中国が長らく続けていたひとりっ子政策を廃止し、3人目以降については未だ制限があるものの、子供をふたりまで自由に作れるようにしたのだという。
微博を見ると「全面二胎」とか「全面二孩放開」のタグでかなり盛り上がっていた。
2年前から夫婦どちらかがひとりっ子ならば申請をすれば子供をふたり作れるようになっていたようだが、思ったほど申請が増えなかったため、全面的な解放に踏み切ったらしい。
これには中国政府の危機感が感じ取れる。36年にわたってひとりっ子政策を続けてきたおかげで、中国の人口ピラミッドはいびつになってしまった。80年代90年代以降生まれの子供が極端に減り、年寄りの世代が増えてきた。生産年齢人口の減少は国力の衰えを意味する。人口抑制のために思い切った政策を取ったおかげで、国内の人口ピラミッドのバランスが崩れてしまった。
さらには、跡取りとしての男児が好まれることから産み分けが行われるようになり、若い世代では極端に男が増えることになってしまった。出生時男女比率でいうと115.88である。女児が100とすると、男児が115もわるわけだ。
日本では昔から概ね105前後で推移しており、115がいかに多いかが分かる。
このように世代によって極端に男が多くなると、結婚できないことも出てくる。元々、社会が発展するにつれて日本と同様に結婚する人の比率が下がってきた中国であるが、男が多すぎるのも無視できない問題になっている。
また、それ以外にもひとりっ子ということで親から可愛がられ、甘やかされて育つのでワガママ放題になり、中国では子供が「小皇帝」と呼ばれる。
中国や台湾などの中華圏では子供の学校に親が送り迎えをするのが当たり前だが、そのときでも中国ではカバンを親が持つことが普通だ。そんな風に育てられた子供が将来どのようになるか、大体想像がつく。
ほかにも、中国では子供の誘拐も横行している。子供を誘拐する犯罪グループがあり、さらってきた子供を男の子が欲しい家に斡旋販売したり、臓器売買を行っているというのだ。
このようなことは週刊誌などで読むだけのものに思えるが、実際にあるのだから驚きだ。
私が勤める会社の同僚だった中国人社員が日本に単身赴任していたのだが、中国に残してきた子供と奥さん、その母親で遊園地に行ったとき、子供が行方不明になってしまった。誘拐されたと大騒ぎになったのだが、その後、1か月ほどしてたまたま誘拐団が摘発されて子供が奇跡的に無事で戻ってきた。
日本では考えられないような恐ろしいことが中国では起こっている。
それもこれも、すべてひとりっ子政策の弊害だ。ひとりっ子政策によって4~5億人の人口増加が抑制できたそうだが、今になって考えれれば、そんなメリットよりも遥かにデメリットの方が大きかったのではないのか。
今さらひとりっ子政策をふたりっ子政策に変えたところで、いびつな人口構成は変わらない。今の中国の若者は就職難で、結婚難でもある。ひとりっ子政策を変える前に、もっと経済的な政策で若者が結婚をして、子供を作れるように変えていかねばならないのは日本と同じであるが、中国は経済的に困窮している若者は日本と比較ならないほど多く、簡単ではない。
ハッキリ言うと、中国経済と同じで、人口構成を今からどうにかしようとしても手遅れなのだ。上海株ですらどうにもできなかった中国政府が、信頼されていない国民を焚き付けて、急に結婚と出産を増やして生産年齢人口の増加を目論んでもうまくいくはずがない。
中国は急速なスピードで発展しているといわれるが、それと同じくらいのスピードで衰退しているようにも思えて仕方がない。