2002年に結婚して、9月にハワイに新婚旅行に行った。そこで結婚式も挙げたりしていろいろ思い出があるのだが、新婚旅行にまつわる思い出以外に強烈に覚えていることがある。
ちょうど当時の小泉純一郎首相と金正日による日朝首脳会談1回目が行われていた時期で、ハワイにいる間もなんとなく気になっていた。最終日の帰国する日、シェラトンワイキキのスイートに泊まっていたので、サービスで毎朝現地発行の読売新聞を入口のドアの下に差し込まれていたのだが、帰る準備をしながらその新聞の1面を見て衝撃が走った。金正日が日本人拉致を認め、日本政府が認定していた4人の被害者に加え、把握されていなかったひとりを加えた5人が生存しているという内容だった。
当時、北朝鮮の拉致問題を厳しく追求していたのは大阪のテレビ局と産経新聞など一部マスコミだけで、朝日新聞のように北朝鮮を悪く言わないマスコミも珍しくなかった。どうなるのかと思っていたが、金正日が日本人拉致自体を認めるとは思わなかった。日本側が認定している被害者全員を認めてはいないが、それでも拉致自体を認めるとは予想外だった。よほど日朝国交正常化をして、賠償金をふんだくったうえで、日本と正式に貿易がしたかったらしい。
拉致被害者5人の生還に繋がったという意味で、日朝首脳会談の意義は大きかったが、それ以上に金正日に日本人拉致をゲロさせたことは素晴らしかった。北朝鮮がどれだけ悪逆非道な国であるかを世間に知らしめることができた。かつて北朝鮮を泥棒もハエもいない地上の楽園と褒め称えた朝日新聞はぐうの音も出なくなった。
それまで、テレビで誰かが「北朝鮮」と発言すると、必ず字幕スーパーで「北朝鮮=朝鮮民主主義人民共和国」と表示されていた。朝鮮総連などからの略称を使うなと抗議され、それにテレビ局が屈服していたからだ。だが、北朝鮮のような悪の枢軸国家に気を遣う必要がなくなり、朝鮮総連も世間に口出ししにくくなってその慣例がなくなった。
今では、M-1グランプリで金正恩が笑いのネタで使われるくらいになった。かつての日本なら、朝鮮総連からの抗議や報復テロを恐れてそのようなネタは絶対に放送されなかったに違いない。
とにかく、日朝首脳会談のインパクトはすごかった。会談前から拉致被害者の生存は認めてくるなど、大きなニュースになることは間違いないと見られていたが、予想以上に大きなニュースになった。新聞の1面から社会面までほぼ全部北朝鮮関連のニュースだったと言っても過言ではないくらいだ。
このような大きなニュースがあると分かっているとき、狡猾な企業は絶対に見逃さない。ニュースのリソースの多くが持って行かれることを分かっているため、そこを狙って不祥事の発表を行う企業があるのだ。
事実、日朝首脳会談にあわせて不祥事を発表し、記者会見にどこの新聞も来なかったとか、内容がベタ記事として扱われた企業があったと週刊誌に書かれていた。
不祥事発表せねばならなくなった企業は、日朝首脳会談のように確実にメディアで大きく取り扱われるニュースにあわせたくなるのだろう。ずるいが、その気持ちは分からないでもない。
これと同じような感じで、あまり注目されていないことの公表や実行をなにかのイベントにあわせることがある。新聞休刊日を狙ったり、盆暮れ正月の時期を狙う。特に年末年始はニュース番組やワイドショーがなくなり、人々があまりニュースに注目しなくなる。今ではネットでニュースをいくらでも見られるが、それでもニュースに注目する人が激減するのは間違いない。
だから、芸能人は今の時期を狙って離婚を発表するし、結婚でも注目されたくない芸能人は年末年始に発表する。運がよければほとんど話題にならなかったりする。企業も例えば今年なら12月29日あたりに不祥事を公表しておけば、注目されずに済むかも知れない。
芸能ニュースや企業の不祥事あたりならいいが、日本の周辺国の不穏な動きが年末年始に起こらないかがいつも気になる。中国のみならず、中国文化圏の韓国や北朝鮮は元日だけが祝日で、年末年始は普通に仕事ウィして普通に生活している。自分たちは普段通り生活し、日本人がのんびりしている時期になにかあるかも知れない。
北朝鮮が新年の景気づけに日本を飛び越す弾道ミサイルを撃つかも知れない。中国が尖閣諸島に侵攻してくるかも知れない。韓国の大統領が日本を侮辱する反日発言するかも知れない。尖閣諸島侵略ならともかく、ミサイルや反日発言のような日常茶飯事となったことだと、この年末年始日本でまともに報道されず、ほとんど注目されないかも知れない。
これまであまりそのようなことはなかったが、いい加減そろそろどこかの国が気づいてなにかやってくるかも知れない。
年末年始、よくないニュースがなければいいのだが。