴論だ」との意見が数多くあるが、私には、どう見ても現実的な主張にしか見えない。
再生可能エネルギーの利用を模索せず、原発の災害対策も見直さないまま原発を使い続けろというのなら暴論かも知れないが、現実的な落としどころを考えたら普通だろう。
菅直人のようにポーズのために浜岡原発を止めさせたり、福井県知事のように原発の再稼働を認めないのは、言うだけだから簡単だ。
実際、それをやるのは難しいし、死ぬくらいの困難を伴うだろう。
日本の行く末は、今年の夏に決まりそうな気がする。
暑くてもいい、不便でもいい、職を失ってもいいと皆が思えたら、原発即廃止の方向へ動くだろうし、ガマンの限界を超えてしまったら、「原発はやっぱりしばらく必要」という世論の声も高まるだろう。
もし、結局「原発なし」の方向のままどうにもならなかったら、来年に日本全国あちこちで火が噴いて、それこそ手遅れになってしまうのではなかろうか。