昨晩のニュースは、北朝鮮が拉致被害者らの全面的な再調査の実施を受け入れたことで持ちきりだった。安倍首相が夕方にマスコミのぶら下がり会見で明らかにした。
拉致被害者の5人が帰ってきてから長らく停滞していた拉致問題に進展が見られるかも知れないという希望的観測が広がっている。
ただ、これまで北朝鮮は拉致問題について繰り返しウソをついてきており、偽の遺骨を日本に引き渡すなど、まったく誠意が見られない対応を取ってきた。
アメリカが北朝鮮について、核とミサイルに加えて、人権問題を新たに提起することで、国際的な北朝鮮包囲網を狭めようとしているなか、危機感を感じた北朝鮮側が動いたのだろうが、日本は独自制裁の解除などが条件になっており、結果が伴わない制裁解除だけ行われ、日本だけが損をする可能性がある。
北朝鮮側は万景峰号の入港や、朝鮮総連中央本部のビルの使用継続を求めているらしく、日本側はそれを拒否したと菅官房長官は説明したが、どうなるかはまったくの不透明だ。
特に、朝鮮総連のビルは、司法の決定により売却先が決まっており、そこに政府が介入することなど民主国家では不可能である。落札した不動産会社から政府筋が買い上げて、それを総連側に貸し付ける可能性があると見られているが、そこまでしないとダメなのかと思ってしまう。
そもそも、拉致問題というのは北朝鮮が勝手に起こした国際的な犯罪であり、重篤な人権問題である。日本側に誠意のある対応を見せなければならないのは当然なのに、それを「調査する」と宣言しただけで、それに対していろいろと褒美を与えるのがおかしい。
誘拐犯に対し、誘拐の被害者がどうなったかも分からないのに、相手が要求するままに身代金を支払うようなもんである。
それでも、そうでもしない限り、あの独裁国家が動かないのだから仕方がないのかも知れない。だが、日本人にとっては忸怩たる思いだ。
危機的状況にある北朝鮮は、拉致問題の再調査で、「拉致被害者が見つかった」と言って数人出してくる可能性がある。
今頃調べて、急に拉致被害者が出てくるわけがない。厳しい監視の下で生活させているのだから、当然全員把握しているわけで、調査結果は茶番でしかない。北朝鮮がどれだけ拉致被害者を出してくるか。そのさじ加減は北朝鮮に委ねられている。
金正日は日本人拉致について、日本人の怒りを読み間違えた。認めれば許してくれると思ったが、日本人の怒りは相当なものだった。それは今でも収まっていない。
金正恩がどう考えているのかは分からない。叔父さんを銃殺刑にするくらいの人間だから何を思っているのか分かるわけがないが、ハンパな結果を出しても日本が納得しないことくらいはさすがに分かるだろう。「全員死んでいた」では誰も納得しない。
何人か出してくるしかない。しかも拉致問題の象徴とも言える横田めぐみさんの安否がうやむやのままでも日本人は納得しないだろう。彼女が出てくる可能性だって十分あり得る。
いずれにしても、金品を用いて北朝鮮をなだめすかさないといけない状況に歯痒い思いがするが、これはもうしょうがないと割り切るしかない。自国民を自由に隣国に拉致させ、しかもつい最近までそのことを認めてこなかった国に負わされる報いなのかも知れない。
ただ、そこまではガマンできるが、拉致問題を適当に幕引きさせ、北朝鮮が目論むような国交樹立には断固反対だ。
北朝鮮は、日本と自由に行き来できるようにした上で、国交樹立による先の戦争の対日請求権を発動させ、少なくとも5000億円、できるのならば2兆円を日本からふんだくろうと目論んでいる。
2兆円とは途方もない金額である。消費税を1%上げることで、年間2兆円税収が増えるなどと言われていたが、そのような金額を北朝鮮に支払って国交樹立するメリットなんか何もない。あのような国と国交を結ぶことは、メリットどころか、デメリットしか存在しない。
しかも、北朝鮮に2兆円も与えたら、その下にある国が「俺たちにももっと寄越せ」などと言ってくるに違いない。あの国には、国家間の条約とか国際法など一切関係ないからだ。
日本人として望むことは、北朝鮮から日本人拉致被害者全員が1日でも早く帰国した上で、北朝鮮が崩壊し、韓国か中国に併合されることである。
誰があんな国に何兆円も支払って、国交樹立を願うのか。
拉致被害者家族について、日朝国交正常化の邪魔だと評した朝日新聞は別として、多くの日本人は北朝鮮なんかと関わりを持ちたいと思っていない。
安倍首相は、そのことだけは肝に銘じておいて貰いたい。