何年も前の話になるが、このブログで「新幹線はテロに対して脆弱なんじゃないか」と書いた。ブログを引っ越したときに、古過ぎるエントリは移行していないので今さら見つからないかも知れないが、そのくらい前の話だ。
私が書いたのは、東海道新幹線はほとんどの区間で高架の線路になっているものの、一部で陸地続きになっている箇所がある。私が住む滋賀の新幹線でも、線路沿いが小高い丘になっている場所があり、金網で区切っているだけだったのだ。
金網を切断すれば線路に入れるし、軽トラに瓦礫でも積んで線路上に放置すれば、新幹線は数キロ手前からブレーキを掛けないと止まれないので必ず大事故になると思った。いちいち爆破などしなくても、線路に何かものを置くだけで脱線事故を起こせる。
新幹線は満員だと1編成で1300人くらい乗っている。時速200キロを超える状態で脱線したらそのうちの数百人は死ぬだろう。
東海道新幹線の沿線沿いはJR東海の見回りの車がしょっちゅう点検をしに来ているが数時間ごとなので、何でもやり放題で本当に危ないと感じていた。
金網越しにうちの犬と新幹線の写真を撮ったりしていたのだが、数年経ってから、鉄板で補強する工事が行われ、線路の防護壁が完成した。
だから、陸地続きで軽トラを新幹線の線路上に入れて、新幹線を衝突させるようなお手軽なテロを起こせなくなった。鉄板の防護壁を破るのは相当時間がかかりそうだから、ちんたらやっているうちに見回りが来て見つかってしまうだろう。
東北などの地べたを走る新幹線はどうか知らないが、少なくとも私がよく利用する東海道新幹線は外部から線路に侵入した輩が大事故を起こす可能性はぐっと低くなった。それでも線路への進入はあるようだが、人が入ったところで、撥ね飛ばされても脱線はしないだろう。
アメリカの9・11同時多発テロでは、貿易センタービルやペンタゴンなど、アメリカを象徴するような建造物が狙われた。日本だと新幹線が狙われてもおかしくない。
外部から新幹線に物理的ダメージを与える方法が難しくなったとしても、やはり問題は内部から狙われた場合だ。爆弾でも仕掛けれられて爆発させられたらイチコロである。
新幹線の車両のドアに防犯カメラが取り付けられたが、爆発脱線事故などが起こってから誰が犯人なのかを解析しても遅すぎる。
何となくそんなことをかねてから思っていたのだが、今日、それに近い事故が東海道新幹線で起こった。
下りの「のぞみ225号」で、先頭車両の1号車自由席にいた71歳のジジイがポリタンクに入れた油をかぶり、さらに周囲にまき散らした上でライターで火を付け、焼身自殺を図ったのだ。
そのジジイと同じ車両に乗っていた52歳の女性が死亡。26人が煙を数など重軽傷を負い、うち3人は重傷だという。
さらに東海道新幹線を数時間にわたり運休させ、10万人弱に迷惑をかけた。
自殺するときに電車への飛び込み自殺をして迷惑をかけるヤツがいる。最後っ屁として、社会に復讐しているのだろう。
それのもっとすごいヤツが出てきたわけだ。新幹線を止めるだけでなく、巻き添えで他人まで殺してしまった。
テロというよりも身勝手な焼身自殺がこのような結果を招いただけかも知れないが、結果からいうとテロといっても構わないくらいだ。
いつか起こりそうな問題が起きてしまった。だからとって、これを防ぐ手立てはあるのか。
10分ごとに数百人から最大で1300人乗る新幹線で、飛行機の保安検査のような乗客の荷物チェックなどしていられないだろう。
乗客からしてみればいちいち煩わしいし、液体の持ち込み禁止となっても迷惑だ。JR側からしてもシャレにならないくらい人件費がかかる。そうかといって何もやらないと、またうるさい人たちから批判を受ける。
どうすりゃいいのか分からないが、何かやらないと2020年の東京五輪開催期間を狙ってイスラム過激派などが新幹線テロを起こすかも知れない。
利便性と安全を天秤にかければ、安全を取らないといけないのだろうが、対策をとったところでどこまで有効かも分からない。テロを起こそうとするヤツは保安検査などあってもどうにかするだろう。
まあ、不審な手荷物を持っている乗客を鉄道警察が手当たり次第に職質するくらいが落としどころだと思うのだが、それでいいのかという気もする。
難しい問題である。