韓国の政治が揺れている。揺れているどころの騒ぎではなく、爆発寸前というべきか。
朴槿恵大統領が長年にわたり懇意にしてきた崔順実(チェ・スンシル)という女に対し、国家安全保障に関わる機密資料や演説原稿、スケジュールなどの機密情報を漏洩させていたことが明らかになり、とんでもないことになっている。
ことの発端は韓国の有力紙・中央日報傘下のケーブルテレビ局であるJTBCのスクープだ。崔順実が使用していたというパソコンを入手したJTBCはその中身を解析。朴槿恵から国家機密が漏洩されていた証拠が次々と出てきた。
この話が面白いのは、単に朴槿恵が親しい友人に国家機密を漏らしていたという話ではないからだ。
話は42年も前の1974年に遡る。1972年8月15日、終戦記念のイベントに出席していた朴槿恵の父の朴正煕大統領を狙った暗殺未遂事件(文世光事件)が起こる。朝鮮総連の指示で在日韓国人の文世光が大阪の交番から盗んだ拳銃を使って朴正煕大統領の暗殺を試みた。朴正煕は暗殺の難を逃れたものの、運悪く壇上にいた妻(朴槿恵の母親)に弾が命中して死んでしまう。
この事件のあと、母親が暗殺されて悲嘆にくれる朴槿恵に近寄ってきたのが崔順実の父親の崔太敏(チェ・テミン)だ。朴槿恵を名誉会長に据えた「セマウム奉仕団」を設立し、各種利権を手に入れる。
崔太敏と娘の関係に疑念を抱いた朴正煕は娘を引き離そうとするが、朴槿恵がそれを認めず、そうこうしている間に朴正煕が韓国中央情報局(KCIA)の部長に暗殺されてしまう。このKCIAの部長は、崔太敏と朴槿恵との関係に警鐘を鳴らしていたが、受け入れられなかったことが暗殺のひとつの要因であると証言している。
父親も暗殺された朴槿恵を親身になって支えたのが、崔太敏の娘の崔順実だった。朴槿恵は崔順実を心から信頼するようになる。
また、崔順実と結婚した夫の鄭允会(チョン・ユンフェ)も信頼し、自分の秘書室長に迎える。
産経新聞の加藤達也・ソウル支局長(当時)が朴槿恵大統領に関する名誉毀損でソウル地検から起訴されたが、そのときの報道で朴槿恵がセウォル号沈没時の空白の7時間に会っていたとされる人物が鄭允会その人である。鄭允会は崔順実と離婚しているが、朴槿恵との関係は続いていた。
加藤記者は今回の騒動について、韓国検察の取り調べて、崔太敏・崔順実親子についてしつこく訊かれたと語っている。
親が暗殺されることで落ち込む朴槿恵に接近した崔太敏とその娘の崔順実。
崔順実の夫で、朴槿恵の片腕であった秘書室長の鄭允会。
朴槿恵とそれらの人物を結びつけるセウォル号沈没事件。
40年にわたる朴槿恵とフィクサー親子の関係はただごとではなく、明らかになっていく事実もまるで映画のようだ。事実は小説より奇なりとはよく言ったもんである。
崔順実は朴槿恵の演説原稿を手直ししただけだと主張するが、この女に韓国の国家機密が漏れていたことは間違いない。
特に大統領のスケジュールは機密中の機密だ。この情報は朴槿恵暗殺を狙う側にとって重要な情報であるし、朴槿恵の暗殺を狙わずとも、他国の要人への暗殺に利用されるかも知れない。
また、国家機密を得ていただけでなく、崔太敏と崔順実の親子は立ち上げた財団に対して利益誘導を行って私腹を肥やしたり、娘を名門女子大に裏口入学させるなどしており、まさに朴槿恵の威を借るキツネとして暗躍していた。
こんなことを韓国の国民が許すわけがない。週末には3万人規模のデモが行われた。
多くの韓国人が朴槿恵の退陣を要求している。だが、大統領が任期の途中で辞めることなどあり得ず、朴槿恵はなんとか凌ぎ切るしかないが、先行きは怪しい。
支持率は急落し、今や14%だという。
日本人にとって、隣の国でどれだけ騒ぎが起ころうが、朴槿恵がどれだけピンチに陥ろうが大して関係はないが、大統領の支持率低下だけは関係がある。
朴槿恵の前の大統領だった李明博は、支持率が3割を切って危機感を感じ、反日カードを切った。竹島に不法上陸して日本を挑発し、返す刀で天皇陛下に対して「跪いて謝罪したら韓国に来させてやる」と侮辱発言をした。そのかいあって、支持率が9ポイント回復したという。
韓国の大統領は支持率が低くなると反日的な行動を取る。これはこれまでの歴代大統領を見ても明らかだ。
朴槿恵は現時点で支持率が1割台と、危険水域をとっくに超えてしまっている。
憲法違反だと司法判断された慰安婦問題で日韓合意を取り付けて以降、反日的な言動を控えていた朴槿恵であるが、今後はなにをしてくるか分からない。
李明博に倣って竹島への不法上陸もするだろうし、日韓合意を破棄も言い出すかも知れない。もしかすると、支持率回復の劇薬として北朝鮮との戦争を再開するかも知れない。
さすがにそこまではないかも知れないが、とてつもない反日的な言動が朴槿恵の任期いっぱいまで繰り返されるだろう。その間、日本は不快な思いをし続けねばならない。
朴槿恵はとんでもないことをしでかしてしまった。