筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の研究を支援するため、指名された人が氷水を頭からかぶるか、100ドルをALS協会に寄付するか、或いはその両方をやるかを決めて実行するALSアイスバケツチャレンジが、8月に入った頃から急に話題になった。
それまではFacebookなどでアメリカを中心にちらほらやられているだけだったが、マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツなどのIT業界の超有名人から、果てはオバマ大統領まで有名人に伝播していったため、急速に注目を浴びた。
私が好きな作家のスティーヴン・キングまでアイスバケツチャレンジで氷水をかぶる様子をFacebookで公開していて、「日本にもそのうちやってくるのかなぁ」とボンヤリ思っていたら、台湾のFOXXCONのCEOから孫正義が指名された今月中頃くらいから一気に日本でも広まった。
こういうノリの盛り上がりが世の中にあると、必ずそれに反撥する手合いが出てくる。「なんかごちゃごちゃ言われるんだろうなぁ」とボンヤリ思っていたら、やはり批判が出てきた。
アイスバケツチャレンジがどうだとか心底どうでもいい話だが、賛成派は「ALSが世の中に知られ、寄付金が集まってるからいいじゃないか」といい、反対派は「遊びの社会貢献ごっこ」だとか、「有名人の売名行為」などと言っていて、「氷や水がもったいない」という意見まで出てきた。水や氷の無駄遣いは世の中にもっとたくさんあると思うのだが。
多くの有名人が偽善的に見えることをやり始めると、必ず批判が起きる。このALSアイスバケツチャレンジと似たような批判を受けるのが、毎年夏恒例、日本テレビの「24時間テレビ」だろう。
毎年出てくる批判が、「多額のギャラを貰っている芸能人がパーソナリティを務め、募金集めというチャリティを行うとは片腹痛い」というものだ。
実にごもっともな話である。昨年何十キロか走った森三中の大島レベルでも1000万円のギャラだったらしい。昨年、100万円でも100キロ以上走る一般人は山ほどいるだろうとブログに書いた。
この番組が嫌われる理由として、ギャラを貰った芸能人が募金を呼びかけているからだけでなく、障碍やら重い病気を抱えた人が何かをチャレンジするという意味不明なことをやっているからである。
障碍者や病人の夢を叶えるというチャリティなのかも知れないが、それを見せられる方は堪ったもんじゃない。私は1秒も見たくないが、誰かが何か頑張っている姿を見て、感動したりする人が世の中にはいるのだろう。義足の人が屋久島を歩いたとか、富士山に登って何が感動するのだろうか。
「同じような境遇の人に勇気を与える」などというもっともらしい理由が付けられているが、同じような境遇の人が本当に勇気を貰っているのかは甚だ疑問だ。
癌の闘病をする父親を数か月にわたって見てきたが、人生に絶望している人が、他人が山を登ったくらいで自分の気持ちまで変わるもんなのだろうか。少なくとも、私の父のように心臓にAEDを入れて身体障碍者1級になって、その後食道癌が見つかって、結核にもなった人間にそのような余裕はないだろう。
ALSアイスバケツチャレンジが偽善だといわれているが、偽善の最たるものは「24時間テレビ」である。だから今年も1秒も見なかった。あんな辛気臭い番組、金を貰ってもゴメンである。
日本テレビの裏のフジテレビでは、「めちゃイケ」が「24時間テレビ」を茶化すかのように、エスパー伊東がアホみたいなことにチャレンジする企画を毎年放送している。今年は「24時間テレビ」の方に出演しているとエスパー伊東に思い込ませるというドッキリだった。
「24時間テレビ」を小バカにするようなバラエティにこだわる「めちゃイケ」の方が個人的には好感が持てる。
しかも今年は、24時間ゼロテレビとして、「めちゃ×2なが~~~~~くユルんでるッ!」というタイトルでYouTubeで24時間のストリーミング配信を行っていた。
エスパー伊東のドッキリのあと、「爆裂お父さん」で加藤浩次がモーニング娘。らをジャイアントスイングして、芸人がコントをするコーナーがあり、5時半という早朝からアイドルが水着になって岡村らと水泳大会をやったりしていた。
「24時間テレビ」を見ない代わりに、そちらばかり見ていた。
岡村隆史、加藤浩次、濱口優(よゐこ)、光浦靖子、カンニング竹山がずっと出ていて、緩い番組とはいえ、よく24時間もネット配信番組をできるもんだと感心した。
「24時間テレビ」も、面白おかしいチャリティ番組にしたらいいのに、辛気臭くやるから鬱陶しくなるのである。どうせ批判を受けるなら、明るい番組にすればいい。
誰かが巨大な何かを作るとか、誰かがハンディキャップを乗り越えて何かにチャレンジするとか、いい加減やめたらどうか。
金集めが目的なんだから、芸人が熱湯に入っていた秒数分、日本テレビが募金するとかにしてみてはどうか。